診断

Q角 (Q angle)とは?

大腿四頭筋が発揮する力の方向と大きさは、膝蓋大腿関節のバイオメカニクスに大きな影響を与えます。

大腿四頭筋が発揮する力の軸は、外側広筋の大きな働きにより、関節のラインの外側に位置します。

膝蓋大腿部の病変と膝蓋骨が過度に外側へ偏移することには関連性があるため、膝蓋骨に対して大腿四頭筋の力の軸がどれだけ外側に変位しているかを理解することは、臨床的に意味のある指標となります。

このような指標は、Quadriceps angle(Q angle)と呼ばれています。 

今回はQ角 (Q angle)について、その標準値をおさえ、測定方法測定上の注意点Q角に影響を与える要因を見ていきます。最後にQ角を測定する臨床的重要性について様々な文献をもとに解説していきます。

Q角 (Q angle) の標準値

標準値

平均14°(男性12°、女性17°)

Qアングルの標準値は、男性では12度、女性では17度です(Insall J, et al. J Bone Joint Surg. 1976)。

Q angleをどこから異常値としてみなすかは、男性と女性の骨格の違い、さらには人種間の差もあります。

下の図は男性と女性の骨格の違いです。測定方法は後に示しますが、 Q angle は骨盤の形に依存するため女性の方が大きくなります。さらに、欧米人は日本人に比べて女性の骨盤は大きいです。

文献によって Q angle の標準値に違いが出るのはこのためですが、 Q angle が20度を超えると膝関節にかかる力が変化するというのが一般的な見解です。さらに、 Q angle が10度以下でも膝関節にかかる力は変化します。

Q angle の異常値

・10度以下
・20度以上

Q角 (Q angle) の 測定方法

Q angleとは、上前腸骨棘と膝蓋骨中心から結んだ線と脛骨粗面から膝蓋骨中心を結んだ線がなす角と定義されます。

正確な測定方法は立位長下肢レントゲンを用いて測定する手法です。

レントゲンではなく、実際に体表面から測定する方法は患者さんに立ってもらって測定する方法と仰臥位で測定する方法がありますが、仰臥位で大腿四頭筋を弛緩させた状態で、膝を完全に伸展させた状態または伸展に近い状態で測定されるのが一般的です。

しかし、日常生活では体重を支える力が膝関節に加わるため、立った状態の方がより正確なQ angleを測定することが出来ると言われています。

Youtubeに仰臥位での測定方法があるので参照してみてください。

Q角 (Q angle) 測定上の注意点

Q angle とは大腿四頭筋が発揮する力の軸を特徴的な骨の場所を利用して推定するものです。

言い換えると、大腿四頭筋がどのような方向に膝蓋骨を引っ張り上げているかということを測定しているのです。

Q angle を膝蓋骨の外側へ引っ張る力の測定値として使用する場合の問題点は、上前腸骨棘と膝蓋骨の中央部を結ぶ線は、大腿四頭筋の力のラインの推定値に過ぎず、患者さんの実際の力のラインを反映しているとは限らないことです。

つまり、患者さんの内側広筋と外側広筋の間にかなりの不均衡がある場合、大腿四頭筋の実際の牽引力が推定ラインに沿っていないため、Qアングルは膝蓋骨を外側に引っ張る力の誤った推定につながる可能性があります。

さらに、不均衡な力のために膝蓋骨が大腿骨滑車の中で外側に位置していると、膝蓋骨が上前腸骨棘および脛骨結節の軸が直線に近い状態となるため、Qアングルが小さくなります

変形性膝関節症を有する高齢者(内側広筋が著しく委縮している)の測定の場合には注意が必要です。

Q角 (Q angle) に影響を与える要因

要因

・大腿骨の前捻
・脛骨の外旋
・脛骨結節の外側への変位
・Genu valgum

仰臥位でQ angle を測定する場合、大腿骨の前捻角が大きいほど大腿骨は外旋し、脛骨の外旋が大きくなり結果として脛骨結節が外側に変位します。

このような患者さんに対する Q angle を測定する場合には立位・荷重位における測定が必要になります。大腿骨前捻角は非荷重位での膝関節アライメントと相関があるが、荷重位での膝関節アライメントとはほぼ無相関のようです。

Genu valgumとは一般的にKnock Kneeと呼ばれます。脚を伸ばしたときに膝が内側に入り込み、互いに接触してしまう状態です。重度の外反変形膝の方は、まっすぐに立った時に両足を合わせることができないのが一般的です。

整形外科の中では Genu valgum よりも genu recurvatum という言葉が有名です。

余談になりますが、オオカミに育てられた女の子(アマラとカマラ)の話は幼少時に親に捨てられた後、文明から切り離されてオオカミに育てられた子供の事例として有名な逸話です。以下、Wikipediaから抜粋。

アマラとカマラはともにオオカミのような振る舞いを示した。ひざや腰の関節はかたく、立ち上がったり歩いたりすることはできず、四つ足で移動した。

File:Genu recuravatum.jpg

四つ足で歩き、生肉を食べたりするなどしている2人の写真は、彼女たちが死んだ後に撮影されたものである。この写真は、ミドナプールから来た別の女の子たちがリクエストに応じ、ポーズをとっているのを撮影している。その写真の中の女の子の身体と顔は、実際の写真のカマラのものとは、完全に異なるものであった。

というものですが、この写真は極度のgenu recurvatumというものであり、正常より10度を超える過伸展を起こす膝の状態を genu recurvatum といいます。多くの場合、膝の後部構造の全般的な弛緩が原因です。

Q角 (Q angle) を測定する臨床的重要性

膝の機能を評価するためには、膝蓋大腿関節の正常な解剖学的および生体力学的特徴を理解することが不可欠です。

大腿四頭筋と膝蓋腱の複合的な牽引力のベクトルによって形成されるQ angle は、横方向の力がどれくらい膝蓋骨かかっているかを推定するために重要な指標です。

そのため、Q angle を増加させるようなアライメントの変化は、膝蓋骨にかかる横方向の力を増加させると考えられます。

この横方向の力が増加すると、大腿骨滑車の外側に対する膝蓋骨の圧迫が増加する可能性があります。そのため、膝蓋骨にかかる横方向への力が大きい場合には、膝を伸ばした状態で大腿四頭筋が働くと、膝蓋骨が実際に大腿骨滑車を越えて亜脱臼または脱臼する可能性があります。

Q angleの増加は膝蓋軟骨軟化症、膝蓋骨脱臼だけでなく、ランナー膝腸脛靭帯炎などのスポーツ障害にもつながります。

整形外科が飛びつきやすい骨の問題だけでなく、原因となり得る内側側副靭帯の機能低下腸脛靭帯の過緊張足関節の過度の内反などにも注意を払う必要があります。