脛骨近位骨切り術後の生活とリハビリ|荷重・歩行・仕事復帰の目安
脛骨近位骨切り術は、膝のすぐ下にある脛骨を切り、脚の向きと荷重のかかり方を整える手術です。人工関節とは異なり、自分の膝関節を残しながら、膝の内側に集中していた負担を分散することを目的とします。
一方で、骨を切ってプレートとスクリューで固定する手術であるため、術後は「骨が治るまでの時間」と「膝の機能を戻すリハビリ」の両方が必要です。
脛骨近位骨切り術後の回復は、手術方法、骨切り量、固定材料、骨の状態、同時に行った半月板手術や軟骨処置、医療機関の方針によって大きく変わります。
この記事では、脛骨近位骨切り術後の生活とリハビリについて、荷重、歩行、松葉杖、階段、仕事復帰、運転、スポーツ復帰、注意すべき症状を患者さん向けに解説します。
術後に早めに医療機関へ連絡した方がよい症状
- 発熱が続く、寒気がある
- 傷口の赤み、腫れ、熱感、膿、出血が増えている
- 膝やすねの痛みが急に強くなった
- 膝が急に大きく腫れた
- ふくらはぎが強く痛い、片脚だけ大きく腫れる
- 突然の息苦しさ、胸痛、血の混じったせきがある
- 足先が冷たい、白い、紫色になる、しびれる、動かしにくい
- 転倒した、膝をひねった、強く体重をかけてしまった
- 荷重を増やした後から痛みや腫れが翌日以降も強く残る
- プレート周囲の痛みが急に強くなり、歩きにくい
脛骨近位骨切り術後は何を治している時期ですか?
脛骨近位骨切り術後は、主に次の3つを同時に回復していきます。
- 骨切りした部分の骨癒合
- 膝の曲げ伸ばしと筋力
- 新しい脚の軸に合わせた歩き方
人工膝関節では傷んだ関節面を人工物に置き換えますが、骨切り術では自分の関節を残し、骨の角度を変えます。そのため、術後のリハビリでは「早く歩く」だけでなく、「骨が治るまで保護する」「矯正した位置を守る」「筋力と歩き方を戻す」ことが重要です。
術後スケジュールは人によって違います
脛骨近位骨切り術後の荷重開始時期や松葉杖を外す時期は、施設や手術内容によって異なります。
内側開大式高位脛骨骨切り術では、早期から荷重を許可する施設もあります。一方で、骨切り量が大きい、骨の状態が弱い、固定性に不安がある、半月板後根修復や軟骨処置を同時に行った場合などでは、より慎重に進めることがあります。
したがって、この記事のスケジュールは一般的な目安です。実際には、担当医と理学療法士から指示された荷重量、装具、可動域制限を優先してください。
術後の大まかな回復イメージ
| 時期 | 主な目標 | 注意点 |
|---|---|---|
| 術後〜2週 | 痛み・腫れ管理、傷口保護、足首運動、膝伸展、松葉杖歩行 | 転倒、過荷重、膝を曲げたまま休む姿勢に注意 |
| 2〜6週 | 可動域改善、筋力維持、荷重の段階的増加 | X線で骨切り部を確認しながら進める |
| 6〜12週 | 歩行の安定、階段練習、筋力強化、自転車など | 痛み・腫れが増える場合は負荷を戻す |
| 3〜6か月 | 日常生活・仕事復帰、筋力とバランス回復 | 走る・ジャンプは骨癒合と筋力を確認してから |
| 6か月以降 | スポーツや負荷の高い活動を段階的に検討 | プレート違和感、筋力差、腫れの反応を確認 |
これはあくまで一般的な流れです。半月板修復や軟骨処置を同時に行っている場合は、その手術の制限が優先されることがあります。
術後早期:痛みと腫れを抑える時期
痛みの管理
術後は、膝の内側やすねの痛み、張り、熱感、むくみを感じることがあります。痛み止めは、処方された内容を守って使用します。
痛みがあるからといって完全に動かさない状態を続けると、膝が硬くなったり、筋力が落ちたりします。一方で、痛みを我慢して歩きすぎると腫れが増えます。
大切なのは、痛みと腫れを見ながら、許可された範囲で動くことです。
冷却と挙上
術後早期は、冷却と挙上が痛みや腫れの管理に役立ちます。
- 保冷剤をタオルで包む
- 10〜20分程度を目安に冷やす
- 長時間冷やし続けない
- 足を少し高くして休む
- 膝の真下だけに厚い枕を入れて曲げたままにしない
膝を曲げた姿勢で長く休むと、膝が伸びにくくなることがあります。ふくらはぎ全体を支えるようにして、膝が伸びやすい姿勢を意識します。
足首の運動
足首を上下に動かす運動は、むくみや血栓予防のために大切です。
- 仰向けまたは座った姿勢になります。
- 足首をゆっくり上げ下げします。
- 痛みのない範囲で、1日数回行います。
ふくらはぎの強い痛みや片脚だけの大きな腫れがある場合は、血栓症の確認が必要になることがあります。
荷重はいつからできますか?
最も多い質問の一つが「いつから体重をかけてよいか」です。
答えは、手術内容によって異なります。早期荷重を許可する施設もありますが、段階的に増やす施設もあります。
荷重を決める要因
- 骨切りの方法
- 骨切り量
- プレートとスクリューの固定性
- 骨の硬さ・骨粗鬆症の有無
- 人工骨や骨移植の有無
- 半月板修復や軟骨処置を同時に行ったか
- 術後X線で矯正位が保たれているか
- 痛みと腫れの反応
荷重を増やす時期は、痛みだけでは決まりません。X線で骨切り部の状態を確認しながら、担当医が判断します。
荷重を増やすときのチェックポイント
- 歩いた後に痛みが強くならない
- 翌日に膝やすねの腫れが大きく増えない
- 歩き方が大きく崩れない
- プレート周囲の痛みが増えない
- 松葉杖なしで歩いても膝が不安定にならない
自己判断で「もう痛くないから」と急に全荷重にすると、骨切り部、プレート、半月板修復部に負担がかかることがあります。
松葉杖はいつまで必要ですか?
松葉杖は、膝と骨切り部を守りながら安全に歩くために使います。
松葉杖を外す目安は、次のような条件を満たすことです。
- 担当医から荷重許可が出ている
- 痛みが強くない
- 膝やすねの腫れが増えない
- 膝が抜けない
- 左右差の少ない歩き方ができる
- 階段や段差で安全に動ける
片松葉杖や杖へ移行する場合、基本的には手術した脚と反対側の手で持ちます。これは、手術した側の膝へかかる負担を減らすためです。
膝の曲げ伸ばしはどう進めますか?
術後は膝が腫れや痛みで曲げにくくなります。一方で、膝が伸びない状態が残ると、歩き方に影響します。
リハビリでは、まず膝をしっかり伸ばすこと、次に日常生活に必要な範囲で曲げることを目指します。
術後早期に大切なこと
- 膝を曲げたまま長時間休まない
- 許可された範囲で膝を曲げ伸ばしする
- 腫れが増えるほど無理に曲げない
- 痛みを我慢して正座や深いしゃがみ込みをしない
- 膝裏を伸ばす姿勢を意識する
内側半月板後根修復や半月板縫合を同時に行っている場合は、深い膝曲げに制限があることがあります。
階段はいつからできますか?
階段は、歩行より膝への負担が大きい動作です。術後早期は手すりや松葉杖を使い、安全な方法で昇り降りします。
上るとき
一般的には、痛くない側の脚から上り、手術した脚を後からそろえます。
下りるとき
一般的には、松葉杖または手術した脚から先に下ろし、痛くない側の脚を後からそろえます。
ただし、荷重制限や松葉杖の使い方は医療機関で指導を受けてください。階段は転倒リスクがあるため、無理に一人で練習しないことが大切です。
自宅生活で注意すること
床生活を減らす
術後しばらくは、床からの立ち上がり、正座、深いしゃがみ込みは負担が大きくなります。
- 椅子とベッドを使う
- 洋式トイレを使う
- 低い椅子を避ける
- 床に座る時間を減らす
- 物を拾うときはしゃがみ込まず、道具や台を使う
転倒を防ぐ
術後の転倒は、骨切り部や固定材料に大きな負担をかけます。
- 床のコードやマットを片付ける
- 夜間は照明をつける
- 浴室やトイレに手すりを使う
- 滑りやすい靴下やスリッパを避ける
- 雨の日や段差の多い場所は慎重に歩く
むくみ対策
術後は足全体がむくむことがあります。足首を動かす、足を少し高くして休む、歩行量を急に増やさないことが大切です。
片脚だけ急に強く腫れる、ふくらはぎが痛い、息苦しい場合は、血栓症の確認が必要です。
リハビリの段階
第1段階:腫れを抑え、膝を守る時期
術後早期は、痛みと腫れを抑え、膝を伸ばしやすくし、大腿四頭筋の働きを保つことが目標です。
- 足首の運動
- 太ももに力を入れる運動
- 許可された範囲での膝曲げ
- 膝を伸ばす姿勢の保持
- 松葉杖歩行
第2段階:歩行と可動域を整える時期
痛みと腫れが落ち着き、荷重が増えてきたら、歩き方、可動域、軽い筋力運動を進めます。
- 体重移動
- 膝の曲げ伸ばし
- 椅子からの立ち上がり
- 股関節周囲筋の運動
- かかと上げ
- 自転車エルゴメーター
第3段階:筋力と日常動作を戻す時期
全荷重に近づき、歩行が安定してきたら、階段、片脚立ち、浅いスクワット、ステップ練習を段階的に行います。
- 浅いスクワット
- ステップアップ
- 片脚立ち
- バランス練習
- 歩行距離の増加
- 低負荷の有酸素運動
運動後や翌日に痛みや腫れが増える場合は、負荷を下げます。
第4段階:仕事・スポーツ復帰の準備
骨癒合、筋力、バランス、歩行、階段が安定してきたら、仕事やスポーツに必要な動作へ進みます。
- 長時間歩行
- 坂道や不整地歩行
- しゃがみ込みに近い動作
- 軽いジョギングの準備
- スポーツ特異的な動作
走る、ジャンプ、方向転換は、骨癒合と筋力が十分に確認されてから段階的に進めます。
仕事復帰の目安
仕事復帰は、手術内容、荷重制限、通勤方法、職場環境によって変わります。
| 仕事の種類 | 復帰で考えること |
|---|---|
| デスクワーク | 通勤、座位でのむくみ、休憩、足を上げる時間を考慮します。 |
| 立ち仕事 | 長時間立位で痛みや腫れが増えないか確認します。 |
| 歩き回る仕事 | 歩行距離を段階的に増やし、翌日の腫れを確認します。 |
| しゃがみ込みが多い仕事 | 深い膝曲げは慎重に再開します。作業姿勢の変更が必要です。 |
| 重労働 | 骨癒合、筋力、荷重、階段、持ち上げ動作を確認してから復帰します。 |
デスクワークは比較的早く戻れる場合がありますが、通勤で長く歩く、満員電車に乗る、階段が多い場合は負担が大きくなります。立ち仕事や重労働では、復帰に数か月以上かかることがあります。
車の運転はいつからですか?
車の運転再開は、手術した側、車種、鎮痛薬、反応速度、装具や松葉杖の有無によって異なります。
特に右膝の手術後は、ブレーキ操作に関わるため慎重に判断します。
運転再開の前に確認したいこと
- 担当医から運転の許可がある
- 麻薬性鎮痛薬など運転に影響する薬を使っていない
- ブレーキを素早く安全に踏める
- 痛みで反応が遅れない
- 装具や松葉杖が運転に支障しない
- 乗り降りで膝をひねらない
短距離から始め、痛みや腫れが増えないかを確認します。
いつから自転車・ランニング・スポーツができますか?
自転車
膝の曲がる角度がある程度戻り、医師・理学療法士の許可があれば、固定式自転車から始めることがあります。
サドルを高めにし、軽い負荷から始めます。膝が深く曲がりすぎる設定や強い負荷は避けます。
ランニング
ランニングは、骨癒合、筋力、片脚動作、痛み・腫れの反応を確認してから段階的に行います。
歩くと痛い、階段で痛い、翌日に腫れる状態では、ジョギングを始める段階ではありません。
スポーツ
骨切り術後にスポーツへ戻れる方はいますが、全員が元の競技レベルへ戻れるわけではありません。
スポーツ復帰では、次の点を確認します。
- 骨癒合が確認されている
- 膝の腫れが落ち着いている
- 筋力の左右差が小さい
- 片脚立ちやステップ動作が安定している
- 走る、止まる、方向転換が段階的にできる
- 翌日に痛みや腫れが増えない
- 担当医・理学療法士から許可がある
高衝撃スポーツへ戻る場合は、膝の状態と長期的な関節保護を踏まえて慎重に相談します。
プレート周囲の違和感・抜釘について
骨切り術では、骨を固定するためにプレートとスクリューを使用します。術後にプレート周囲の違和感、皮膚のつっぱり、押すと痛い感じを自覚することがあります。
骨がしっかり癒合した後、症状や医療機関の方針によって抜釘を検討することがあります。
抜釘が必要かどうかは、次の点を考えて判断します。
- プレート周囲の痛みや違和感があるか
- 骨癒合が十分か
- 仕事やスポーツで当たりやすいか
- 将来の人工膝関節手術の可能性
- 抜釘手術のリスク
全員が必ず抜釘するわけではありません。担当医と相談して決めます。
同時に半月板手術を受けた場合
脛骨近位骨切り術では、内側半月板後根断裂の修復術や半月板縫合を同時に行うことがあります。
この場合、骨切り術だけでなく、半月板を守るための制限も必要になることがあります。
- 荷重を慎重に進める
- 深い膝曲げを制限する
- しゃがみ込みや正座を急がない
- ひねり動作を避ける
- スポーツ復帰を慎重に判断する
「骨切り術の骨が大丈夫そうだから何でもできる」と考えるのではなく、同時に修復した組織も含めてリハビリを進めます。
術後に痛みが続く場合
脛骨近位骨切り術後に痛みが続く理由はいくつかあります。
- 術後の腫れや炎症
- 筋力低下
- 歩き方の変化
- プレート周囲の違和感
- 骨癒合の遅れ
- 半月板や軟骨の病変
- 矯正不足・過矯正
- 膝蓋大腿関節の痛み
- 感染や血栓症
- 腰や股関節からの痛み
痛みが続く場合は、X線で骨癒合と矯正位を確認し、必要に応じてMRIやCT、血液検査などを検討します。
長期的に膝を守るために
骨切り術は、手術後数か月だけで終わる治療ではありません。矯正した脚の軸を活かして、自分の膝を長く使うことが目標です。
長期的に大切なこと
- 体重管理を続ける
- 太ももと股関節周囲の筋力を保つ
- 急に運動量を増やさない
- 膝が腫れるほど無理をしない
- 痛みが出る動作を把握する
- 定期的にX線で確認する
- 反対側の膝もケアする
痛みが軽くなった後も、筋力、歩き方、活動量の調整を続けることで、長期的な膝の負担を減らしやすくなります。
よくある質問
脛骨近位骨切り術後、いつから歩けますか?
手術方法と医療機関の方針によって異なります。早期から荷重を許可する場合もあれば、松葉杖で保護しながら段階的に増やす場合もあります。痛みだけで判断せず、X線で骨切り部を確認しながら進めます。
松葉杖はいつ外れますか?
荷重許可、痛み、腫れ、歩き方、骨癒合の状態によって決まります。自己判断で急に外すと、歩き方が崩れたり骨切り部へ負担がかかったりすることがあります。
術後どのくらいで膝が楽になりますか?
痛みは数週間から数か月で徐々に改善することが多いですが、骨癒合と筋力回復には時間がかかります。日常生活が安定するまで数か月、スポーツや重労働へ戻るにはさらに時間が必要です。
膝が熱っぽいのは普通ですか?
術後しばらくは熱感や腫れを感じることがあります。ただし、発熱、傷口の赤みや膿、痛みの急な悪化がある場合は感染などを確認する必要があります。
正座やしゃがみ込みはできますか?
膝の可動域、痛み、半月板手術の有無によって異なります。深い屈曲は骨切り部や半月板へ負担がかかることがあるため、自己判断で急がないでください。
プレートは必ず抜きますか?
必ずではありません。骨癒合後にプレート周囲の痛みや違和感がある場合、将来の手術計画がある場合、医療機関の方針がある場合に抜釘を検討します。
骨切り術後に人工膝関節になることはありますか?
あります。骨切り術は人工膝関節をできるだけ先延ばしにする、または関節を温存するための手術ですが、将来的に関節症が進行した場合は人工膝関節を検討することがあります。
反対の膝も痛くなることはありますか?
反対側の膝にもO脚や関節症がある場合、痛みが出ることがあります。術後に歩き方が変わる時期は、反対側の膝や股関節、腰にも負担がかかることがあるため注意します。
スポーツに戻れますか?
戻れる方もいますが、競技内容、骨癒合、筋力、膝の腫れ、半月板や軟骨の状態によって異なります。ジョギングやスポーツは段階的に再開し、翌日の痛みや腫れを確認します。
まとめ
脛骨近位骨切り術後の生活とリハビリでは、骨切り部の骨癒合、膝の可動域、筋力、歩き方を段階的に回復していくことが大切です。
荷重開始や松葉杖を外す時期は、手術方法、固定性、骨の状態、同時手術、医療機関の方針によって異なります。自己判断で急に荷重を増やさず、X線と症状を確認しながら進めます。
術後早期は、痛みと腫れを抑え、膝を伸ばしやすくし、足首や太ももの運動を行います。回復に合わせて、歩行、階段、筋力、バランス、仕事復帰、スポーツ復帰へ段階的に進みます。
発熱、傷口の異常、ふくらはぎの痛みや腫れ、突然の息苦しさ、足先のしびれや冷感、転倒後の痛み増悪がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
骨切り術後は、手術直後だけでなく、長期的に体重、筋力、活動量を管理し、自分の膝を長く使うことを目指します。
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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。術後の荷重、可動域、装具、仕事復帰、スポーツ復帰は、手術内容と担当医の方針に従ってください。

