サッカーをしている子どもでは、膝、足首、太もも、股関節などにけがが起こることがあります。

特に、走る、止まる、方向を変える、ジャンプして着地する、相手と接触するといった動作では、膝や足首に大きな負担がかかります。

そこで注目されているのが、FIFA 11+ for Kids です。

FIFA 11+ for Kidsは、子どものサッカーにおけるけがを減らす目的で作られたウォームアッププログラムです。

単に体を温めるだけではなく、バランス、体幹、下肢筋力、ジャンプ・着地、転倒動作などを含めて、けがをしにくい体の使い方を身につけることを目的としています。

スポーツ復帰やけが予防の考え方については、スポーツ復帰の考え方 も参考にしてください。

この記事の結論

  • FIFA 11+ for Kidsは、子ども向けのサッカー傷害予防ウォームアップです。
  • 対象は主に7〜13歳のサッカー選手です。
  • バランス、協調性、筋力、ジャンプ着地、転倒動作を含みます。
  • 練習の最初に、約15分程度で行うことを想定したプログラムです。
  • 正しいフォームで行うことが重要です。
  • 痛みがある場合は、無理に実施せず原因を確認することが大切です。
  • チーム全体で継続することで、けが予防の習慣になりやすくなります。

FIFA 11+ for Kidsとは

FIFA 11+ for Kidsは、子どものサッカー選手を対象にしたウォームアッププログラムです。

一般的なウォームアップでは、軽いランニングやストレッチだけで終わることがあります。しかし、子どものけが予防では、ただ体を温めるだけでは不十分なことがあります。

FIFA 11+ for Kidsでは、次のような要素を組み合わせて行います。

  • バランス
  • 協調性
  • 下肢筋力
  • 体幹の安定性
  • ジャンプと着地
  • 片脚での安定性
  • 転倒時の体の使い方
  • ボールを使った反応動作

つまり、FIFA 11+ for Kidsは「準備運動」でありながら、けがをしにくい動作を学ぶためのトレーニングでもあります。

対象になる年齢

FIFA 11+ for Kidsは、主に7〜13歳の子どもを対象にしたプログラムです。

14歳以上では、通常のFIFA 11+を検討することがあります。

ただし、年齢だけでなく、体格、運動経験、チームレベル、理解力、既往歴によって調整が必要です。

低学年では、正確なフォームを長時間続けることが難しい場合があります。その場合は、短く、楽しく、動きの質を重視して始めることが大切です。

なぜ子どもに傷害予防プログラムが必要なのですか?

子どもは大人より柔らかく、回復も早いと思われがちです。

しかし、成長期の体には特徴があります。

  • 骨が成長している
  • 筋肉や腱の柔軟性が変化しやすい
  • 急に身長が伸びる時期がある
  • 動きが不安定になりやすい時期がある
  • 練習量が増えると使い過ぎ障害が起こりやすい
  • 膝や足首の着地動作が未熟なことがある

このような時期に、ジャンプ、着地、切り返し、片脚支持の動きが不安定だと、膝や足首に負担がかかりやすくなります。

FIFA 11+ for Kidsは、子どもが楽しみながら、けがをしにくい基本動作を身につけるためのプログラムです。

FIFA 11+ for Kidsの構成

FIFA 11+ for Kidsは、7つの運動で構成されています。

運動 主な目的
反応・ランニングゲーム 反応、バランス、片脚支持
スケーティングジャンプ 横方向のジャンプ、着地、下肢コントロール
片脚立ち バランス、体幹、膝と足の向き
腕立て姿勢の運動 体幹、上肢支持、全身の安定
片脚ジャンプ 片脚着地、膝の安定性
スパイダーマン動作 体幹、股関節、全身協調
横転・転がる動作 転倒時の体の使い方

それぞれの運動には難易度があり、レベル1から始めて、動きが安定してから次のレベルへ進みます。

実際の動きを動画で確認する

FIFA 11+ for Kidsは、文章だけでは動きのイメージが分かりにくい部分があります。

実際のフォーム、ジャンプ着地、片脚バランス、転倒動作などは、動画で確認すると理解しやすくなります。

動画を見るときのポイント

  • 膝とつま先の向きがそろっているか
  • ジャンプ後に静かに着地できているか
  • 片脚で立ったときに体が大きく傾いていないか
  • 動きが速すぎず、正しいフォームで行えているか
  • 痛みがある場合は無理にまねしないこと

関連動画

FIFA 11+ for Kidsの各運動を、動画で確認できます。


Exercise 2|Skating Jumps


Exercise 5|Single Leg Jumps


Exercise 6|Spiderman


Exercise 7|Rolling

実施時間と頻度

FIFA 11+ for Kidsは、練習の最初に行うウォームアップとして使います。

目安は約15分です。

チーム練習のたびに行うことが理想ですが、最初から完璧に行う必要はありません。

導入時は、次のように進めると継続しやすくなります。

  • 最初は説明を短くする
  • 1回ですべて完璧にしようとしない
  • 正しいフォームを優先する
  • 子どもが楽しめる雰囲気にする
  • 慣れてきたらテンポよく行う
  • チーム全体の習慣にする

大切なのは「正しい動き」です

FIFA 11+ for Kidsは、ただメニューをこなせばよいわけではありません。

重要なのは、正しい姿勢と動きです。

確認したいポイント

  • 膝とつま先の向きがそろっている
  • 膝が内側に入りすぎていない
  • 片脚で立ったときに体が大きく傾かない
  • ジャンプ後に静かに着地できる
  • 着地で膝が伸びきっていない
  • 体幹がぐらつきすぎない
  • 動作中にふざけすぎて危険な動きにならない

特に、ジャンプや着地では、膝が内側に入る動きに注意します。

膝が内側に入ったまま着地や切り返しを繰り返すと、膝や足首に負担がかかりやすくなります。

チームで導入するときの工夫

子どもに傷害予防プログラムを続けてもらうには、「やらされている」と感じさせない工夫が大切です。

導入のコツ

  • 最初に目的を簡単に説明する
  • けがを減らすための練習だと伝える
  • ゲーム形式にする
  • 上手な選手に見本をしてもらう
  • フォームがよい動きを褒める
  • 毎回同じ流れにして習慣化する
  • 保護者にも目的を共有する

「けがをしないためにやる」だけでなく、「うまく止まる」「きれいに着地する」「片脚で安定する」といった競技力につながる言葉で伝えると、子どもにも伝わりやすくなります。

痛みがあるときは無理に行わない

FIFA 11+ for Kidsは傷害予防のためのプログラムですが、膝や足首に痛みがある状態で無理に行うものではありません。

次のような場合は、実施を控えて状態を確認してください。

実施前に確認したい症状

  • 膝や足首が腫れている
  • 歩くと痛い
  • ジャンプで痛い
  • 片脚で立てない
  • 足を引きずっている
  • 練習後だけでなく日常生活でも痛い
  • 痛みが数日以上続いている
  • 外傷後から痛みが強い

成長期の膝痛については、子ども・成長期の膝の痛み も参考にしてください。

膝のけが予防とFIFA 11+ for Kids

FIFA 11+ for Kidsは、膝だけを対象にしたプログラムではありません。

しかし、膝のけが予防を考えるうえで重要な要素が多く含まれています。

  • 片脚で体を支える
  • 膝とつま先の向きをそろえる
  • ジャンプ後に安定して着地する
  • 体幹を安定させる
  • 横方向の動きに対応する
  • 転倒時に体を守る動きを学ぶ

前十字靱帯損傷や内側側副靱帯損傷のような外傷は、競技中の切り返し、着地、接触で起こることがあります。

すべてのけがを防げるわけではありませんが、基本動作を整えることは、けが予防の重要な土台になります。

よくある質問

Q1. FIFA 11+ for Kidsは何歳からできますか?

主に7〜13歳を対象にしたプログラムです。ただし、年齢だけでなく、体格、理解力、運動経験に合わせて調整します。

Q2. 毎回全部行う必要がありますか?

基本的には練習前のウォームアップとして継続することが重要です。ただし、導入初期は正しい動きを覚えることを優先し、短く分けて始めてもよいです。

Q3. 試合前にも行ってよいですか?

試合前にもウォームアップとして使えます。ただし、試合直前に疲れすぎないよう、強度や量は調整してください。

Q4. サッカー以外の競技にも使えますか?

もともとは子どものサッカー向けに作られたプログラムです。ただし、バランス、ジャンプ着地、体幹、片脚支持などは他競技にも共通する要素です。競技特性に合わせて調整が必要です。

Q5. 膝が痛い子どもにも行ってよいですか?

痛みがある場合は、無理に行わないでください。膝が腫れている、歩くと痛い、ジャンプで痛い、痛みが続く場合は、先に整形外科などで原因を確認することが大切です。

Q6. けがを完全に防げますか?

完全にけがを防ぐことはできません。しかし、正しいウォームアップと動作練習を継続することで、けがのリスクを減らすことが期待されます。

まとめ

FIFA 11+ for Kidsは、子どものサッカー選手を対象にした傷害予防ウォームアッププログラムです。

バランス、協調性、筋力、ジャンプ着地、体幹、転倒動作などを含み、けがをしにくい体の使い方を身につけることを目的としています。

大切なのは、メニューをただこなすことではなく、正しいフォームで継続することです。

膝や足首に痛みがある場合は、無理に実施せず、まず原因を確認してください。

チーム全体で楽しく継続できる形にすると、けが予防の習慣として取り入れやすくなります。

参考文献

  1. FIFA Medical and Research Centre. FIFA 11+ for Kids Manual: A warm-up programme for preventing injuries in children’s football.
  2. Rössler R, et al. A Multinational Cluster Randomised Controlled Trial to Assess the Efficacy of 11+ Kids. Sports Medicine. 2018.
  3. Rössler R, et al. A new injury prevention programme for children’s football: FIFA 11+ Kids can improve motor performance. Journal of Sports Sciences. 2016.
  4. Al Attar WSA, et al. The FIFA 11+ Kids Injury Prevention Program Reduces Injury Rates Among Male Children Soccer Players. Sports Health. 2022.
  5. FIFA 11+ KIDS in the prevention of soccer injuries in children: a systematic review. 2024.

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。膝や足首の痛み、腫れ、歩行困難、外傷後の強い痛みがある場合は、整形外科などの医療機関へご相談ください。