脛骨近位骨切り術は、膝のすぐ下にある脛骨を切り、脚の向きや荷重のかかり方を整える手術です。中でも最も頻繁に行われている骨の切り方は、英語では High Tibial Osteotomy と呼ばれ、略して HTO と表記されます。日本語では「高位脛骨骨切り術」と呼ばれることもあります。

主に、O脚により膝の内側へ負担が集中している変形性膝関節症や、内側半月板後根断裂後の内側荷重が強い膝などで検討されます。

人工関節のように関節面を金属やポリエチレンに置き換える手術ではありません。自分の膝関節を残したまま、体重がかかる軸を調整し、傷んでいる内側の負担を減らすことを目的とします。

一方で、骨を切って固定し、骨が治るのを待つ手術です。そのため、適応、手術計画、術後リハビリ、合併症への理解が重要です。

この手術を考える前に知っておきたいこと

  • 主な対象は、膝の内側に痛みがあり、O脚によって内側へ負担が集中している人です。
  • 人工膝関節とは違い、自分の膝関節を温存する手術です。
  • 骨を切って角度を変えるため、骨がつくまで時間がかかります。
  • リハビリと荷重の進め方は、骨の状態、固定方法、合併手術によって異なります。
  • すべての変形性膝関節症に適した手術ではありません。
  • 進行した関節症、膝の曲げ伸ばし制限、強い膝蓋大腿関節症、外側まで傷んでいる場合などでは、人工膝関節が適することもあります。

脛骨近位骨切り術とは

膝の内側に痛みが出る変形性膝関節症では、O脚によって体重の軸が膝の内側を通り、内側の軟骨や半月板へ負担が集中していることがあります。

脛骨近位骨切り術では、すねの骨である脛骨の上の方を切り、角度を調整して固定します。これにより、体重がかかる位置を膝の内側からやや外側へ移動させ、内側の負担を減らします。

イメージとしては、傷んだ内側に集中していた荷重を、比較的残っている外側へ分散させる手術です。

手術の目的は、次の3つです。

  • 膝の内側に集中している負担を減らす
  • 痛みを軽くし、歩行や活動を改善する
  • 人工膝関節をできるだけ先延ばしにする、または回避する

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なぜO脚だと膝の内側が痛くなるのですか?

立ったときや歩くとき、体重は股関節から膝、足首へ伝わります。O脚が強いと、この荷重の軸が膝の内側を通りやすくなります。

その結果、膝の内側の軟骨、内側半月板、軟骨下骨に負担が集中します。内側の痛み、腫れ、歩き始めの痛み、階段の痛み、O脚の進行につながることがあります。

薬、注射、運動療法は痛みや炎症を軽くするために重要ですが、O脚による荷重の偏りそのものを大きく変えることはできません。

骨切り術は、痛みの原因となっている荷重の偏りに直接アプローチする手術です。

膝の内側の痛みについて詳しく見る

どのような人に向いていますか?

脛骨近位骨切り術は、次のような人で検討されます。

  • 膝の内側に痛みがある
  • O脚があり、荷重が内側へ偏っている
  • 外側の軟骨が比較的保たれている
  • 膝の曲げ伸ばしがある程度保たれている
  • 仕事や趣味で活動性を保ちたい
  • 人工膝関節にはまだ早い、または人工関節をできるだけ先延ばしにしたい
  • 内側半月板後根断裂や半月板逸脱により、内側への負担が問題になっている

一般的には、比較的活動性が高く、自分の関節を残したい方に向いていることがあります。ただし、年齢だけで決まるものではありません。骨の状態、関節の傷み方、体重、可動域、仕事内容、生活目標を含めて判断します。

内側半月板後根断裂について詳しく見る

向いていないことがある場合

次のような場合は、骨切り術ではなく、人工膝関節など別の治療が適することがあります。

  • 膝の内側だけでなく、外側や膝蓋大腿関節も強く傷んでいる
  • 膝の曲げ伸ばし制限が強い
  • 膝が大きく曲がったまま伸びない
  • 炎症性関節疾患がある
  • 骨が治りにくい条件が強い
  • 高度肥満や喫煙など、合併症リスクが高い
  • 感染や血流障害など、手術リスクが高い状態がある
  • 術後リハビリや通院が難しい

ただし、これらは一律の禁止条件ではありません。どこまで適応できるかは、膝の状態と医療機関の方針によって変わります。

人工膝関節との違い

骨切り術と人工膝関節は、どちらも変形性膝関節症に対する手術ですが、考え方が大きく異なります。

項目 脛骨近位骨切り術 人工膝関節
目的 荷重軸を変え、自分の関節を温存する 傷んだ関節面を人工物に置き換える
対象 内側中心の関節症、O脚、活動性が高い人など 進行した関節症、広い範囲の軟骨障害など
利点 関節温存、比較的活動性を保ちやすい 痛みの改善が期待しやすく、変形矯正も可能
注意点 骨癒合が必要、リハビリに時間がかかる 人工関節の耐用年数、感染、ゆるみなど
将来 必要になれば人工膝関節へ移行することがある 再置換が必要になることがある

どちらが優れているというより、膝の状態と生活目標に合う手術を選ぶことが大切です。

人工膝関節について詳しく見る

主な手術方法

内側開大式高位脛骨骨切り術・OWHTO

日本で多く行われている方法の一つです。脛骨の内側から骨を切り、開くように角度を調整してプレートとスクリューで固定します。

必要に応じて、開いた部分に人工骨や自家骨を入れることがあります。

利点として、矯正量を調整しやすいこと、腓骨を切らずに行えることなどがあります。一方で、骨がつくまでの管理、開いた部分の骨癒合、プレート周囲の違和感などに注意します。

外側閉鎖式高位脛骨骨切り術・CWHTO

脛骨の外側から骨をくさび状に切り、閉じるように角度を調整する方法です。

骨癒合が比較的安定しやすい面がありますが、腓骨の処置や神経への注意が必要です。膝の状態や矯正量、施設の方針によって選択されます。

遠位大腿骨骨切り術・DFO

変形が大腿骨側にある場合や、膝全体のアライメント調整が必要な場合は、遠位大腿骨骨切り術や、脛骨と大腿骨の両方を調整するDLOが検討されることがあります。

「O脚だから必ず脛骨だけを切る」とは限りません。全下肢X線で、どこに変形の原因があるかを確認して計画します。

手術前に行う検査

骨切り術では、通常の膝のX線だけでなく、脚全体のアライメントを評価する検査が重要です。

  • 立位X線
  • 全下肢X線
  • 膝蓋骨や膝蓋大腿関節のX線
  • MRI
  • 必要に応じてCT
  • 血液検査、心電図、胸部X線など全身評価

全下肢X線では、股関節から足首までの軸を見て、体重が膝のどこを通っているかを確認します。

MRIでは、半月板、軟骨、骨内部の病変、内側半月板後根断裂、膝軟骨下不全骨折などを確認します。

膝の診察と検査について詳しく見る

手術の流れ

実際の手術内容は医療機関によって異なりますが、おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 麻酔を行う
  2. 必要に応じて関節鏡で半月板や軟骨を確認する
  3. 骨切りする位置を確認する
  4. 脛骨近位部を計画した角度で骨切りする
  5. 脚の軸を調整する
  6. プレートとスクリューで固定する
  7. 必要に応じて人工骨や骨移植を行う
  8. 創を閉じる

内側半月板後根断裂や半月板損傷がある場合は、半月板縫合や修復を同時に行うことがあります。軟骨処置を併用することもあります。

入院期間と術後リハビリ

入院期間や荷重開始時期は、手術方法、固定材料、骨の状態、合併手術、医療機関の方針によって異なります。

術後早期

術後は痛みと腫れを管理しながら、足首の運動、膝の曲げ伸ばし、大腿四頭筋へ力を入れる練習を始めます。

血栓予防のため、足首を動かすことや、医療機関の指示に従った離床が重要です。

荷重の進め方

骨切り術では、骨が治る過程を考えながら荷重を進めます。医療機関によって、早期から荷重を始める場合もあれば、段階的に体重をかける場合もあります。

自分の判断で急に荷重を増やすと、痛み、骨癒合不全、矯正のゆるみ、固定材料への負担につながることがあります。担当医と理学療法士の指示に従ってください。

退院後

退院後も、可動域、筋力、歩き方、階段、片脚動作を段階的に回復します。

仕事復帰や運動復帰の時期は、仕事内容、骨癒合、痛み、筋力、合併手術によって変わります。

手術後の生活について詳しく見る

膝を支える筋力トレーニングについて詳しく見る

術後どのくらいでよくなりますか?

痛みは術後数週間から数か月で徐々に改善することが多いですが、骨切り術は骨が治るまで時間がかかる手術です。

一般的には、日常生活の歩行が安定するまでに数か月、スポーツや負荷の高い活動へ戻るにはさらに時間がかかります。骨癒合や筋力回復には個人差があります。

術後しばらくは、膝の痛みだけでなく、プレート周囲の違和感、すねの張り、むくみ、筋力低下を感じることがあります。

「手術が終わったらすぐ元通り」ではなく、骨の治癒とリハビリを含めた治療と考えることが重要です。

期待できる効果

適切な患者さんに行われた場合、脛骨近位骨切り術には次の効果が期待されます。

  • 膝の内側痛の軽減
  • 歩行や階段動作の改善
  • 活動性の維持
  • 人工膝関節の時期を遅らせる可能性
  • 半月板修復や軟骨治療を行いやすい荷重環境づくり

ただし、軟骨や半月板が元通りになる手術ではありません。痛みの原因が内側荷重だけではない場合、効果が限定的なこともあります。

合併症・注意点

どの手術にもリスクがあります。脛骨近位骨切り術で注意する主な合併症には次のようなものがあります。

  • 感染
  • 血栓症
  • 神経・血管損傷
  • 骨癒合遅延・偽関節
  • 矯正不足・過矯正・矯正の戻り
  • 骨折
  • プレートやスクリュー周囲の痛み
  • 膝の可動域制限
  • 膝蓋大腿関節の痛み
  • 将来的に人工膝関節が必要になる可能性

術後に発熱、創部の強い赤み、膿、強い腫れ、ふくらはぎの痛みや腫れ、突然の息苦しさがある場合は、早めに医療機関へ連絡してください。

プレートは抜く必要がありますか?

皮膚の下で当たって痛い、違和感が強い、将来の人工膝関節手術に備える、医療機関の方針などにより、抜釘を検討することがあります。

抜釘が必要かどうか、いつ行うかは、骨癒合、症状、年齢、活動性、仕事、手術内容によって異なります。

骨切り術後に人工膝関節はできますか?

骨切り術を受けた後でも、将来的に変形性膝関節症が進行した場合は、人工膝関節へ移行することがあります。

ただし、骨切り術後の人工膝関節は、骨の形、プレート抜去、靱帯バランス、骨切りによるアライメント変化などを考慮する必要があり、通常の人工膝関節より計画が重要になることがあります。

骨切り術は「人工膝関節を絶対に避ける手術」ではなく、「自分の関節をできるだけ長く使うための選択肢」と考えると分かりやすいです。

保存療法を先に行うべきですか?

多くの場合、まずは保存療法を行います。

  • 運動療法
  • 体重管理
  • 薬物療法
  • ヒアルロン酸注射などの注射療法
  • 装具・足底板
  • 生活動作の工夫

これらを行っても、内側痛が強く、歩行や仕事、スポーツに支障があり、O脚による荷重の偏りが明らかな場合に手術を検討します。

変形性膝関節症の保存療法について詳しく見る

よくある質問

骨切り術は怖い手術ですか?

骨を切る手術と聞くと怖く感じる方は多いです。実際には、術前に脚の軸を計画し、骨を切る位置と角度を決め、プレートとスクリューで固定します。

一方で、骨癒合、感染、血栓症、神経血管損傷などのリスクがある手術です。利点と注意点を理解したうえで選択することが大切です。

人工膝関節より若い人向けの手術ですか?

比較的活動性の高い方や、自分の関節を温存したい方に検討されることが多いです。ただし、年齢だけで決まるわけではありません。膝の傷み方、骨の状態、可動域、生活目標を総合的に判断します。

手術後、正座やスポーツはできますか?

可能性はありますが、すべての人に保証できるわけではありません。膝の可動域、筋力、痛み、骨癒合、合併手術、もともとの関節の傷み方によって変わります。

仕事にはいつ戻れますか?

デスクワーク、立ち仕事、重労働で時期は異なります。骨癒合と歩行能力、通勤方法、職場環境を考えて判断します。重い物を持つ仕事やしゃがみ込みが多い仕事では、復帰に時間がかかることがあります。

手術後に脚の形は変わりますか?

O脚を矯正するため、脚の見た目が変わることがあります。手術の目的は見た目ではなく、膝にかかる荷重の軸を整えることです。

両膝が悪い場合はどうしますか?

痛みが強い側から治療することが多いですが、両膝の状態、生活への支障、仕事、家族の支援、リハビリの進め方を含めて計画します。

骨切り術をすれば軟骨は再生しますか?

骨切り術の主目的は軟骨を直接再生させることではなく、荷重の偏りを改善することです。負担が減ることで痛みや機能が改善することはありますが、軟骨が完全に元通りになると考える手術ではありません。

高齢でも骨切り術はできますか?

年齢だけで絶対に決まるわけではありません。ただし、骨の質、関節症の進行度、可動域、合併症、リハビリへの参加、生活目標を慎重に考える必要があります。人工膝関節の方が適している場合もあります。

まとめ

脛骨近位骨切り術は、O脚などで膝の内側へ負担が集中している場合に、脛骨の角度を調整して荷重を分散する関節温存手術です。

人工膝関節とは違い、自分の膝関節を残せることが大きな特徴です。一方で、骨を切って固定し、骨癒合を待つ必要があるため、術後リハビリと通院が重要です。

向いているのは、膝の内側痛、O脚、内側中心の関節症、活動性を保ちたい方などです。外側や膝蓋大腿関節まで強く傷んでいる場合、可動域制限が強い場合などでは、人工膝関節など別の治療が適することもあります。

骨切り術は、痛みを取るだけでなく、「自分の膝をできるだけ長く使う」ための治療選択肢です。保存療法、骨切り術、人工膝関節の違いを理解し、自分の膝の状態と生活目標に合った治療を相談しましょう。

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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。