膝が腫れたり、「水がたまった」と言われたりするのは、膝の中や周囲で炎症・出血・けがなどが起きているサインです。

よくある原因には、変形性膝関節症、半月板損傷、前十字靱帯損傷、痛風・偽痛風などがあります。一方で、赤く熱を持つ腫れや発熱を伴う場合は、関節の感染症を急いで除外しなければなりません。

膝にたまった水は、すべての人が必ず抜くわけではありません。原因を調べる必要がある場合や、強く張って痛みや曲げ伸ばしを妨げている場合に、関節穿刺で水を抜きます。

早めに医療機関を受診した方がよい症状

  • 膝が赤く腫れ、熱を持っている
  • 発熱、寒気、全身のだるさを伴う
  • 突然強く腫れ、体重をかけられない
  • 転倒やスポーツ外傷の直後から急激に腫れた
  • 膝が引っかかって伸びない、または曲げられない
  • 膝の変形がある
  • 最近、膝の手術・関節注射・けがを受けた
  • 人工膝関節が入っている膝が急に腫れた
  • 片脚のふくらはぎまで腫れ、胸痛や息苦しさを伴う

「膝に水がたまる」とはどういう状態ですか?

膝関節の中には、正常でも少量の関節液があります。関節液は、関節の動きを滑らかにし、関節軟骨の環境を保つ役割をしています。

けがや病気によって滑膜という組織に炎症が起こると、関節液が増えます。この状態が、一般に「膝に水がたまった」と呼ばれる関節水腫です。

ただし、見た目の腫れがすべて関節水腫とは限りません。

  • 関節の中に液体が増える:関節水腫、血がたまる関節血腫
  • 膝の前だけ腫れる:膝蓋前滑液包炎など
  • 膝の裏がふくらむ:ベーカー嚢胞など
  • 脚全体が腫れる:深部静脈血栓症など

どこが腫れているかによって、考える病気や必要な検査が変わります。

膝が腫れる主な原因

1.変形性膝関節症

中高年以降で最もよくみられる原因の一つです。関節軟骨や半月板の変化に加えて滑膜炎が起こると、膝に水がたまることがあります。

  • 歩き始めや立ち上がりで痛む
  • 長く歩くと痛みや腫れが増える
  • 膝が伸びにくい、曲がりにくい
  • 腫れが増えたり減ったりする
  • O脚やX脚が目立つことがある

変形性膝関節症による水腫でも、感染症や結晶誘発性関節炎が同時に起こることがあります。いつもと違う急激な腫れや熱感がある場合は、単なる関節症と決めつけないことが大切です。

変形性膝関節症の痛みについて詳しく見る

2.半月板損傷

半月板を傷めると、膝の中に炎症が起こり、数時間から数日かけて腫れることがあります。

  • 膝をひねった後から痛む
  • 関節の内側または外側のすき間が痛む
  • しゃがみ込みや方向転換で痛む
  • 引っかかりやクリックを感じる
  • 膝が伸びきらない

半月板損傷があっても、すべて手術が必要になるわけではありません。ただし、断裂した半月板がずれて膝が動かないロッキングを起こしている場合は、早めの専門的評価が必要です。

半月板損傷について詳しく見る

3.前十字靱帯損傷・膝蓋骨脱臼・関節内骨折

スポーツ中の方向転換、着地、衝突、転倒などの直後から数時間以内に急激に大きく腫れた場合は、関節内に血がたまる関節血腫を考えます。

代表的な原因は次のとおりです。

  • 前十字靱帯損傷
  • 膝蓋骨脱臼
  • 関節内骨折
  • 骨軟骨損傷
  • 重い半月板損傷

けがの直後に腫れた膝は、痛みが少し軽くなっても、靱帯や骨軟骨の損傷が隠れていることがあります。

前十字靱帯損傷について詳しく見る

4.痛風・偽痛風

尿酸結晶による痛風や、ピロリン酸カルシウム結晶による偽痛風では、膝が突然強く腫れ、熱を持つことがあります。

  • 数時間から1日程度で急に痛くなる
  • 赤みや熱感が強い
  • 触れるだけでも強く痛む
  • 明確なけががない
  • 高齢者では膝の偽痛風が比較的多い

痛風や偽痛風は感染性関節炎と症状がよく似ています。結晶が確認されても感染が完全に否定できるとは限らないため、初めての強い腫れや発熱を伴う場合は医療機関での評価が必要です。

膝の痛風について詳しく見る

5.化膿性関節炎

化膿性関節炎は、細菌などが関節内に入り込む感染症です。診断や治療が遅れると、関節軟骨の破壊や全身の重い感染症につながる可能性があります。

  • 膝が赤く、熱を持ち、大きく腫れる
  • 安静にしていても強く痛む
  • 膝を少し動かすだけでも痛い
  • 発熱、寒気、全身倦怠感がある

高齢者、糖尿病、免疫を抑える薬の使用、最近の手術や関節注射、皮膚の傷、人工関節などがある場合は、特に注意が必要です。

発熱がない化膿性関節炎もあるため、「熱がないから感染ではない」とは判断できません。疑われる場合は、できるだけ早く関節液を採取し、細菌検査などを行います。

6.関節リウマチなどの炎症性疾患

関節リウマチやそのほかの炎症性関節疾患でも、膝に水がたまることがあります。

  • 両膝や複数の関節が腫れる
  • 手指や手首にも症状がある
  • 朝のこわばりが長く続く
  • 腫れを繰り返す

長く続く、複数の関節が腫れる場合は、整形外科またはリウマチ科で評価します。

7.膝蓋前滑液包炎

膝のお皿の表面だけが袋状に腫れている場合は、関節内の水ではなく、膝蓋前滑液包炎の可能性があります。

  • 床に膝をつく仕事や動作が多い
  • お皿の表面を打った
  • 皮膚のすぐ下が丸く腫れる
  • 膝の曲げ伸ばしは比較的保たれることがある

赤み、熱感、傷、発熱を伴う場合は、滑液包への感染を考えます。

膝蓋前滑液包炎について詳しく見る

8.ベーカー嚢胞

膝裏がふくらんでいる場合は、ベーカー嚢胞が考えられます。多くは変形性膝関節症や半月板損傷などに伴って、膝裏へ関節液がたまったものです。

嚢胞が破裂すると、ふくらはぎまで急に痛みや腫れが広がり、深部静脈血栓症と似た症状になることがあります。

ベーカー嚢胞について詳しく見る

腫れ方は原因を考える手がかりになりますか?

腫れ方・きっかけ 考えられる主な原因
外傷後、数時間以内に急激に腫れた 前十字靱帯損傷、膝蓋骨脱臼、関節内骨折、骨軟骨損傷など
ひねった後、徐々に腫れた 半月板損傷、軟骨損傷、滑膜炎など
外傷なく、急に赤く熱を持って腫れた 化膿性関節炎、痛風、偽痛風
歩行量により増減を繰り返す 変形性膝関節症、半月板損傷など
お皿の表面だけが腫れる 膝蓋前滑液包炎
膝裏にふくらみがある ベーカー嚢胞

腫れるまでの時間は重要な手がかりですが、例外もあります。腫れ方だけで自己診断せず、外傷歴や発熱、痛む場所、膝の安定性などを合わせて評価します。

膝の水は抜いた方がよいですか?

すべての膝の水を必ず抜くわけではありません。

関節穿刺には、主に次の2つの目的があります。

1.原因を調べるため

次のような場合は、関節液を採取して検査することが重要です。

  • 化膿性関節炎が疑われる
  • 痛風・偽痛風が疑われる
  • 原因不明の急な関節水腫がある
  • 外傷後の血腫が疑われる

採取した関節液は、白血球数、細菌培養、結晶、血液の混入などを調べます。見た目が透明、黄色、濁っている、血が混じっているといった情報は参考になりますが、色だけで原因を確定することはできません。

2.張りや痛みを軽くするため

大量に水がたまり、膝が強く張る、痛みが強い、曲げ伸ばしが難しい場合は、液体を抜くことで圧迫感や痛みが軽くなることがあります。

一方で、水が少量で症状が軽く、原因が明らかな場合は、必ずしも穿刺しないことがあります。水を抜くかどうかは、原因、量、痛み、感染の可能性、出血しやすさなどを踏まえて医師が判断します。

「水を抜くと癖になる」は正確ではありません。
水を抜いたために体が水を作るようになるわけではありません。再びたまるのは、関節症、半月板損傷、結晶性関節炎など、原因となる炎症や病気が続いているためです。

関節穿刺にはリスクがありますか?

関節穿刺は一般的に行われる処置ですが、次のようなリスクがあります。

  • 穿刺時の痛み
  • 出血や皮下出血
  • まれな感染
  • 周囲の神経・血管・腱などの損傷
  • 十分に液体を抜けないこと

抗凝固薬を使用している場合、出血しやすい病気がある場合、皮膚に感染や傷がある場合などは、事前に医師へ伝えてください。

関節液を採取した後に注射を行うかどうかは、感染の可能性、原因疾患、患者さんの状態によって異なります。

自宅でできる対処

赤み・熱感・発熱などの危険な症状がなく、軽い使い過ぎやけがが考えられる場合は、次のように対処します。

  • 走る、跳ぶ、深くしゃがむ動作を一時的に控える
  • 長時間の歩行を減らす
  • 腫れや熱感がある場合は、布で包んだ保冷剤で10~15分程度冷やす
  • 脚を心臓より少し高くして休む
  • きつすぎないサポーターや弾性包帯で軽く圧迫する

しびれ、足先の冷感、皮膚の色の変化が出た場合は、圧迫を外して受診してください。

急に赤く熱を持って腫れた場合、感染や痛風・偽痛風が隠れている可能性があるため、強いマッサージ、長時間の入浴、無理な運動は避けてください。

整形外科ではどのような検査をしますか?

診察

腫れが始まった時期、外傷の有無、発熱、痛む場所、膝の動き、ぐらつき、引っかかり、皮膚の状態などを確認します。

X線検査

慢性的な膝痛や腫れでは、変形性膝関節症、骨折、骨軟骨病変などを確認するために、X線を最初に行うことが一般的です。

転倒やひねり外傷の後に局所的な骨の痛み、関節水腫、荷重不能がある場合も、まずX線を行います。

超音波検査

関節液の量、滑膜炎、ベーカー嚢胞、滑液包炎などの確認に役立ちます。関節穿刺を安全かつ正確に行うために、超音波で位置を確認することもあります。

MRI検査

X線で明らかな異常がなくても腫れが続く場合や、半月板、靱帯、軟骨、骨内部の病変が疑われる場合に検討します。

関節液・血液検査

感染、痛風、偽痛風、炎症性疾患などが疑われる場合は、関節液検査や血液検査を行います。

膝の診察と検査について詳しく見る

膝の腫れはどのように治療しますか?

治療は、腫れを減らすことだけでなく、原因となる病気を治療することが重要です。

  • 変形性膝関節症:運動療法、体重管理、外用薬・内服薬、注射、装具、必要に応じて手術
  • 半月板損傷:活動調整、運動療法、薬、損傷形態に応じた手術
  • 前十字靱帯損傷など:装具、リハビリテーション、活動性や不安定性に応じた手術
  • 痛風・偽痛風:炎症を抑える治療と再発予防
  • 化膿性関節炎:関節液の採取、抗菌薬、関節内の洗浄・排膿
  • 滑液包炎:圧迫の回避、冷却、薬、感染があれば抗菌薬など

水を抜くだけで腫れが一時的に軽くなっても、原因の治療をしなければ再びたまることがあります。

よくある質問

膝の水は自然に引きますか?

原因となる炎症が軽くなれば、体に吸収されて自然に減ることがあります。ただし、感染、血腫、大きな半月板損傷など、早期の診断や処置が必要な場合もあります。

膝の水を抜くと何度もたまるようになりますか?

穿刺そのものが再発の原因になるわけではありません。関節内の炎症や損傷が続いていると、抜いた後でも再びたまります。

水がたまっていても運動してよいですか?

軽い腫れで、歩き方が変わらず、運動後や翌日に悪化しない場合は、負荷を下げた運動が可能なことがあります。びっこを引く、腫れが増える、膝が不安定、引っかかる場合は中止して受診してください。

痛みがなくても腫れていれば受診すべきですか?

小さな腫れが一時的で改善している場合は経過を見られることもあります。ただし、原因不明の腫れが続く、繰り返す、左右差が大きい、しこりがある場合は、一度診察を受けてください。

膝の水の色で病気が分かりますか?

血が混じっている、濁っているなどは重要な手がかりですが、色だけで診断はできません。必要に応じて細菌培養、細胞数、結晶検査などを行います。

水を抜いた後は安静が必要ですか?

当日は激しい運動や長時間の入浴を避けるよう指示されることがあります。処置内容や原因によって異なるため、担当医の指示に従ってください。穿刺部の赤み、腫れ、強い痛み、発熱が出た場合は医療機関へ連絡してください。

まとめ

膝が腫れて水がたまる原因には、変形性膝関節症、半月板・靱帯損傷、痛風・偽痛風、化膿性関節炎などがあります。

膝の水は、すべての場合に必ず抜くわけではありません。原因を調べる必要がある場合や、大量の水によって強い痛みや動かしにくさがある場合に関節穿刺を行います。

赤み、熱感、発熱、急激な腫れ、荷重不能、ロッキングなどがある場合は、早めに医療機関を受診してください。

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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。