膝が痛いとき、「運動したほうがよいのか」「休んだほうがよいのか」と迷う方は多いと思います。

病院で「運動しましょう」「筋力をつけましょう」と言われても、痛みがある状態で動くのは不安です。

膝の運動療法で大切なのは、痛みを我慢して鍛えることではありません。

大切なのは、膝にかかる負担を調整しながら、必要な動きと筋力を少しずつ取り戻すことです。

この記事では、膝の痛みがある方に向けて、運動療法をどのように考えればよいかを解説します。

膝の痛みで運動を始める前に、受診の目安を知りたい方は、先に 膝の痛みで病院へ行く目安 も参考にしてください。

この記事の結論

  • 膝の運動療法は、痛みを我慢して鍛えることではありません。
  • 目的は、膝にかかる負担を減らし、動きやすい体を作ることです。
  • ストレッチ、筋力トレーニング、有酸素運動、動作練習を組み合わせます。
  • 運動中の軽い痛みより、運動後や翌日の悪化を重視します。
  • 膝が腫れる、熱を持つ、歩けない場合は、運動より診察を優先します。
  • 変形性膝関節症でも、痛みや状態に合わせた運動は大切です。
  • 続けられる運動を選ぶことが、最も重要です。

運動療法とは何ですか?

運動療法とは、体を動かすことで痛みや機能を改善する治療の一つです。

膝の場合、単に太ももの筋肉を鍛えるだけではありません。

膝の運動療法では、次のようなことを目的にします。

  • 膝の曲げ伸ばしを保つ
  • 太ももやお尻の筋力を保つ
  • 膝に負担の少ない歩き方を身につける
  • 階段や立ち上がりを楽にする
  • 膝の不安感を減らす
  • 運動後の痛みや腫れを起こしにくくする
  • スポーツや日常生活へ安全に戻る

つまり、運動療法は「筋トレだけ」ではなく、膝を使いやすくするための総合的な治療です。

運動療法は「痛みを我慢する治療」ではありません

膝の運動療法でよくある誤解が、「痛くても我慢して鍛えればよい」という考え方です。

これはおすすめできません。

痛みを我慢して運動を続けると、膝の腫れが増えたり、歩き方が崩れたり、別の部位に負担がかかったりすることがあります。

一方で、少しでも痛みがあるからまったく動かさない、というのも問題になることがあります。

安静が長く続くと、筋力低下、関節のこわばり、体力低下、歩行能力の低下につながります。

運動療法の基本

  • 痛みを無視して頑張りすぎない
  • 怖がって完全に動かさないことも避ける
  • 痛みが増えない範囲を探す
  • 翌日の膝の状態を確認する
  • 少しずつ負荷を増やす

痛みがあるときの活動量の調整については、膝が痛いときの休み方 も参考にしてください。

まず受診したほうがよい膝の痛み

運動療法は大切ですが、すべての膝痛にすぐ運動を始めてよいわけではありません。

次のような症状がある場合は、運動療法を始める前に整形外科などで原因を確認することをおすすめします。

早めに受診したほうがよい症状

  • けがの直後から強く痛む
  • 膝が大きく腫れている
  • 膝に熱感がある
  • 体重をかけて歩けない
  • 膝が引っかかって伸びない・曲がらない
  • 膝くずれを繰り返す
  • 夜間や安静時にも強い痛みがある
  • 発熱を伴う
  • 痛みが日ごとに強くなっている

膝の腫れや水がたまる症状がある場合は、膝が腫れて水がたまる原因 も確認してください。

膝の運動療法で大切な4つの要素

1. 関節を動かしやすくする

膝が痛いと、無意識に動かす範囲が小さくなります。

その状態が続くと、膝が曲がりにくい、伸びにくい、立ち上がりにくい、階段がつらいといった問題につながります。

そのため、まずは痛みのない範囲で膝を曲げ伸ばしし、関節の動きを保つことが大切です。

  • 膝を伸ばす運動
  • 膝をゆっくり曲げる運動
  • 太ももやふくらはぎのストレッチ
  • 股関節や足首の動きを整える運動

膝のストレッチについては、膝のストレッチ も参考にしてください。

2. 膝を支える筋力を保つ

膝を支える筋肉として、太ももの前側の筋肉、太ももの後ろ側の筋肉、お尻の筋肉、股関節まわりの筋肉が重要です。

膝が痛い方では、太ももの筋力だけでなく、お尻や股関節まわりの筋力が落ちていることもあります。

膝だけを鍛えるのではなく、脚全体で体を支えることを目標にします。

  • 太ももに力を入れる運動
  • 椅子からの立ち座り
  • お尻の筋力トレーニング
  • 股関節を安定させる運動
  • 片脚立ちやバランス練習

筋力トレーニングの具体的な考え方は、膝の運動療法 も参考になります。

3. 有酸素運動で体力を保つ

膝の痛みがあると、歩く量が減り、体力が落ちやすくなります。

体力が落ちると、少し動くだけで疲れやすくなり、さらに活動量が減るという悪循環に入りやすくなります。

膝に負担の少ない有酸素運動を取り入れることで、体力を保ちやすくなります。

  • 短時間の平地歩行
  • 自転車エルゴメーター
  • 水中歩行
  • 軽い体操
  • 痛みの少ない範囲での散歩

膝痛と体重管理については、膝痛と体重管理 も参考にしてください。

4. 日常動作を見直す

膝の痛みは、運動の時間だけでなく、日常生活の動作にも影響されます。

階段、歩行、立ち上がり、しゃがみ込み、床からの立ち上がり、荷物を持つ動作などが膝に負担をかけることがあります。

運動療法では、筋力をつけるだけでなく、膝に負担の少ない動き方を身につけることも大切です。

  • 椅子から立つときに手を使う
  • 階段では手すりを使う
  • 深いしゃがみ込みを避ける
  • 長時間立ちっぱなしを避ける
  • 買い物の荷物を分けて持つ
  • 痛みが強い日は歩く距離を短くする

運動してよい痛み・控えたほうがよい痛み

運動療法では、痛みの判断がとても重要です。

目安としては、運動中の痛みだけでなく、運動後と翌日の膝の状態を確認します。

続けてもよいことが多い目安

  • 運動中の痛みが軽い
  • 運動中に痛みが強くならない
  • 運動後に痛みが長く残らない
  • 翌日に腫れが増えない
  • 歩き方が崩れない
  • 階段や日常生活が悪化しない

負荷を下げたほうがよいサイン

  • 運動中に痛みがだんだん強くなる
  • 運動後に膝が腫れる
  • 翌日に痛みが強くなる
  • 階段がつらくなる
  • 膝をかばって歩く
  • 痛みが数日続く

運動量は、「その場でできるか」だけでなく、翌日に悪化していないかで判断しましょう。

膝痛がある方に始めやすい運動

膝が痛い方では、いきなり強い筋トレや長時間歩行を始める必要はありません。

まずは、膝への衝撃が少なく、続けやすい運動から始めます。

運動 目的 注意点
足首の曲げ伸ばし 血流を保つ、動き出しを楽にする 痛みのない範囲で行う
膝の曲げ伸ばし 関節の動きを保つ 無理に深く曲げない
太ももに力を入れる運動 膝を支える筋力を保つ 息を止めない
椅子からの立ち座り 日常動作の改善 低すぎる椅子は避ける
平地歩行 体力維持 痛みが出る距離を超えない
自転車 膝への衝撃を抑えた有酸素運動 サドルを低くしすぎない

変形性膝関節症と運動療法

変形性膝関節症では、「動くとすり減るのではないか」と心配される方がいます。

たしかに、痛みを我慢して長時間歩く、階段を繰り返す、強い負荷の運動を続けることは、膝の痛みを悪化させることがあります。

しかし、適切な運動療法は、膝の痛みや機能の改善に役立つことがあります。

変形性膝関節症では、膝の状態に合わせて、筋力、柔軟性、歩行、体重管理、生活動作を組み合わせて考えることが大切です。

変形性膝関節症について詳しく知りたい方は、変形性膝関節症とは も参考にしてください。

サポーターや杖を使ってもよいですか?

運動療法を行うときに、サポーターや杖を使うことは悪いことではありません。

膝の不安感が強い場合、サポーターや杖を使うことで歩きやすくなることがあります。

ただし、サポーターや杖は痛みの原因を治す道具ではありません。あくまで、膝への負担を調整しながら動くための補助です。

サポーターについては、膝サポーターの選び方 を参考にしてください。

手術後の運動療法

膝の手術後は、手術内容によって運動療法の進め方が大きく異なります。

半月板手術、前十字靱帯再建術、骨切り術、人工膝関節置換術では、荷重の時期、膝を曲げる範囲、筋力トレーニング、スポーツ復帰のタイミングが異なります。

そのため、手術後は自己判断で運動量を増やさず、主治医や理学療法士の指示に従うことが大切です。

運動療法を続けるコツ

運動療法で大切なのは、短期間だけ頑張ることではなく、続けられる形にすることです。

最初から完璧にしようとすると、痛みが出たり、疲れたりして続きにくくなります。

続けるための工夫

  • 1回の運動時間を短くする
  • 毎日同じ時間に行う
  • 痛みが強い日は軽い運動に変える
  • 運動後の膝の反応を記録する
  • できた日をカレンダーに印をつける
  • 歩数や回数より、翌日の膝の状態を重視する

運動療法は、たくさん行えばよいわけではありません。自分の膝に合う量を見つけることが大切です。

よくある質問

Q1. 膝が痛いときも運動したほうがよいですか?

痛みの原因や程度によります。軽い痛みで、運動後や翌日に悪化しない場合は、痛みのない範囲で動くことが役立つことがあります。一方で、膝が腫れている、熱を持つ、歩けない場合は、運動より診察を優先してください。

Q2. 運動中に少し痛みがあっても続けてよいですか?

軽い痛みで、運動中に強くならず、翌日に腫れや痛みが増えない場合は、許容範囲内のことがあります。運動後や翌日に悪化する場合は、負荷を下げましょう。

Q3. 膝痛には筋トレとストレッチのどちらが大切ですか?

どちらも大切です。ストレッチは動きやすさを保ち、筋力トレーニングは膝を支える力を高めます。痛みの原因や状態に合わせて組み合わせることが重要です。

Q4. ウォーキングは膝に良いですか?

短時間の平地歩行は、体力維持に役立つことがあります。ただし、歩くと痛みが強くなる、翌日に腫れる、階段がつらくなる場合は、距離や時間を減らしましょう。

Q5. 変形性膝関節症でも運動してよいですか?

多くの場合、膝の状態に合わせた運動療法は大切です。ただし、強い痛みや腫れがあるときに無理をする必要はありません。痛みと腫れの反応を見ながら進めます。

Q6. 運動療法で手術を避けられますか?

運動療法で痛みや機能が改善し、手術を急がずにすむ方もいます。ただし、膝の変形が進んでいる場合や生活障害が大きい場合は、手術療法を含めて相談が必要です。

Q7. どれくらい続ける必要がありますか?

数日で効果を判断するのではなく、数週間から数か月単位で考えることが多いです。痛みを悪化させない範囲で、生活の一部として続けることが大切です。

まとめ

膝の運動療法は、痛みを我慢して鍛えることではありません。

膝にかかる負担を調整しながら、関節の動き、筋力、体力、日常動作を少しずつ整えていく治療です。

運動中の軽い痛みだけで判断するのではなく、運動後や翌日の膝の状態を確認しましょう。

膝が腫れる、熱を持つ、歩けない、膝くずれや引っかかりがある場合は、運動を続ける前に医療機関で原因を確認してください。

自分の膝に合った運動を続けることが、膝の痛みを悪化させず、生活を広げるための第一歩になります。

参考文献

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  6. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Osteoarthritis of the Knee Evidence-Based Clinical Practice Guideline. 2021.

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。膝の痛み、腫れ、熱感、歩行困難、急な悪化がある場合は、整形外科などの医療機関へご相談ください。