膝の痛みで病院へ行く目安|救急・整形外科を受診すべき症状
膝が痛いとき、「病院へ行くべきか」「少し様子を見てもよいのか」「整形外科と救急のどちらへ行けばよいのか」で迷うことがあります。
膝の痛みの多くは、変形性膝関節症、半月板損傷、膝蓋大腿痛、腱や滑液包の障害など、整形外科で相談できる病気です。一方で、骨折、靱帯損傷、感染症、血栓症、急性の炎症など、早めに診断した方がよい病気もあります。
大切なのは、痛みの強さだけでなく、外傷の有無、腫れ方、歩けるか、膝が伸びるか、発熱や赤みがあるか、足先のしびれや冷感があるかを確認することです。
この記事では、膝の痛みで病院へ行く目安、救急を考える症状、整形外科で行う診察と検査、受診前にまとめておくとよい情報を解説します。
当日または救急で相談した方がよい症状
- 転倒・スポーツ外傷・交通事故の後、体重をかけられない
- 膝や脚に明らかな変形がある
- けがの後、数時間以内に膝が大きく腫れた
- 膝が引っかかり、完全に伸ばせない、または曲げられない
- 膝が何度も抜けて転びそうになる
- 膝が赤く熱を持ち、発熱・寒気・強いだるさを伴う
- 人工膝関節や膝の手術後に、痛み・腫れ・熱感が急に強くなった
- 足先が冷たい、白い、紫色になる、しびれる、動かしにくい
- 片脚のふくらはぎまで腫れ、胸痛や息苦しさを伴う
- 夜間・安静時にも強く痛み、日ごとに悪化している
膝の痛みは何科を受診すればよいですか?
まずは整形外科が基本です
膝の痛み、腫れ、曲げ伸ばしのしにくさ、歩行時痛、スポーツ外傷、階段での痛みなどは、まず整形外科で相談するのが基本です。
整形外科では、骨、関節、半月板、靱帯、腱、筋肉、神経などを診察し、必要に応じてX線、超音波、MRI、血液検査、関節液検査などを行います。
救急外来を考える場面
次のような場合は、通常の外来予約を待たず、救急外来や当日対応できる医療機関へ相談してください。
- 強い外傷後に歩けない
- 膝や脚が変形している
- 足先の色や感覚がおかしい
- 膝が赤く熱を持ち、発熱を伴う
- 術後に感染や血栓が疑われる症状がある
内科・リウマチ科・血管外科が関係することもあります
膝の痛みの原因が、痛風、偽痛風、関節リウマチ、感染症、血管の病気、血栓症などの場合は、整形外科だけでなく内科、リウマチ科、血管外科、救急科と連携して診療することがあります。
「膝が痛い=必ず膝関節だけの病気」とは限りません。発熱、複数関節の腫れ、しびれ、ふくらはぎの腫れ、胸痛や息苦しさなどがある場合は、全身の病気も考える必要があります。
緊急性を判断するポイント
1.外傷後に歩けるか
転倒、スポーツ、交通事故の後に体重をかけられない場合は、骨折、靱帯損傷、膝蓋骨脱臼、半月板損傷などを考えます。
「少し休めば治る」と決めつけず、強い痛みや荷重困難がある場合は早めに受診してください。
2.急に大きく腫れたか
けがの後、数時間以内に膝が大きく腫れた場合は、関節内に血液がたまっている可能性があります。前十字靱帯損傷、膝蓋骨脱臼、骨軟骨損傷、骨折などが隠れていることがあります。
3.膝が伸びるか
膝が引っかかったまま完全に伸びない状態は、転位した半月板や関節内遊離体などによって関節の動きが妨げられている可能性があります。
無理に曲げ伸ばししてロックを外そうとせず、早めに整形外科を受診してください。
4.赤み・熱感・発熱があるか
膝が赤く熱を持ち、発熱や寒気を伴う場合は、化膿性関節炎、蜂窩織炎、痛風・偽痛風などを考えます。
特に、膝を少し動かすだけで強く痛い、関節が大きく腫れている、糖尿病や免疫を抑える薬の使用がある、人工関節が入っている場合は注意が必要です。
感染が疑われる場合は、関節液検査や血液検査を早急に行う必要があります。
5.足先の色・しびれ・冷感があるか
膝のけがの後に、足先が冷たい、白い、紫色になる、しびれる、動かしにくい場合は、血管や神経の損傷を考えます。
これは救急で評価すべき症状です。
6.ふくらはぎまで腫れているか
片脚だけふくらはぎまで腫れる、熱感や赤みがある場合は、ベーカー嚢胞の破裂だけでなく、深部静脈血栓症も考える必要があります。
胸痛、突然の息苦しさ、血の混じったせき、失神を伴う場合は、肺塞栓症の可能性があるため直ちに救急要請してください。
症状別:どのくらい急いで受診するべきか
| 症状 | 受診の目安 |
|---|---|
| 外傷後に歩けない、変形がある | 当日。救急または当日対応できる整形外科へ。 |
| 発熱、赤み、熱感を伴う腫れ | 当日。感染や急性炎症を確認します。 |
| 膝が伸びない、ロックしている | 早めに整形外科。無理に動かさないでください。 |
| 膝が何度も抜ける、ぐらつく | 早めに整形外科。靱帯や膝蓋骨不安定性を確認します。 |
| 数週間続く痛み、徐々に悪化する痛み | 整形外科を予約。原因と治療方針を確認します。 |
| 軽い違和感のみで、日常生活は可能 | 数日から1〜2週間のセルフケアで改善するか確認。ただし悪化すれば受診。 |
少し様子を見てもよいことがある膝の痛み
次のような場合は、数日から1〜2週間ほど、負荷を減らしながら経過を見てもよいことがあります。
- 明らかな外傷がない
- 歩ける
- 膝が大きく腫れていない
- 赤みや熱感、発熱がない
- 膝が完全に伸びる
- 日ごとに軽くなっている
- 日常生活に大きな支障がない
この場合でも、痛みが長引く、階段や歩行がつらい、運動を再開するとすぐ悪化する、腫れを繰り返す場合は、整形外科で原因を確認してください。
自宅でできる初期対応
痛みを強くする動作を一時的に減らす
痛みが強い時期は、長距離歩行、階段の往復、深いしゃがみ込み、ランニング、ジャンプなどを一時的に減らします。
完全安静を長く続ける必要はありませんが、痛みで歩き方が崩れるほどの負荷は避けてください。
腫れや熱感がある場合は冷やす
運動後や外傷後に膝が熱を持つ場合は、布で包んだ保冷剤で10〜15分程度冷やします。皮膚へ直接当て続けないでください。
急に赤く大きく腫れ、発熱がある場合は、冷却だけで様子を見ず受診してください。
歩きにくい場合は杖や手すりを使う
杖は、基本的に痛い膝と反対側の手で持ちます。階段では手すりを使い、痛みが強い時期は一段ずつ昇り降りします。
市販薬・湿布は使ってもよいですか?
市販の外用薬や鎮痛薬で一時的に痛みが軽くなることがあります。ただし、痛み止めで症状を隠して無理をすると、悪化に気づきにくくなることがあります。
持病、腎臓・肝臓・胃腸の病気、心血管疾患、抗凝固薬の使用、妊娠中などでは、使用できる薬が限られます。迷う場合は医師または薬剤師に相談してください。
受診前にまとめておくとよいこと
診察の前に、次の内容をメモしておくと、原因を絞りやすくなります。
- いつから痛いか
- きっかけはあったか
- 痛む場所はどこか
- 歩き始め、歩行中、階段、正座、夜間など、いつ痛むか
- 腫れ、熱感、赤みがあるか
- 膝が引っかかる、抜ける、音がするか
- どのくらい歩けるか
- 仕事、スポーツ、生活で困っていること
- これまで受けた治療と効果
- 服用中の薬、既往歴、手術歴
痛みの場所をスマートフォンの写真やメモで示す、症状が出る動作を安全な範囲で動画に残すことも参考になります。
整形外科では何をしますか?
問診
痛みの場所、発症時期、外傷、腫れ、歩行能力、スポーツや仕事、既往歴、服薬状況を確認します。
診察
歩き方、膝の腫れ、可動域、圧痛、半月板、靱帯、膝蓋骨、筋力、神経、血流などを確認します。
膝の痛みでも、股関節や腰から痛みが出ている場合があるため、必要に応じて股関節や腰も診察します。
X線検査
骨折、変形性膝関節症、骨の変化、関節のすき間、O脚・X脚などを確認します。慢性的な膝痛や外傷後の強い痛みでは、X線が最初の画像検査になることが多いです。
MRI検査
MRIは、半月板、靱帯、軟骨、骨挫傷、膝軟骨下不全骨折、腫瘍などを評価するのに役立ちます。
ただし、膝が痛い人全員に最初からMRIが必要なわけではありません。診察とX線で判断し、必要な場合に追加します。
超音波検査
関節液、ベーカー嚢胞、滑液包、腱、表面に近い組織を確認できます。ふくらはぎの腫れがある場合は、血栓の評価に静脈超音波を行うことがあります。
血液検査・関節液検査
感染、痛風・偽痛風、関節リウマチなどが疑われる場合は、血液検査や関節液検査を行います。
「湿布と痛み止めだけ」でよいですか?
軽い痛みで自然に改善している場合、湿布や短期間の鎮痛薬で症状を抑えながら経過を見ることはあります。
しかし、膝痛の治療で大切なのは、痛みを一時的に抑えることだけではありません。
- なぜ痛いのか
- どの動作で悪化するのか
- どの程度の活動なら安全か
- 筋力や可動域をどう回復するか
- 再発や進行をどう防ぐか
- 手術や注射が必要な状態か
湿布、痛み止め、注射は治療の一部です。運動療法、生活動作の工夫、体重管理、装具、リハビリ、必要に応じた手術などを、原因に合わせて組み合わせます。
年代別に注意したい膝の痛み
子ども・成長期
オスグッド病、Sinding-Larsen-Johansson病、離断性骨軟骨炎、円板状半月板、前十字靱帯損傷、膝蓋骨脱臼などを考えます。
片脚だけの痛み、腫れ、びっこ、膝が伸びない、運動後に腫れる場合は、成長痛と決めつけず受診してください。
スポーツをする人
靱帯損傷、半月板損傷、膝蓋大腿痛、膝蓋腱障害、腸脛靱帯症候群、骨ストレス障害などを考えます。
受傷時の音、大きな腫れ、膝崩れ、ロッキングがある場合は、早期の評価が必要です。
中高年
変形性膝関節症が多いですが、すべてを年齢や軟骨のすり減りで説明できるわけではありません。
突然の強い荷重時痛では、内側半月板後根断裂や膝軟骨下不全骨折を考える必要があります。
よくある質問
膝の痛みは何日続いたら病院へ行くべきですか?
荷重不能、強い腫れ、赤み・熱感、発熱、ロッキング、膝崩れがある場合は、日数に関係なく早めに受診してください。
危険な症状がなくても、1〜2週間以上改善しない、繰り返す、仕事や運動に支障がある場合は整形外科で相談してください。
レントゲンで異常がなければ大丈夫ですか?
X線は骨や関節のすき間を見るのに役立ちますが、半月板、靱帯、軟骨、骨内部の病変は分からないことがあります。症状が続く場合は、診察所見に応じてMRIなどを検討します。
痛み止めで楽になれば受診しなくてもよいですか?
軽くなって日常生活へ戻れている場合は様子を見られることがあります。ただし、薬を飲まないと歩けない、腫れや熱感がある、痛みが繰り返す場合は、原因を確認してください。
膝に水がたまったら抜いた方がよいですか?
すべての関節水腫で必ず抜くわけではありません。感染、痛風・偽痛風、血腫などを疑う場合や、張りが強い場合は関節液検査や穿刺を検討します。
MRIを希望すれば撮ってもらえますか?
MRIは有用ですが、全員に必要な検査ではありません。症状、診察、X線を踏まえて、MRIで治療方針が変わる可能性がある場合に検討します。
整骨院や整体へ行く前に病院へ行くべきですか?
外傷後の強い痛み、荷重不能、腫れ、ロッキング、発熱、しびれ、変形がある場合は、まず医療機関で骨折や靱帯損傷、感染などを確認してください。
救急外来へ行くほどではない気がします。どう判断すればよいですか?
歩けない、変形がある、発熱を伴う赤く熱い膝、足先の冷感・しびれ、胸痛や息苦しさを伴うふくらはぎの腫れは救急を考えます。
迷う場合は、地域の救急相談窓口や医療機関へ電話で相談してください。
手術が必要かどうかはいつ分かりますか?
診察、X線、必要に応じたMRIなどを行い、病名、重症度、生活への影響、年齢、活動性、希望を踏まえて判断します。膝の痛みがあるからすぐ手術というわけではありません。
まとめ
膝の痛みで病院へ行くか迷ったときは、痛みの強さだけでなく、外傷、腫れ、歩けるか、膝が伸びるか、発熱や赤み、足先のしびれや冷感を確認してください。
外傷後に歩けない、急に大きく腫れた、膝がロックしている、膝が何度も抜ける、赤く熱を持って発熱がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
軽い痛みで日常生活が可能な場合は、数日から1〜2週間ほど負荷を減らして経過を見ることがあります。ただし、改善しない、繰り返す、生活や運動に支障がある場合は整形外科で原因を確認しましょう。
湿布や痛み止めだけで終わらせず、痛みの原因、悪化する動作、必要な検査、リハビリ、再発予防まで含めて考えることが、膝を長く使うために大切です。
参考文献
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- Bunt CW, et al. Knee Pain in Adults and Adolescents: The Initial Evaluation. Am Fam Physician. 2018;98:576-585.
- National Institute for Health and Care Excellence. Knee pain – assessment. Clinical Knowledge Summaries.
- American College of Radiology. ACR Appropriateness Criteria: Acute Trauma to the Knee; Chronic Knee Pain.
- 日本整形外科学会. 膝関節の症状一覧.
- 日本整形外科学会. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023.
- National Institute for Health and Care Excellence. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management. NG226. 2022.
- Centers for Disease Control and Prevention. About Venous Thromboembolism. Updated 2025.
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。

