Sinding-Larsen-Johansson 症候群
Sinding-Larsen-Johansson症候群は、成長期の子どもに起こる膝前面のスポーツ障害です。日本語では「シンディング・ラーセン・ヨハンソン病」または「Sinding-Larsen-Johansson病」と表記されることがあります。略して SLJ症候群 と呼ばれることもあります。
痛みの場所は、膝のお皿である膝蓋骨の下端です。走る、跳ぶ、しゃがむ、階段を使う、キックするなどの動作で痛みが出やすくなります。
オスグッド・シュラッター病とよく似ていますが、痛む場所が違います。オスグッド病は「お皿よりさらに下の脛骨粗面」が痛むのに対し、Sinding-Larsen-Johansson症候群は「お皿の下端」が痛みます。
多くは保存療法で改善します。大切なのは、痛みを我慢して練習を続けることではなく、成長期の膝にかかる負担を調整しながら、柔軟性、筋力、動作を整えてスポーツへ戻ることです。
Sinding-Larsen-Johansson症候群と思っても、早めに受診した方がよい症状
- 転倒・ジャンプ着地・接触後から急に強く痛む
- 体重をかけられない、歩けない
- 膝が大きく腫れた
- 膝が引っかかり、完全に伸ばせない
- 膝がぐらつく、抜ける
- お皿の下端を押すと強烈に痛い
- 安静時や夜間にも強く痛む
- 発熱、赤み、強い熱感がある
- 痛みが数週間続き、運動量を減らしても改善しない
- 膝のお皿が外れた、または外れそうな感じがある
Sinding-Larsen-Johansson症候群とは
Sinding-Larsen-Johansson症候群は、膝蓋骨の下端に痛みが出る成長期のスポーツ障害です。
膝蓋骨の下には、膝蓋腱が付着しています。膝蓋腱は、太ももの前の筋肉である大腿四頭筋の力を、膝のお皿を通してすねの骨へ伝える役割があります。
成長期には、膝蓋骨の下端の骨や腱の付着部がまだ成熟しきっていません。この部分に、走る・跳ぶ・蹴る・しゃがむ動作の繰り返しで牽引ストレスが加わると、痛みや炎症が起こります。
つまり、Sinding-Larsen-Johansson症候群は「膝のお皿の下端が引っ張られて痛む成長期スポーツ障害」と考えると分かりやすいです。
どこが痛くなりますか?
痛みの場所は、膝蓋骨の下端です。膝のお皿の一番下の部分を押すと痛みが出ることが多いです。
オスグッド病のように、お皿よりさらに下のすねの骨の出っ張りが痛むのではありません。痛みの場所を確認することが、見分けるうえで重要です。
| 病気 | 痛む場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| Sinding-Larsen-Johansson症候群 | 膝蓋骨の下端 | お皿の下端を押すと痛い |
| オスグッド・シュラッター病 | 脛骨粗面 | お皿よりさらに下の骨の出っ張りが痛い |
| ジャンパー膝 | 膝蓋腱 | 腱そのものの痛みとして出ることが多い |
主な症状
Sinding-Larsen-Johansson症候群では、次のような症状が出ます。
- 膝のお皿の下端が痛い
- お皿の下を押すと痛い
- 走ると痛い
- ジャンプや着地で痛い
- キックで痛い
- 階段や坂道で痛い
- しゃがむと痛い
- 正座や膝立ちで痛い
- 練習後や翌日に痛みが残る
初期は運動中や運動後だけ痛むことが多いです。進行すると、階段、歩行、膝立ちなど日常生活でも痛みが出ることがあります。
なぜ成長期に起こりやすいのですか?
成長期は、骨が急に伸びる時期です。一方で、筋肉や腱の柔軟性が骨の成長に追いつきにくくなることがあります。
太ももの前の筋肉である大腿四頭筋が硬い、またはスポーツで繰り返し強く使われると、膝蓋腱を介して膝蓋骨の下端が引っ張られます。
膝蓋骨の下端は成長期に負担を受けやすい場所であり、繰り返しの牽引ストレスで痛みが起こります。
発症しやすい時期
- 小学校高学年から中学生
- 10〜15歳頃
- 急に身長が伸びる時期
- 部活動やクラブチームで練習量が増える時期
- ジャンプやダッシュが増えた時期
男の子に多いとされますが、女の子でもスポーツ活動量が多い場合には起こります。
起こりやすいスポーツ
Sinding-Larsen-Johansson症候群は、膝を強く伸ばす動作、ジャンプ、ダッシュ、キックが多いスポーツで起こりやすくなります。
- サッカー
- バスケットボール
- バレーボール
- 陸上競技
- 体操
- 野球
- テニス
- ハンドボール
- ダンス
- ラグビー
スポーツそのものが悪いわけではありません。急に練習量が増えた、休養が足りない、痛みを我慢して続けている、柔軟性や筋力のバランスが崩れていることが問題になります。
オスグッド病との違い
Sinding-Larsen-Johansson症候群とオスグッド・シュラッター病は、どちらも成長期に起こる膝前面の牽引性骨端症です。
共通点は、走る、跳ぶ、蹴る動作で痛くなることです。違いは痛む場所です。
見分けるポイント
- お皿の下端が痛い:Sinding-Larsen-Johansson症候群
- お皿よりさらに下の骨の出っ張りが痛い:オスグッド病
- 膝蓋腱の中央付近が痛い:ジャンパー膝
痛む場所が近いため、自己判断が難しいことがあります。痛みが長引く場合や、歩行に支障がある場合は整形外科で確認してください。
ジャンパー膝との違い
ジャンパー膝は、膝蓋腱障害とも呼ばれ、膝蓋腱そのものに痛みが出る状態です。
Sinding-Larsen-Johansson症候群は成長期の膝蓋骨下端の付着部に起こる障害であり、成長期の骨の未成熟さが関係します。
一方、ジャンパー膝は成人アスリートにも起こります。ジャンプ競技やランニング、ダッシュを繰り返す人に多く、腱の過負荷が中心です。
ただし、症状が重なることもあり、成長期では両者の区別が難しい場合があります。
他に考えるべき病気
膝の前側の痛みには、Sinding-Larsen-Johansson症候群以外にも多くの原因があります。
膝蓋骨脱臼
膝のお皿が外れた、外れそうな感じがある、受傷後に膝が大きく腫れた場合は、膝蓋骨脱臼を考えます。
膝蓋骨下極の裂離骨折
ジャンプや着地で急に強い痛みが出て、歩けない、膝を伸ばせない場合は、裂離骨折を確認する必要があります。
膝蓋骨骨折・打撲
転倒して膝を直接ぶつけた後に強く痛む場合は、打撲だけでなく骨折を確認することがあります。
感染や腫瘍性病変
発熱、赤み、強い熱感、夜間痛、安静時痛がある場合は、スポーツ障害以外の病気も考えます。
診断方法
問診
痛みが出た時期、スポーツ種目、練習量の変化、身長の伸び、痛む動作、休むと改善するか、翌日に痛みが残るかを確認します。
診察
膝蓋骨の下端を押して痛みがあるか、腫れや熱感があるか、膝の曲げ伸ばしで痛みが出るかを確認します。
大腿四頭筋の硬さ、ハムストリングス、股関節や足部の動き、片脚スクワット、ジャンプ着地のフォームも確認します。
X線検査
X線では、膝蓋骨下端の骨片、石灰化、骨の状態、骨折の有無を確認します。
ただし、初期にはX線で明らかな変化がないこともあります。症状と診察所見を合わせて判断します。
超音波・MRI
超音波では、膝蓋腱付着部や周囲の炎症を確認できることがあります。
MRIは、診断がはっきりしない場合、痛みが強い場合、骨折、膝蓋骨脱臼、感染、腫瘍などを除外したい場合に検討します。
治療の基本
Sinding-Larsen-Johansson症候群の多くは、手術ではなく保存療法で治療します。
治療の目的は、痛みを抑え、膝蓋骨下端にかかる負担を減らし、柔軟性、筋力、動作を整えてスポーツへ安全に戻ることです。
治療の柱
- 痛みの程度に応じた運動量調整
- 冷却
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- 膝蓋腱バンドやサポーター
- スポーツ動作の見直し
- 段階的なスポーツ復帰
完全に運動禁止にするかどうかは、痛みの程度によって変わります。大切なのは、痛みを我慢して同じ負荷を続けないことです。
スポーツは休むべきですか?
痛みが軽く、運動中に悪化せず、翌日に痛みが残らない場合は、負荷を調整しながら続けられることがあります。
一方で、次のような場合は運動量を大きく減らす、または一時的に休むことを検討します。
- 走るとすぐ痛む
- ジャンプやキックで強く痛む
- 練習後に歩くのも痛い
- 翌日まで痛みが残る
- 階段や日常生活でも痛い
- 押した痛みが強くなっている
- 膝蓋骨の下端が腫れて熱っぽい
「試合だけ出る」「痛み止めでごまかして出る」という対応はおすすめしません。痛みが長引く原因になることがあります。
冷却と痛みの管理
練習後や痛みが強い時期には、膝蓋骨下端周囲を10〜20分程度冷やします。保冷剤はタオルで包み、皮膚に直接当て続けないようにします。
痛みが強い場合は、外用薬や内服薬を使うことがあります。NSAIDsを使う場合は、胃腸、腎臓、喘息、アレルギー、ほかの薬との飲み合わせに注意してください。
痛み止めで痛みが軽くなっても、負担が減ったわけではありません。痛み止めを使って無理に練習することは避けてください。
ストレッチ
ストレッチでは、太ももの前の大腿四頭筋を中心に、太もも裏、ふくらはぎ、股関節周囲も整えます。
大腿四頭筋のストレッチ
- 横向きまたは立った姿勢になります。
- 痛い側の足首を持ち、膝をゆっくり曲げます。
- 太ももの前が伸びるところで20〜30秒保ちます。
- 膝のお皿の下に鋭い痛みが出る場合は中止します。
腰を反らしすぎず、骨盤を安定させて行います。
ハムストリングスのストレッチ
- 椅子に浅く座ります。
- 片脚を前に伸ばします。
- 背中を丸めすぎず、股関節から体を前へ倒します。
- 太もも裏が伸びるところで20〜30秒保ちます。
ふくらはぎのストレッチ
- 壁に手をつきます。
- 痛い側の脚を後ろに引きます。
- かかとを床につけたまま、ふくらはぎを伸ばします。
- 20〜30秒保ちます。
ストレッチは、痛いほど強く行う必要はありません。気持ちよく伸びる範囲で続けます。
筋力トレーニング
痛みが落ち着いてきたら、膝だけでなく、股関節と体幹を含めて筋力を整えます。
太ももに力を入れる運動
- 座った姿勢または仰向けになります。
- 膝の下にタオルを入れます。
- 膝を伸ばすように太ももに力を入れます。
- 5秒保って力を抜きます。
股関節外転筋の運動
- 横向きに寝ます。
- 上側の脚をゆっくり持ち上げます。
- 骨盤が後ろへ倒れないようにします。
- ゆっくり下ろします。
浅いスクワット
痛みが落ち着いてから行います。
- 膝とつま先の向きをそろえる
- 膝が内側へ入らないようにする
- 深く曲げすぎない
- 膝蓋骨下端に痛みが出る場合は中止する
最初からジャンプや深いスクワットを行う必要はありません。痛みの反応を見ながら段階的に進めます。
サポーター・膝蓋腱バンド
膝蓋腱バンドやサポーターを使うと、運動中の痛みが軽くなることがあります。
これは、膝蓋腱を介して膝蓋骨下端にかかる牽引ストレスを調整する目的で使います。
ただし、サポーターは補助です。サポーターをつければ痛みを我慢して運動してよい、という意味ではありません。
注射や手術は必要ですか?
通常、Sinding-Larsen-Johansson症候群で注射や手術が必要になることは多くありません。
成長期の膝蓋骨下端に対するステロイド注射などは、一般的な治療としては慎重に考えます。痛みを抑えるより、負荷を調整して治癒を待つことが基本です。
手術は非常にまれです。成長が終わった後も骨片や石灰化が残り、長期間強い痛みが続く場合などに検討されることがあります。
どのくらいで治りますか?
回復には個人差があります。
軽症で早めに運動量を調整できた場合は、数週間から数か月で改善することがあります。一方で、痛みを我慢して練習を続けた場合や、ジャンプ・ダッシュ・キックの負荷が強い場合は長引くことがあります。
多くは成長とともに改善しますが、数か月以上痛みが続くこともあります。
回復を早めるために大切なこと
- 痛みを我慢して練習を続けない
- 痛みが出る動作を把握する
- 練習量を一時的に調整する
- ストレッチと筋力運動を続ける
- 復帰を段階的に行う
- 保護者・指導者と情報を共有する
スポーツ復帰の目安
復帰は、日数だけで決めるのではなく、痛みと動作を見て判断します。
復帰前に確認したいこと
- 押した痛みがかなり軽くなっている
- 日常生活や階段で痛みが少ない
- 軽いジョギングで痛みが出ない
- ジャンプやキックで痛みが強くならない
- 翌日に痛みが残らない
- 片脚スクワットで膝が内側へ入らない
- 練習後に腫れや熱感が増えない
最初は、練習の一部参加から始めます。ダッシュ、ジャンプ、キック、試合形式は後から戻します。
復帰の段階
- 痛みのない日常生活
- 軽いジョギング
- 短いダッシュ
- 低いジャンプ
- キックや切り返し
- 部分的な練習参加
- 通常練習
- 試合復帰
復帰後も、痛みが再燃した場合は負荷を戻します。
保護者・指導者が知っておきたいこと
Sinding-Larsen-Johansson症候群では、本人が「休みたくない」と言って無理をすることがあります。
保護者や指導者は、練習中だけでなく、練習後と翌日の痛みを確認してください。
注意したいサイン
- 練習後に足を引きずる
- 階段で痛がる
- 膝立ちを嫌がる
- 痛み止めを使って出場しようとする
- 翌日も痛みが残る
- お皿の下端が腫れて熱っぽい
成長期のスポーツでは、短期的な試合出場だけでなく、将来の競技継続を考えることが大切です。
予防のためにできること
Sinding-Larsen-Johansson症候群を完全に防ぐことは難しいですが、発症や再発のリスクを下げるためにできることがあります。
- 急に練習量を増やさない
- 休養日を作る
- 成長期は痛みを我慢しない
- 太ももの前後、ふくらはぎの柔軟性を保つ
- 股関節周囲筋を鍛える
- 片脚動作で膝が内側へ入らないようにする
- ジャンプ着地のフォームを整える
- 痛みが出たら早めに練習量を調整する
- 保護者・指導者が痛みのサインを共有する
成長期は、身長の伸び、筋肉の硬さ、練習量が短期間で変化します。定期的に体の状態を確認することが大切です。
よくある質問
Sinding-Larsen-Johansson症候群は自然に治りますか?
多くは成長とともに改善します。ただし、痛みを我慢して運動を続けると長引くことがあります。痛みに応じた運動量調整が重要です。
オスグッド病と同じですか?
似ていますが、痛む場所が違います。Sinding-Larsen-Johansson症候群は膝蓋骨の下端、オスグッド病はお皿よりさらに下の脛骨粗面が痛みます。
スポーツは完全に休まないといけませんか?
必ず完全休止というわけではありません。痛みの程度に応じて、ダッシュ、ジャンプ、キック、練習量を調整します。日常生活でも痛い場合や翌日まで痛みが残る場合は休む必要があります。
痛みがあっても試合に出てよいですか?
痛みが強い、走ると悪化する、翌日に痛みが残る場合は控えた方がよいです。痛み止めでごまかして出場することはおすすめしません。
サポーターは使った方がよいですか?
膝蓋腱バンドやサポーターで痛みが軽くなることがあります。ただし、サポーターは補助であり、練習量調整やリハビリの代わりにはなりません。
注射で早く治りますか?
通常、注射を行うことは多くありません。成長期の骨への負担を考え、負荷調整、ストレッチ、筋力トレーニングを中心に治療します。
手術になることはありますか?
非常にまれです。成長が終わった後も骨片や石灰化が残り、長期間強い痛みが続く場合などに検討されることがあります。
大人になっても痛むことはありますか?
まれに、成長期にできた骨片や石灰化が残り、膝立ちやスポーツで痛むことがあります。ただし、多くは成長終了とともに軽くなります。
ジャンパー膝とどう違いますか?
Sinding-Larsen-Johansson症候群は成長期の膝蓋骨下端の付着部障害です。ジャンパー膝は膝蓋腱そのものの障害で、成人アスリートにも起こります。
まとめ
Sinding-Larsen-Johansson症候群は、成長期の子どもに起こる膝前面のスポーツ障害です。膝のお皿の下端に痛みが出て、走る、跳ぶ、蹴る、しゃがむ動作で悪化します。
オスグッド病と似ていますが、痛む場所が違います。Sinding-Larsen-Johansson症候群では膝蓋骨の下端が痛み、オスグッド病ではお皿よりさらに下の脛骨粗面が痛みます。
多くは保存療法で改善します。治療では、痛みの程度に応じた運動量調整、冷却、ストレッチ、筋力トレーニング、段階的なスポーツ復帰が重要です。
痛みを我慢して練習を続けると、症状が長引くことがあります。保護者や指導者も、練習後や翌日の痛みを確認し、無理な出場を避けることが大切です。
歩けない、急に強く痛む、膝が大きく腫れる、夜間痛が強い、数週間たっても改善しない場合は、整形外科で評価を受けましょう。
参考文献
- Wilczyński B, et al. Sinding-Larsen-Johansson disease. Clinical features, imaging findings, conservative treatments and research perspectives. 2024.
- Valentino M, et al. Sinding-Larsen-Johansson syndrome: A case report. J Ultrasound. 2012.
- Malherbe K, et al. Traction apophysitis of the knee: A case report. 2018.
- Cleveland Clinic. Sinding-Larsen-Johansson Syndrome. 2022.
- Cambridge University Hospitals NHS Foundation Trust. Sinding-Larsen-Johansson syndrome. Patient information.
- Orthobullets. Sinding-Larsen-Johansson Syndrome. 2021.
- Corbi F, et al. Osgood-Schlatter Disease: Appearance, Diagnosis and Treatment: A Narrative Review. Healthcare. 2022.
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Overuse Injuries in Children. OrthoInfo.
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。成長期の膝痛が続く場合、歩けない、腫れが強い、急に痛くなった場合は整形外科でご相談ください。

