膝関節の痛み治療TOP10|保存療法から注射・手術まで整形外科医が解説
膝関節の痛みには、変形性膝関節症、半月板損傷、膝蓋大腿痛、腱や滑液包の障害、靱帯損傷、膝軟骨下不全骨折など、さまざまな原因があります。
そのため、「膝の痛みにはこの治療が一番よい」と一つに決めることはできません。大切なのは、痛みの原因、年齢、活動性、仕事、スポーツ、膝の変形、腫れ、筋力、生活で困っていることを合わせて、治療を組み合わせることです。
この記事では、膝関節の痛みに対してよく使われる治療を10項目に整理します。順位をつけるランキングではなく、どの段階で、どの治療を考えるかを理解するための「治療選択肢TOP10」です。
治療を選ぶ前に、早めの受診が必要な症状
- 転倒・スポーツ外傷後に体重をかけられない
- けがの後、数時間以内に膝が大きく腫れた
- 膝が引っかかり、完全に伸ばせない
- 膝が何度も抜ける、ぐらつく
- 膝が赤く熱を持ち、発熱を伴う
- 足先が冷たい、白い、しびれる、動かしにくい
- 夜間・安静時にも強く痛み、日ごとに悪化している
- 片脚のふくらはぎまで腫れ、胸痛や息苦しさを伴う
膝の痛み治療で大切な考え方
痛み止めだけが治療ではありません
膝の治療というと、湿布、痛み止め、注射を思い浮かべる方が多いと思います。これらは痛みを抑えるために役立つことがありますが、膝の治療の一部です。
痛みの原因が、筋力低下、運動量の急な変化、体重、O脚、半月板、軟骨、炎症、仕事での動作などにある場合、薬だけでは不十分なことがあります。
運動療法は基本治療です
変形性膝関節症では、患者さんに合わせた運動療法が治療の中心になります。太ももや股関節周囲の筋力を高める運動、歩行や自転車などの有酸素運動、バランス練習などを組み合わせます。
運動を始めた直後に軽い痛みや違和感が出ることがありますが、強い痛みや腫れが続く場合は負荷が合っていません。痛みの反応を見ながら調整することが大切です。
治療は段階的に考えます
膝の痛み治療は、次のように段階的に考えます。
- 診断と危険サインの確認
- 教育・生活改善・運動療法
- 薬や注射で痛みを調整しながら活動を維持
- 症状が続く場合に、ラジオ波や手術などを検討
最初から強い治療を選ぶ必要はありませんが、必要な治療を先延ばしにしすぎるのもよくありません。
膝関節の痛み治療 TOP10
1.診断を確認する
治療の第一歩は、痛みの原因を確認することです。同じ「膝の内側が痛い」でも、変形性膝関節症、内側半月板損傷、内側半月板後根断裂、膝軟骨下不全骨折、鵞足部の障害では治療が異なります。
診察では、痛みの場所、きっかけ、腫れ、可動域、歩き方、半月板、靱帯、膝蓋骨、筋力を確認します。必要に応じて、X線、MRI、超音波、血液検査、関節液検査を行います。
特に、急な強い痛み、膝が伸びない、外傷後に腫れた、発熱を伴う腫れがある場合は、セルフケアより診断を優先します。
2.患者教育とセルフマネジメント
膝の痛み治療で最初に大切なのは、「自分の膝に何が起こっているのか」「何をすると悪化しやすいのか」「どのくらい動いてよいのか」を理解することです。
患者教育では、次の内容を整理します。
- 膝の病名と痛みの原因
- 悪化しやすい動作
- 続けてもよい活動と控えた方がよい活動
- 運動の目的と進め方
- 薬や注射の役割
- 受診を急ぐ症状
- 治療のゴール
「軟骨がすり減っているから何もできない」と考える必要はありません。膝の状態を理解し、活動量を調整することで、痛みを抑えながら生活機能を保てることがあります。
3.運動療法
運動療法は、膝痛治療の中心です。特に変形性膝関節症では、膝周囲の筋力運動と有酸素運動を、患者さんに合わせて行うことが推奨されています。
運動療法の目的
- 大腿四頭筋の力を保つ
- 股関節周囲筋を強くする
- 歩行や階段動作を改善する
- 膝崩れや転倒を減らす
- 痛みへの不安を減らす
- 活動量を維持する
代表的な運動
- 太ももに力を入れる運動
- 椅子からの立ち上がり
- 浅いスクワット
- 股関節を横へ開く運動
- かかと上げ
- 片脚で支える練習
- 歩行、自転車、水中運動などの有酸素運動
運動は「痛いほど頑張る」ものではありません。運動後や翌日に痛みや腫れが増える場合は、回数、深さ、速度、歩行距離を調整します。
4.体重管理
体重が増えると、歩行、階段、立ち上がりのたびに膝へかかる負担が増えます。体重管理は、特に変形性膝関節症の治療で重要です。
体重を大きく減らさなければ意味がないわけではありません。少しの減量でも痛みや機能に良い影響が出る可能性があります。体重の5%より10%の減量の方が効果が大きいと説明されることがありますが、まずは現実的に続けられる目標から始めます。
体重管理のポイント
- 急激な減量を目指さない
- たんぱく質を不足させない
- 筋肉を落とさないように運動を組み合わせる
- 膝が痛い時期は自転車や水中運動を使う
- 間食・飲酒・夜食を見直す
高齢の方では、体重だけを減らして筋肉まで落ちると、歩行能力が下がることがあります。栄養と筋力を保ちながら行うことが大切です。
5.日常生活の工夫・杖・装具
膝の痛みは、生活動作を少し変えるだけで楽になることがあります。
日常生活の工夫
- 階段は手すりを使う
- 長距離歩行は休憩を入れる
- 深いしゃがみ込みや正座を減らす
- 床作業では椅子や台を使う
- 痛い時期は坂道や下り坂を減らす
- 痛みが強い日は買い物や外出を分ける
杖
杖は、基本的に痛い膝と反対側の手で持ちます。杖を使うことは「悪化した証拠」ではなく、膝への負担を減らして活動量を保つための方法です。
装具・サポーター
サポーターや装具は、痛みの軽減、安心感、膝崩れの補助に役立つことがあります。ただし、すべての膝痛に同じサポーターが合うわけではありません。
O脚による内側荷重が強い場合は、足底板や装具を検討することがあります。膝蓋骨不安定症では膝蓋骨を支える装具が役立つことがあります。
6.外用薬・内服薬
薬は、痛みを抑えて動きやすくし、運動療法や日常生活を続けやすくするために使います。
外用薬
湿布や塗り薬などの外用NSAIDsは、膝の痛みに対してよく使われます。全身への影響は内服薬より少ないことが多いですが、皮膚かぶれや持病による注意点があります。
内服薬
内服薬には、アセトアミノフェン、NSAIDs、胃薬との併用などがあります。
NSAIDsは痛みを抑える効果が期待できますが、胃腸障害、腎機能、肝機能、心血管リスク、血圧、抗凝固薬との併用に注意が必要です。高齢の方や持病のある方は、自己判断で長く飲み続けないでください。
薬の使い方で大切なこと
- 最小限の量と期間で使う
- 痛み止めで痛みを隠して無理をしない
- 運動療法や生活改善と組み合わせる
- 持病や内服薬を医師・薬剤師に伝える
薬は「治療の中心」ではなく、膝を動かしやすくするための補助として考えると分かりやすいです。
7.注射療法
注射療法には、ヒアルロン酸注射、ステロイド注射、PRPなどがあります。病状、目的、医療機関の方針によって使い分けます。
ヒアルロン酸注射
日本では、変形性膝関節症に対してよく行われる治療です。関節内の潤滑や炎症の調整を目的に行われます。
一方で、海外ガイドラインではヒアルロン酸注射の位置づけが異なり、日常的に使用することを勧めないものもあります。つまり、世界的に評価が完全に一致している治療ではありません。
「効く人もいるが、全員に強い効果があるわけではない」と理解し、効果が乏しいまま漫然と続けないことが重要です。
ステロイド注射
膝が強く腫れている、炎症が強い、痛みが強く運動療法を始められない場合などに検討されます。
短期間の痛み軽減に役立つことがありますが、頻回に行う治療ではありません。糖尿病、感染リスク、手術予定がある場合などでは注意が必要です。
PRPなどの再生医療
PRPは、自分の血液から血小板を多く含む成分を取り出して注射する治療です。痛みや機能改善が期待される報告はありますが、製剤の作り方、濃度、注射回数、費用、適応が施設によって異なります。
保険診療ではなく自費診療となることが多いため、効果の見込み、費用、標準治療との違いを十分に確認してください。
8.ラジオ波治療
膝関節のラジオ波治療は、膝の痛みを伝える神経の一部に高周波エネルギーを加え、痛みを軽くすることを目的とした治療です。冷却ラジオ波と呼ばれる方法もあります。
主に、次のような方で検討されます。
- 保存療法で十分に改善しない
- 手術にはまだ踏み切れない
- 手術リスクが高い
- 痛みを軽くして活動量を保ちたい
ラジオ波治療は、軟骨や半月板を再生する治療ではありません。痛みを抑えることで、歩行や運動療法を行いやすくする治療です。
効果の持続期間には個人差があり、原因によっては骨切り術や人工膝関節などの手術を検討した方がよい場合もあります。
9.関節鏡・骨切り術などの関節温存手術
薬、運動療法、注射で改善しない場合、病態によっては関節を温存する手術を検討します。
関節鏡手術
半月板損傷、遊離体、ロッキング、軟骨損傷などで検討されることがあります。
ただし、変形性膝関節症に対して、痛みを取る目的だけで関節内を洗う、削るといった手術は、現在は慎重に考えられています。中高年の変性半月板損傷でも、画像所見だけで手術を決めるのではなく、症状、ロッキング、保存療法の効果を合わせて判断します。
脛骨近位骨切り術
O脚で膝の内側へ負担が集中している場合、脛骨近位骨切り術を検討することがあります。
自分の関節を残したまま、脚の軸を整え、内側の負担を減らす手術です。比較的活動性を保ちたい方、人工膝関節にはまだ早い方で検討されることがあります。
10.人工膝関節
痛み、変形、可動域制限、歩行障害が強く、保存療法や関節温存手術では十分な改善が難しい場合、人工膝関節を検討します。
人工膝関節には、膝全体を置き換える人工膝関節全置換術と、傷んだ区画を中心に置き換える単顆人工膝関節置換術があります。
人工膝関節を考える目安
- 痛みで歩行や買い物が難しい
- 階段や立ち上がりがつらい
- 夜間痛や安静時痛がある
- 変形が進んでいる
- 保存療法を行っても生活の質が大きく下がっている
人工膝関節は、痛みと機能の改善が期待できる手術ですが、感染、血栓症、ゆるみ、可動域制限、再手術などのリスクもあります。
年齢や体重だけで一律に決めるのではなく、症状、生活への影響、画像所見、持病、本人の希望を合わせて判断します。
治療選択肢の比較表
| 治療 | 主な目的 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 教育・生活改善 | 悪化因子を減らす | すべての段階 | 継続が重要 |
| 運動療法 | 痛み・機能改善 | 慢性膝痛、関節症、術後 | 負荷調整が必要 |
| 体重管理 | 膝負担軽減 | 過体重・肥満がある場合 | 筋肉を落とさない |
| 薬物療法 | 痛みを抑える | 痛みが強い時期 | 副作用・持病に注意 |
| 注射療法 | 炎症・痛みの調整 | 腫れ・痛みが強い場合 | 効果と適応に個人差 |
| ラジオ波治療 | 痛みの神経を調整 | 保存療法で不十分、手術前の選択肢 | 原因を治す治療ではない |
| 骨切り術 | 荷重軸を変える | O脚・内側型関節症 | 骨癒合とリハビリが必要 |
| 人工膝関節 | 傷んだ関節面を置換 | 進行した関節症 | 手術リスクとリハビリ |
効果が不確かな治療・注意が必要な治療
サプリメント
グルコサミン、コンドロイチンなどのサプリメントは広く使われていますが、医学的な効果はガイドライン間でも慎重に扱われています。
費用をかけて長期間続ける場合は、効果を感じているか、副作用や薬との相互作用がないかを確認してください。
痛み止めの長期使用
痛み止めは便利ですが、長期に漫然と使うと副作用の問題があります。特にNSAIDsやオピオイド系薬剤は、持病や年齢によって注意が必要です。
電気治療・マッサージだけに頼る治療
一時的に楽になることはありますが、膝痛の原因に対して、筋力、活動量、体重、荷重軸、炎症、半月板や軟骨の問題を評価せずに続けるのは不十分です。
マッサージや物理療法を行う場合も、運動療法や生活改善と組み合わせることが大切です。
治療を選ぶときの実際の流れ
軽症・初期
- 病状説明
- 運動療法
- 体重管理
- 生活動作の工夫
- 外用薬
痛みが続く場合
- 内服薬
- 注射療法
- リハビリの強化
- 装具・杖
- MRIなどで原因を再確認
保存療法で改善しない場合
- ラジオ波治療
- 半月板・軟骨病変への関節鏡手術
- 脛骨近位骨切り術
- 人工膝関節
どの段階でも、治療の目的は「画像をきれいにすること」ではなく、痛みを減らし、歩く、階段を使う、仕事をする、運動を楽しむといった生活機能を守ることです。
よくある質問
膝の痛みに一番効く治療は何ですか?
原因によって異なります。変形性膝関節症では運動療法、体重管理、薬、注射、装具、手術を組み合わせます。半月板損傷、靱帯損傷、膝軟骨下不全骨折では別の治療が必要です。
湿布だけで治りますか?
軽い痛みなら改善することがありますが、腫れ、ロッキング、膝崩れ、強い歩行時痛がある場合は湿布だけで様子を見ないでください。
ヒアルロン酸注射は続けた方がよいですか?
効果を実感している場合は治療の選択肢になりますが、効果が乏しいまま長く続ける必要はありません。運動療法や生活改善と組み合わせて判断します。
注射をすると軟骨が再生しますか?
一般的なヒアルロン酸注射やステロイド注射で、失われた軟骨が元通り再生するわけではありません。痛みや炎症を調整し、動きやすくするための治療です。
運動すると軟骨がすり減りませんか?
適切な運動は膝痛治療の基本です。痛みや腫れを悪化させる過剰な負荷は避けますが、動かさなさすぎると筋力低下や歩行能力低下につながります。
痛みがあっても歩いた方がよいですか?
軽い痛みで翌日に悪化しない場合は、距離や速度を調整して歩くことがあります。一方、一歩ごとの鋭い痛み、腫れ、夜間痛、ロッキング、膝崩れがある場合は受診してください。
ラジオ波治療は手術の代わりですか?
ラジオ波治療は痛みを軽くする治療であり、O脚や軟骨の傷みを根本的に治す手術ではありません。手術を避けたい場合や手術までの間に痛みを抑える選択肢になることがあります。
いつ手術を考えるべきですか?
保存療法を行っても痛みや機能障害が強く、生活の質が大きく下がっている場合に考えます。O脚で内側負担が強い場合は骨切り術、進行した関節症では人工膝関節を検討します。
まとめ
膝関節の痛み治療は、湿布、痛み止め、注射だけではありません。診断、患者教育、運動療法、体重管理、生活動作の工夫、薬、注射、ラジオ波、骨切り術、人工膝関節を、原因と段階に合わせて組み合わせます。
特に変形性膝関節症では、運動療法と生活改善が基本です。薬や注射は痛みを調整し、動ける状態を作るために使います。
保存療法で改善しない場合でも、すぐに人工膝関節だけではなく、脛骨近位骨切り術やラジオ波治療など、中間的な選択肢が適することもあります。
一方で、膝がロックして伸びない、急に大きく腫れた、発熱を伴う、足先のしびれや冷感がある場合は、治療を選ぶ前に早めの診断が必要です。
自分の膝の状態と生活目標に合った治療を、段階的に相談していきましょう。
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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。

