膝が急に腫れて、熱を持ち、強く痛くなることがあります。

「痛風かもしれない」と思う方も多いですが、膝が急に腫れる病気には、痛風だけでなく偽痛風があります。

偽痛風は、医学的にはピロリン酸カルシウム結晶沈着症、またはCPPDと呼ばれます。

膝に起こることが多く、変形性膝関節症、痛風、感染性関節炎などと症状が似ているため、区別が重要です。

この記事では、偽痛風の原因、症状、痛風との違い、検査、治療、受診の目安について、わかりやすく解説します。

膝の痛風については、膝の痛風とはも参考にしてください。

この記事の結論

  • 偽痛風は、ピロリン酸カルシウム結晶が関節に炎症を起こす病気です。
  • 膝に起こることが多く、急な腫れ、熱感、強い痛みが出ることがあります。
  • 痛風は尿酸結晶、偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶が原因です。
  • 症状だけでは、痛風、偽痛風、感染性関節炎を見分けにくいことがあります。
  • 膝に水がたまっている場合、関節液検査で結晶や感染の有無を確認することがあります。
  • 治療は、炎症を抑える薬、関節液の穿刺、安静、冷却などを組み合わせます。
  • 発熱、強い腫れ、赤み、歩けないほどの痛みがある場合は、早めの受診が必要です。

偽痛風とは

偽痛風とは、関節の中にピロリン酸カルシウム結晶がたまり、炎症を起こす病気です。

英語では、calcium pyrophosphate deposition disease と呼ばれ、略してCPPDと表記されます。

「偽痛風」という名前は、痛風に似た症状を起こすためにつけられた呼び方です。

ただし、痛風と偽痛風は原因となる結晶が異なります。

  • 痛風:尿酸結晶
  • 偽痛風:ピロリン酸カルシウム結晶

そのため、痛風の薬がそのまま偽痛風の再発予防になるわけではありません。

偽痛風は膝に多いですか?

偽痛風は、膝に起こることが多い病気です。

膝以外では、手首、肩、足首、肘などに起こることもあります。

膝では、急に水がたまり、腫れて、熱を持ち、強く痛むことがあります。

特に高齢の方で、もともと変形性膝関節症がある場合、膝の痛みが急に悪化したように感じることがあります。

偽痛風の症状

偽痛風では、急に関節の炎症が起こります。

膝の場合は、次のような症状が出ることがあります。

よくある症状

  • 膝が急に痛くなる
  • 膝が腫れる
  • 膝に水がたまる
  • 膝が熱を持つ
  • 赤みが出ることがある
  • 膝を曲げ伸ばししにくい
  • 歩くと強く痛い
  • 階段や立ち上がりがつらい
  • 発熱を伴うことがある

症状だけを見ると、痛風や感染性関節炎と似ていることがあります。

そのため、「膝が腫れて痛いから偽痛風」と自己判断するのは危険です。

偽痛風と痛風の違い

偽痛風と痛風は、どちらも結晶が関節炎を起こす病気です。

しかし、原因となる結晶や起こりやすい関節が異なります。

項目 偽痛風 痛風
原因 ピロリン酸カルシウム結晶 尿酸結晶
起こりやすい関節 膝、手首、肩、足首など 足の親指、足首、膝など
尿酸値 関係しないことが多い 高いことが多い
画像所見 軟骨石灰化がみられることがある 慢性例では骨びらんや痛風結節を伴うことがある
再発予防 結晶を溶かす確立した薬はない 尿酸を下げる薬を使うことがある

痛風では尿酸値を管理することが重要ですが、偽痛風では尿酸値を下げても原因結晶そのものには直接作用しません。

そのため、痛風と偽痛風を区別することが大切です。

偽痛風はなぜ起こるのですか?

偽痛風は、関節の軟骨や半月板などにピロリン酸カルシウム結晶が沈着し、それが炎症を起こすことで発症します。

なぜ結晶ができるかは、すべての方で明確に説明できるわけではありません。

ただし、次のような要素が関係すると考えられています。

関係しやすい要素

  • 加齢
  • 変形性関節症
  • 過去の関節外傷
  • 手術後
  • 脱水や体調不良
  • 入院や手術など体へのストレス
  • 副甲状腺機能亢進症
  • 低マグネシウム血症
  • ヘモクロマトーシス
  • 甲状腺機能低下症などの代謝性疾患

高齢の方では、明らかなきっかけがなく発症することもあります。

一方で、比較的若い方で偽痛風が疑われる場合は、代謝性疾患などを確認することがあります。

レントゲンでわかりますか?

偽痛風では、レントゲンで軟骨石灰化が見えることがあります。

膝では、半月板や関節軟骨に線状の石灰化が見えることがあります。

この所見は、偽痛風を疑う手がかりになります。

ただし、石灰化が見えるから必ず症状の原因とは限りません。

また、レントゲンで石灰化がはっきり見えなくても、偽痛風を完全に否定できるわけではありません。

診断では何をしますか?

偽痛風の診断では、症状、診察、血液検査、画像検査、関節液検査を組み合わせて判断します。

診察で確認すること

  • いつから急に痛くなったか
  • 膝が腫れているか
  • 膝に熱感があるか
  • 赤みがあるか
  • 発熱があるか
  • 膝を動かせるか
  • 歩けるか
  • 過去にも同じ発作があったか
  • 人工関節や手術歴があるか

血液検査

血液検査では、炎症反応、白血球数、腎機能、尿酸値、必要に応じて代謝性疾患に関係する項目を確認します。

ただし、血液検査だけで偽痛風と確定することはできません。

関節液検査

膝に水がたまっている場合は、関節液を抜いて調べることがあります。

関節液検査では、ピロリン酸カルシウム結晶の有無を確認します。

同時に、感染性関節炎を疑う場合は、細菌検査も重要です。

膝が強く腫れて熱を持っている場合、偽痛風と感染性関節炎の区別が非常に重要になります。

感染性関節炎との区別が重要です

偽痛風と特に区別が必要なのが、感染性関節炎です。

感染性関節炎は、関節内に細菌が入り、急激な炎症を起こす病気です。

治療が遅れると関節の障害につながることがあるため、早期診断・治療が重要です。

感染性関節炎も考える症状

  • 発熱がある
  • 膝が強く赤い
  • 膝が強く熱を持っている
  • 少し動かすだけで激痛がある
  • 歩けない
  • 全身がだるい
  • 糖尿病や免疫を下げる薬の使用がある
  • 人工関節が入っている膝が急に腫れた

このような症状がある場合は、自己判断で様子を見すぎないようにしてください。

偽痛風の治療

偽痛風の治療は、痛みと炎症を抑えることが中心です。

痛風のように、尿酸を下げて結晶を減らす治療とは考え方が異なります。

治療で行うこと

  • 安静
  • 冷却
  • 関節液を抜く処置
  • 非ステロイド性抗炎症薬
  • コルヒチン
  • ステロイド薬
  • 関節内注射
  • 再発を繰り返す場合の内服調整

どの治療を選ぶかは、年齢、腎機能、胃腸の状態、心臓や血管の病気、糖尿病、内服薬などによって変わります。

特に高齢の方では、薬の副作用に注意しながら治療を選ぶ必要があります。

膝の水は抜いたほうがよいですか?

膝に水が多くたまっている場合、関節液を抜くことで痛みや張りが軽くなることがあります。

また、関節液を調べることで、偽痛風、痛風、感染性関節炎の区別に役立ちます。

ただし、すべての膝の水を必ず抜く必要があるわけではありません。

痛みの強さ、腫れの程度、感染の可能性、これまでの経過をみて判断します。

膝の水については、膝が腫れた・水がたまる原因も参考にしてください。

自宅でできる対応

偽痛風が疑われる急性期は、無理に動かさないことが大切です。

痛みが強い時期の対応

  • 膝を休ませる
  • 無理に歩かない
  • 膝を冷やす
  • 強く揉まない
  • 温めすぎない
  • 水分を適度にとる
  • 自己判断で運動を再開しない

膝が腫れて熱を持っている時期に、無理なストレッチや筋トレを行う必要はありません。

炎症が落ち着いてから、少しずつ日常生活の動きに戻していきます。

再発することはありますか?

偽痛風は再発することがあります。

一度発作が治まっても、結晶が完全になくなるわけではありません。

脱水、体調不良、手術、入院、強い疲労などをきっかけに再び膝が腫れることがあります。

発作を繰り返す場合は、主治医と相談しながら、発作時の対応や再発予防の治療方針を決めておくことが大切です。

変形性膝関節症との関係

偽痛風は、変形性膝関節症と一緒にみられることがあります。

もともと膝に変形があり、普段から痛みや水腫がある方で、ある日急に腫れと熱感が強くなる場合があります。

この場合、「変形性膝関節症が急に悪くなった」と思っていても、実際には偽痛風の発作が重なっていることがあります。

変形性膝関節症については、変形性膝関節症とはも参考にしてください。

人工膝関節が入っている膝の偽痛風

人工膝関節置換術後の膝が急に腫れて痛くなる場合は、特に注意が必要です。

偽痛風や痛風のような結晶性関節炎が起こることもありますが、人工関節周囲感染との区別が非常に重要です。

人工関節が入っている膝で、急な腫れ、熱感、発熱、強い痛みがある場合は、自己判断せず早めに医療機関へ相談してください。

受診したほうがよい症状

次のような場合は、早めに整形外科などの医療機関を受診してください。

早めの受診が必要な症状

  • 膝が急に大きく腫れた
  • 膝が熱を持っている
  • 赤みがある
  • 歩けないほど痛い
  • 膝を少し動かすだけで強く痛い
  • 発熱がある
  • 全身のだるさがある
  • 痛みが日ごとに強くなる
  • 人工関節が入っている膝が急に痛い
  • 糖尿病、腎臓病、免疫を下げる薬の使用がある

偽痛風は自然に落ち着くこともありますが、感染性関節炎を見逃さないことが重要です。

よくある質問

Q1. 偽痛風は膝に起こりますか?

起こります。偽痛風は膝に起こることが多く、急な腫れ、熱感、強い痛み、膝の水として現れることがあります。

Q2. 偽痛風と痛風は何が違いますか?

痛風は尿酸結晶、偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶が関係します。症状は似ていますが、原因となる結晶が異なるため、治療や再発予防の考え方も異なります。

Q3. 尿酸値が高いと偽痛風ですか?

尿酸値が高い場合は痛風を疑います。偽痛風は尿酸ではなくピロリン酸カルシウム結晶が原因です。ただし、痛風と偽痛風の症状は似ているため、関節液検査などで確認することがあります。

Q4. 偽痛風はレントゲンでわかりますか?

レントゲンで軟骨石灰化が見えることがあります。ただし、石灰化があるだけで症状の原因と断定できるわけではなく、石灰化が見えなくても偽痛風を完全に否定できるわけではありません。

Q5. 偽痛風は治りますか?

急性発作の炎症は治療で落ち着くことが多いです。ただし、結晶そのものを完全に消す治療は確立されていないため、再発することがあります。

Q6. 膝の水は抜いたほうがよいですか?

膝に水が多くたまっている場合、痛みを和らげる目的や、偽痛風・痛風・感染性関節炎を区別する目的で関節液を抜くことがあります。必要性は診察で判断します。

まとめ

偽痛風は、ピロリン酸カルシウム結晶が関節に炎症を起こす病気です。

膝に起こることが多く、急な腫れ、熱感、強い痛み、膝の水として現れることがあります。

痛風とは原因となる結晶が異なり、痛風では尿酸結晶、偽痛風ではピロリン酸カルシウム結晶が関係します。

症状だけでは、痛風、偽痛風、感染性関節炎を見分けにくいことがあります。

特に、発熱、強い赤み、歩けないほどの痛み、人工関節が入っている膝の急な腫れがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。

治療では、炎症を抑える薬、関節液の穿刺、安静、冷却などを組み合わせます。

参考文献

  1. Calcium Pyrophosphate Deposition Disease. StatPearls. NCBI Bookshelf.
  2. Abhishek A, et al. The 2023 ACR/EULAR classification criteria for calcium pyrophosphate deposition disease.
  3. Zhang W, et al. European League Against Rheumatism recommendations for calcium pyrophosphate deposition. Part I: terminology and diagnosis.
  4. Mayo Clinic. Pseudogout – Symptoms and causes.
  5. StatPearls. Septic Arthritis.

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。急な膝の腫れ、熱感、赤み、発熱、歩行困難、人工関節が入っている膝の急な痛みがある場合は、速やかに医療機関へご相談ください。