ある日突然、膝が強く痛くなり、腫れて、熱を持つことがあります。

膝に水がたまったように腫れる。赤く熱い。歩くのもつらい。夜間に痛みが強い。

このような急な膝の痛みの原因の一つに、痛風があります。

痛風というと「足の親指の付け根が痛くなる病気」というイメージが強いかもしれません。

しかし、痛風は足だけでなく、足首、膝、手、肘などの関節にも起こることがあります。

膝に起こる痛風では、変形性膝関節症の痛み、半月板損傷、偽痛風、感染性関節炎などと区別が必要になることがあります。

この記事では、膝の痛風の原因、症状、診断、治療、受診の目安、再発予防について、わかりやすく解説します。

膝の腫れや水がたまる症状については、膝が腫れた・水がたまる原因も参考にしてください。

この記事の結論

  • 痛風は、尿酸の結晶が関節内にたまり、強い炎症を起こす病気です。
  • 膝にも痛風発作が起こることがあります。
  • 膝の痛風では、急な腫れ、熱感、強い痛み、歩行困難が出ることがあります。
  • 血清尿酸値が高いと痛風を疑いますが、発作中に尿酸値が正常のこともあります。
  • 膝に水がたまっている場合は、関節液検査で結晶や感染の有無を確認することがあります。
  • 発熱、強い腫れ、赤み、動かせないほどの痛みがある場合は、感染性関節炎との区別が重要です。
  • 治療は、発作時の炎症を抑える治療と、再発を防ぐ尿酸管理に分けて考えます。

膝の痛風とは

痛風は、体の中に増えた尿酸が結晶となり、関節に炎症を起こす病気です。

尿酸は、プリン体という物質が体の中で分解されてできる老廃物の一つです。

尿酸が血液中に多い状態が続くと、尿酸の結晶ができやすくなります。

この結晶が関節の中や周囲にたまると、免疫反応が起こり、急な痛みと腫れが出ます。

これを痛風発作といいます。

痛風発作は足の親指の付け根に多いですが、膝に起こることもあります。

膝の痛風で起こりやすい症状

膝の痛風では、急に強い痛みが出ることがあります。

数時間から1日程度で痛みや腫れが強くなることもあります。

よくある症状

  • 急に膝が痛くなる
  • 膝が腫れる
  • 膝に水がたまる
  • 膝が熱い
  • 赤みがある
  • 膝を曲げ伸ばししにくい
  • 歩くと強く痛い
  • 夜間に痛みが強い
  • 過去に足の親指や足首の痛風発作がある

痛みが強いと、膝を少し動かすだけでもつらくなることがあります。

また、膝に水がたまり、膝全体が張ったように感じることもあります。

痛風はなぜ膝に起こるのですか?

尿酸値が高い状態が続くと、関節や組織に尿酸の結晶ができやすくなります。

結晶が関節内にあるだけでは、常に痛いとは限りません。

しかし、何らかのきっかけで結晶に対する炎症反応が強く起こると、急な痛風発作になります。

痛風発作のきっかけになりやすいこと

  • 脱水
  • 飲酒
  • 食べ過ぎ
  • 急な体重変化
  • 強い運動や疲労
  • 手術や入院など体へのストレス
  • 利尿薬など一部の薬
  • 尿酸値の急な変動

「昨日、何か悪いものを食べたから必ず痛風になった」という単純なものではありません。

痛風は、もともとの尿酸値、腎臓の働き、体質、生活習慣、薬、脱水、体調などが重なって起こります。

膝の痛風と間違えやすい病気

膝が急に腫れて痛い場合、痛風だけでなく、ほかの病気も考える必要があります。

病気 特徴 注意点
痛風 急な腫れ、熱感、強い痛み。尿酸値が高いことが多い 関節液で尿酸結晶を確認することがある
偽痛風 膝に多く、急に腫れて痛い。高齢者に多い ピロリン酸カルシウム結晶による炎症
感染性関節炎 強い痛み、腫れ、熱感、発熱を伴うことがある 緊急性が高く、早期診断・治療が必要
変形性膝関節症 歩行や階段で痛い。水がたまることもある 急な強い熱感がある場合は他の病気も確認
半月板損傷 ひねり、引っかかり、曲げ伸ばし制限があることがある 腫れの原因として鑑別が必要

特に重要なのは、感染性関節炎との区別です。

感染性関節炎は、関節内に細菌が入って炎症を起こす状態で、早期治療が必要です。

膝が強く腫れて熱を持ち、発熱や全身状態の悪さがある場合は、自己判断せず早めに受診してください。

偽痛風との違い

膝が急に腫れて痛くなる病気として、痛風とよく似ているのが偽痛風です。

痛風は尿酸の結晶が関係します。

一方、偽痛風はピロリン酸カルシウムという別の結晶が関係します。

症状だけでは区別が難しいことがあります。

そのため、膝に水がたまっている場合は、関節液を調べて、結晶の種類や感染の有無を確認することがあります。

診断では何をしますか?

診断では、症状、発症の仕方、過去の痛風発作、血液検査、画像検査、関節液検査などを組み合わせて判断します。

確認すること

  • いつから急に痛くなったか
  • 膝の腫れや熱感があるか
  • 発熱があるか
  • 過去に痛風発作があるか
  • 尿酸値が高いと言われたことがあるか
  • 腎臓病、糖尿病、高血圧などがあるか
  • 内服薬に利尿薬などがあるか
  • 膝に水がたまっているか

血液検査

血液検査では、尿酸値、炎症反応、腎機能などを確認します。

ただし、痛風発作中でも尿酸値が必ず高いとは限りません。

尿酸値が正常だから痛風ではない、とすぐに決めつけることはできません。

関節液検査

膝に水がたまっている場合、関節液を抜いて調べることがあります。

関節液検査では、尿酸結晶、偽痛風の結晶、細菌感染の有無などを確認します。

特に、感染性関節炎を疑う場合は重要な検査です。

画像検査

レントゲンでは、変形性膝関節症や石灰化、骨の状態を確認します。

超音波検査やCT、MRIなどが使われることもあります。

ただし、すべての方にすべての検査が必要というわけではありません。

痛風発作時の治療

痛風発作が起きている時期は、まず強い炎症を抑える治療を行います。

治療は、年齢、腎機能、胃腸の状態、持病、内服薬によって変わります。

使われることがある薬

  • 非ステロイド性抗炎症薬
  • コルヒチン
  • ステロイド薬
  • 関節内注射

どの薬が適しているかは、患者さんの状態によって異なります。

腎臓病、胃潰瘍、心血管疾患、抗凝固薬の使用などがある場合は、使いにくい薬があります。

自己判断で市販薬を飲み続けるのではなく、持病や内服薬を含めて医師に相談してください。

発作時に自宅でできること

  • 痛い膝を休ませる
  • 無理に歩かない
  • 膝を冷やす
  • 水分を適度にとる
  • 飲酒を控える
  • 強くマッサージしない

腫れて熱を持つ膝を強く揉んだり、無理に動かしたりすると痛みが悪化することがあります。

尿酸を下げる治療はいつ考えますか?

痛風は、発作の痛みを抑えるだけでは不十分なことがあります。

尿酸値が高い状態が続くと、痛風発作を繰り返したり、痛風結節、腎障害、尿路結石などにつながることがあります。

そのため、痛風を繰り返す方や、痛風結節がある方、腎機能などの問題がある方では、尿酸を下げる治療を検討します。

尿酸を下げる薬は、発作時の痛み止めではなく、再発予防のための治療です。

開始時期や薬の種類、目標値は、医師と相談して決めます。

尿酸値の目標

痛風の再発予防では、血清尿酸値を一定の目標まで下げることが重要です。

多くのガイドラインでは、血清尿酸値を6.0 mg/dL未満に管理することが目標として示されています。

痛風結節がある場合や重症例では、より低い目標が検討されることもあります。

ただし、目標値は個人の状態によって変わるため、主治医と相談してください。

食事だけで治りますか?

食事や生活習慣の見直しは大切です。

しかし、痛風を繰り返している場合、食事だけで十分に尿酸値を管理できるとは限りません。

特に、腎臓から尿酸を排泄しにくい体質や、尿酸値が高い状態が続いている方では、薬による治療が必要になることがあります。

生活で見直したいこと

  • 脱水を避ける
  • 水分を適度にとる
  • 飲酒量を見直す
  • 急な過食を避ける
  • 極端な糖質制限や急な減量を避ける
  • 体重を少しずつ調整する
  • 甘い飲み物を控える
  • バランスのよい食事を心がける

「プリン体を完全にゼロにする」ことを目指すより、無理なく続けられる生活習慣を整えることが大切です。

痛風発作中に運動してよいですか?

痛風発作で膝が腫れて熱を持ち、強く痛む時期は、無理に運動しないでください。

歩くと痛みが強い場合は、膝を休ませることが大切です。

痛みが落ち着いてきたら、日常生活の動きから少しずつ戻します。

ただし、発作を繰り返す場合は、運動量だけでなく尿酸管理も重要です。

膝の痛みがあるときの活動量調整については、休み方を考えるも参考になります。

人工膝関節や手術後の膝に痛風は起こりますか?

人工膝関節置換術後の膝や、手術後の膝が急に腫れて痛くなる場合は注意が必要です。

痛風や偽痛風の発作が起こることもありますが、感染や人工関節周囲のトラブルとの区別が非常に重要です。

人工関節が入っている膝で、急な腫れ、熱感、発熱、強い痛みがある場合は、自己判断せず、早めに医療機関へ相談してください。

人工膝関節置換術後の生活については、人工膝関節置換術後の生活も参考になります。

受診したほうがよい症状

次のような場合は、早めに医療機関で確認することをおすすめします。

受診の目安

  • 膝が急に強く痛くなった
  • 膝が大きく腫れている
  • 膝が熱を持っている
  • 赤みがある
  • 歩けない
  • 膝を曲げ伸ばしできない
  • 発熱がある
  • 全身がだるい
  • 人工関節が入っている膝が急に痛い
  • 糖尿病、腎臓病、免疫を下げる薬の使用がある
  • 痛風と言われたことがあるが、今回はいつもと違う

膝が急に腫れて熱を持つ場合、痛風だけでなく感染性関節炎を除外することが重要です。

よくある質問

Q1. 痛風は膝にも起こりますか?

起こります。痛風は足の親指の付け根に多いですが、足首、膝、手、肘などにも起こることがあります。膝では急な腫れ、熱感、強い痛み、歩行困難として現れることがあります。

Q2. 尿酸値が正常なら痛風ではありませんか?

必ずしもそうではありません。痛風発作中でも尿酸値が正常範囲になることがあります。症状、過去の発作、関節液検査などを合わせて判断します。

Q3. 膝の痛風と偽痛風はどう違いますか?

痛風は尿酸結晶、偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶が関係します。症状だけでは区別が難しいことがあるため、膝に水がたまっている場合は関節液検査を行うことがあります。

Q4. 痛風発作中は温めたほうがよいですか?

強い腫れや熱感がある時期は、温めるよりも冷却と安静が合うことが多いです。強く揉んだり、無理に動かしたりしないでください。

Q5. 痛風は食事を変えれば治りますか?

食事や生活習慣の見直しは重要ですが、痛風を繰り返す場合は食事だけでは不十分なことがあります。尿酸を下げる薬が必要になる場合もあります。

Q6. 膝が腫れているときに水を抜いたほうがよいですか?

膝に水が多くたまっている場合、痛みを和らげたり、関節液を調べたりする目的で穿刺を行うことがあります。特に感染や結晶性関節炎の鑑別に役立つことがあります。

まとめ

痛風は足の親指だけでなく、膝にも起こることがあります。

膝の痛風では、急な腫れ、熱感、強い痛み、歩行困難が出ることがあります。

変形性膝関節症、半月板損傷、偽痛風、感染性関節炎などと区別が必要になることがあります。

特に、発熱、強い腫れ、赤み、動かせないほどの痛みがある場合は、感染性関節炎との区別が重要です。

治療は、発作時の炎症を抑える治療と、再発を防ぐ尿酸管理に分けて考えます。

痛風発作を繰り返す場合は、痛みが治まった後も尿酸値を管理することが大切です。

参考文献

  1. 日本痛風・尿酸核酸学会:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版
  2. NICE. Gout: diagnosis and management. NICE guideline NG219. 2022.
  3. FitzGerald JD, et al. 2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout.
  4. StatPearls. Gout.
  5. StatPearls. Septic Arthritis.
  6. StatPearls. Calcium Pyrophosphate Deposition Disease.

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。急な膝の腫れ、熱感、赤み、発熱、歩行困難、人工関節が入っている膝の急な痛みがある場合は、速やかに医療機関へご相談ください。