変形性膝関節症とは?症状・原因・治療と手術の目安を整形外科医が解説
変形性膝関節症は、膝の軟骨だけでなく、半月板、軟骨の下にある骨、滑膜、関節包、靱帯、筋肉など、膝関節全体に変化が起こる病気です。
主な症状は、立ち上がりや歩き始めの痛み、階段での痛み、膝の腫れ、曲げ伸ばしのしにくさなどです。進行すると、歩ける距離が短くなり、O脚やX脚が目立つこともあります。
「軟骨がすり減ったから、もう動かさない方がよい」と考える必要はありません。治療の中心は、症状や体力に合わせた運動、必要に応じた体重管理、生活上の工夫です。薬や注射は、運動や日常生活を続けるための補助として使います。
また、X線で変形が強くても痛みが軽い人がいる一方、X線変化が軽くても強く痛む人がいます。画像だけではなく、痛み、生活への影響、膝の動き、筋力などを合わせて治療方針を決めることが大切です。
「いつもの変形性膝関節症」と決めつけず、早めに受診した方がよい症状
- 膝が赤く大きく腫れ、熱を持っている
- 発熱、寒気、全身のだるさを伴う
- 明確なけががないのに、突然体重をかけられないほど痛くなった
- 転倒やスポーツ外傷の後から急激に腫れた
- 膝が引っかかり、伸ばせない状態が続く
- 夜間や安静時の強い痛みが急に始まり、改善しない
- ふくらはぎまで腫れ、胸痛や息苦しさを伴う
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、加齢だけで起こる単純な「軟骨のすり減り」ではありません。
膝関節では、軟骨、半月板、軟骨下骨、滑膜、関節包などが互いに影響しながら働いています。これらに長年の負荷、けが、脚の形、体重、筋力、炎症などが複合して加わり、関節全体のバランスが崩れることで発症・進行します。
関節軟骨そのものには痛みを感じる神経がほとんどありません。そのため、膝の痛みは軟骨だけから生じるのではなく、次のような組織が関係します。
- 滑膜の炎症と関節水腫
- 軟骨の下にある骨の変化
- 半月板の損傷や機能低下
- 関節包や靱帯への負担
- 膝周囲の筋力低下
- 長く続く痛みによる神経の過敏化
「使ったから減った」だけではありません。
適切な運動は膝をさらに悪くするものではなく、痛み、筋力、歩行能力、生活の質を改善するための基本治療です。痛みの強さに合わせて負荷を調整しながら続けます。
どこに変形が起こりますか?
膝の変形性関節症は、主に次の3か所に起こります。
| 主な部位 | 特徴 |
|---|---|
| 膝の内側 | 日本人でよくみられます。進行するとO脚が目立つことがあります。 |
| 膝の外側 | 外側半月板損傷やX脚傾向などが関係する場合があります。 |
| お皿と大腿骨の間 | 階段、立ち上がり、しゃがみ込みで前方が痛みやすくなります。 |
一つの場所だけに変化がある場合も、複数の場所に広がっている場合もあります。どの部分が傷んでいるかは、装具や手術方法を考えるうえでも重要です。
主な症状
初期にみられやすい症状
- 立ち上がりや歩き始めに痛む
- 長く座った後に膝がこわばる
- 階段、特に下りで痛む
- 正座や深いしゃがみ込みがつらい
- 歩き過ぎた後に腫れる
進行したときの症状
- 平地歩行でも痛む
- 歩ける距離が短くなる
- 膝の曲げ伸ばしが制限される
- 膝が伸びきらない
- O脚またはX脚が目立つ
- 安静時や夜間にも痛む
- 膝がぐらつく、力が抜ける
症状は常に同じではなく、痛みや腫れが一時的に強くなる「増悪期」と、比較的落ち着く時期を繰り返すことがあります。
なぜX線の変形と痛みが一致しないのですか?
変形性膝関節症の痛みは、一つの組織だけで決まるものではありません。
X線では、主に関節のすき間、骨棘、骨の硬化、脚の形などを確認します。しかし、滑膜炎、骨髄病変、筋力低下、痛みに対する神経の過敏化などは、通常のX線だけでは十分に分かりません。
そのため、次のような違いが生じます。
- X線上の変形が強くても、日常生活でほとんど痛まない
- X線変化が軽くても、腫れや強い痛みがある
- 同じ人でも、日によって痛みが大きく変わる
治療はX線のグレードだけで決めず、痛みによって何ができなくなっているか、膝の動き、腫れ、筋力、生活目標を重視します。
変形性膝関節症になりやすい要因
- 年齢
- 女性
- 体重増加や肥満
- O脚・X脚などのアライメント
- 半月板損傷や前十字靱帯損傷などの既往
- 膝関節周囲の骨折
- 半月板切除などの手術歴
- 筋力低下
- 仕事やスポーツによる繰り返しの高負荷
- 家族歴や体質
年齢や過去のけがは変えられませんが、運動習慣、体重、筋力、日常生活での負荷は調整できます。
整形外科ではどのように診断しますか?
問診と診察
痛みが始まった時期、痛む場所、腫れ、歩ける距離、階段や立ち上がりへの影響などを確認します。
診察では、次の点を評価します。
- O脚・X脚などの脚の形
- 歩き方
- 膝の腫れや熱感
- 膝の曲げ伸ばし
- 関節の圧痛
- 靱帯の安定性
- 太ももや股関節周囲の筋力
X線検査
X線では、関節のすき間が狭くなっているか、骨棘や骨の硬化があるか、O脚・X脚の程度などを確認します。
立った状態で撮影すると、体重がかかったときの関節のすき間を評価できます。
MRI検査
変形性膝関節症のすべての人にMRIが必要なわけではありません。
次のような場合に検討します。
- X線変化では説明できない強い痛みがある
- 内側半月板後根断裂や軟骨下不全骨折が疑われる
- 膝が引っかかり、伸びない
- 急な腫れや外傷がある
- 手術方法を考えるうえで追加情報が必要
治療中に症状が安定している場合、X線やMRIを定期的に繰り返す必要がないこともあります。
変形性膝関節症と間違えやすい病気
中高年の膝痛がすべて変形性膝関節症とは限りません。
- 半月板損傷
- 内側半月板後根断裂
- 膝軟骨下不全骨折
- 痛風・偽痛風
- 化膿性関節炎
- 関節リウマチ
- 腰や股関節からの関連痛
特に、明確なけががないのに突然強く痛み始めた場合や、赤く熱を持って急に腫れた場合は、通常の変形性膝関節症の経過とは異なる可能性があります。
治療の基本は3つです
変形性膝関節症の基本治療は、次の3つです。
- 病気と治療を正しく理解する
- 自分に合った運動を続ける
- 必要な人は体重を調整する
薬、注射、装具、手術は、症状や生活への影響に応じて追加します。
1.運動療法
運動療法は、変形性膝関節症の中心となる治療です。
筋力トレーニング、有酸素運動、柔軟性運動、バランス練習などから、体力や症状に合うものを選びます。
- 太もも前面の筋力を高める
- 股関節周囲の筋力を高める
- 膝の曲げ伸ばしを保つ
- 歩行や階段動作を改善する
- 体力低下を防ぐ
運動開始後に軽い痛みや筋肉痛が出ることはあります。重要なのは「全く痛くない運動だけを行う」ことではなく、運動後や翌日に強く悪化しない範囲へ調整することです。
びっこを引くほど痛む、腫れが増える、翌日まで強く悪化する場合は、回数、強度、動作の深さを下げます。
2.体重管理
体重過多や肥満がある場合、減量によって膝痛や身体機能が改善する可能性があります。
最初から大きな目標を設定する必要はありません。少しの減量でも有益であり、可能であれば体重の5~10%程度を段階的に目標とします。
膝痛が強く、歩行運動が難しい場合は、食事の調整に加え、エアロバイク、水中運動、座位での筋力運動などを選びます。
減量は「軟骨を元に戻す治療」ではありませんが、膝への負担と痛みを減らし、運動しやすくする効果が期待できます。
3.生活上の工夫
- 長時間同じ姿勢を避ける
- 深いしゃがみ込みや正座の時間を減らす
- 手すりを使う
- 痛みが強い日は歩行距離を調整する
- 完全に休み続けず、できる活動を維持する
- 運動量を急に増やさない
杖は、痛む膝と反対側の手で使用すると、膝への負担を減らせる場合があります。
薬による治療
薬は、痛みを軽減し、運動や日常生活を続けやすくするために使用します。薬だけで関節症そのものを元に戻すことはできません。
外用の消炎鎮痛薬
湿布や塗り薬などの外用NSAIDsは、膝の変形性関節症でよく使用されます。内服薬より全身への影響が少ない傾向がありますが、皮膚症状などには注意が必要です。
内服の消炎鎮痛薬
外用薬で不十分な場合に、内服NSAIDsを検討します。胃腸障害、腎機能、心血管疾患、ほかの薬との相互作用を考慮し、必要最小限の量と期間で使用します。
市販薬を含めて重複する場合があるため、使用中の薬を医師や薬剤師へ伝えてください。
アセトアミノフェン
NSAIDsを使用しにくい場合などに使われることがありますが、変形性膝関節症に対する効果は大きくない場合があります。肝臓の病気や他薬との重複にも注意します。
オピオイド
眠気、便秘、転倒、依存などのリスクがあり、変形性膝関節症に対して長期間使用する治療ではありません。
関節注射
ステロイド注射
膝が強く腫れて炎症が目立つ場合などに、短期間の痛み軽減が期待できます。ただし、効果は永続的ではなく、頻回に繰り返す治療ではありません。
糖尿病がある人では血糖が上がる場合があり、感染が疑われる膝には行いません。
ヒアルロン酸注射
日本では広く行われていますが、効果には個人差があり、国際的なガイドラインでは推奨度が分かれています。
軟骨を再生させたり、変形を元へ戻したりする注射ではありません。効果と通院回数、費用、ほかの治療との組み合わせを相談します。
PRPなどの治療
PRPは、一部の患者さんで痛みや機能の改善が得られる可能性がありますが、作製方法や投与方法が統一されておらず、研究結果にもばらつきがあります。
「軟骨が完全に再生する」「人工関節を確実に避けられる」と断定できる治療ではありません。
装具・サポーター・杖
サポーターや装具は、膝の不安感を減らしたり、特定の部分にかかる負担を調整したりするために使います。
すべての人へ一律に必要なものではなく、O脚やX脚、関節の不安定性、痛む場所、装着のしやすさなどに応じて選びます。
杖は、歩行時痛が強い人の移動を助け、活動量を維持するために役立つ場合があります。
冷却ラジオ波焼灼術
冷却ラジオ波焼灼術は、膝周囲の痛みを伝える神経へ処置を行い、慢性痛を軽減する治療です。
保存療法で十分な効果が得られず、手術を希望しない、または手術が難しい一部の患者さんで検討します。
この治療は、変形や軟骨を元へ戻すものではありません。治療前に診断用の神経ブロックを行い、効果を確認する場合があります。
手術が検討されるのはどのような場合ですか?
次のような場合に、手術について相談します。
- 痛みや動きの制限によって、生活の質が大きく低下している
- 歩行、仕事、買い物、外出などが強く制限されている
- 適切な運動療法、薬、注射などで十分な改善が得られない
- O脚やX脚が進行している
- 膝の曲げ伸ばしが大きく制限されている
- 痛みや不安定性によって転倒リスクが高い
手術は、X線写真の見た目だけで決めるものではありません。症状、生活への影響、年齢、活動性、関節症の広がり、脚の形、希望を踏まえて選択します。
脛骨近位骨切り術
主に膝内側の変形性関節症とO脚があり、関節を温存しながら活動性を維持したい人で検討します。
すねの骨の角度を変え、傷んだ内側から比較的保たれた外側へ荷重を移します。
単顆型人工膝関節置換術
変形が内側または外側など、一つの区画に限局し、靱帯機能などの条件を満たす場合に検討します。
人工膝関節全置換術
複数の区画に変形が広がり、痛みや機能障害が強い場合に検討します。
傷んだ関節面を人工関節へ置き換え、痛みと機能の改善を目指します。
関節鏡で掃除すれば治りますか?
変形性膝関節症だけを理由に、関節内を洗浄したり軟骨を削ったりする関節鏡手術は、通常は推奨されません。
ただし、遊離体、膝が伸びない半月板断裂など、変形性膝関節症とは別の機械的な問題がある場合は、関節鏡治療を検討することがあります。
よくある質問
軟骨は元に戻りますか?
進行した変形性膝関節症の軟骨を、一般的な運動、薬、注射で元どおりに戻すことは困難です。
ただし、軟骨が元に戻らなくても、筋力、動作、体重、炎症、痛みへの対処を改善することで、症状や生活機能を良くすることは可能です。
歩くとすり減るので、歩かない方がよいですか?
完全に歩かなくなると、筋力や体力が低下し、さらに歩きにくくなることがあります。
痛みや腫れが翌日まで強く残らない距離から始め、必要に応じて自転車や水中運動を組み合わせます。強い増悪期には一時的に負荷を下げます。
運動すると痛みます。続けても大丈夫ですか?
軽い痛みや筋肉痛が出ても、運動後に落ち着き、翌日に大きく悪化しない場合は、負荷を調整しながら続けられることがあります。
びっこを引く、腫れが増える、夜間痛が強くなる場合は、運動方法を見直してください。
X線で重症と言われました。すぐ手術ですか?
X線で変形が強くても、痛みが軽く生活に支障が少なければ、直ちに手術を行うとは限りません。
反対に、画像変化が中等度でも、痛みや機能低下が強く、保存療法で改善しない場合は手術を相談することがあります。
膝に水がたまったら、必ず抜くべきですか?
必ずではありません。感染や痛風・偽痛風などの原因を調べる必要がある場合や、強い張りによって痛みや可動域が妨げられている場合に穿刺を検討します。
ヒアルロン酸注射は何回受ければ治りますか?
回数だけで治療効果を保証することはできません。効果が乏しいまま漫然と続けるのではなく、運動療法や体重管理を含めて定期的に治療方針を見直します。
サプリメントで軟骨は再生しますか?
グルコサミンなどのサプリメントで、失われた軟骨が再生することを示す確かな根拠はありません。薬との相互作用や費用も含めて検討してください。
いつ手術を考えるべきですか?
痛み、こわばり、変形、歩行障害が生活の質へ大きく影響し、適切な保存療法で十分に改善しない場合が目安です。
「限界まで我慢する」「年齢だけで待つ」のではなく、現在困っていること、手術で取り戻したい生活、手術の利点とリスクを整形外科医と相談します。
まとめ
変形性膝関節症は、軟骨だけではなく、半月板、骨、滑膜、関節包、筋肉などを含む膝関節全体の病気です。
治療の中心は、正しい情報、自分に合った運動、必要に応じた体重管理です。薬、注射、装具は、運動や生活を続けるための補助として使います。
X線の変形と痛みは必ずしも一致しません。画像だけでなく、生活への影響と治療目標を基準に治療を選びます。
保存療法で十分に改善せず、生活の質が大きく低下している場合は、骨切り術、単顆型人工膝関節、人工膝関節全置換術などを検討します。
参考文献
- National Institute for Health and Care Excellence. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management. NICE guideline NG226. 2022.
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- 日本整形外科学会. 変形性関節症―症状・病気をしらべる.
- Hill BG, et al. The Discordance Between Pain and Imaging in Knee Osteoarthritis. J Am Acad Orthop Surg. 2025.
- Sofat N, et al. Bone marrow lesions in osteoarthritis: characterising genetic influences and contribution to pain. 2024.
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。

