膝のストレッチ|痛みを悪化させない画像付きメニュー
膝のストレッチは、膝の痛みをよくするための大切な方法の一つです。ただし、ストレッチだけで膝の痛みがすべて治るわけではありません。
膝の痛みには、変形性膝関節症、半月板損傷、靱帯損傷、膝蓋大腿関節症、腱や滑液包の炎症など、さまざまな原因があります。筋肉の硬さが痛みに関係している場合は、ストレッチが役立つことがあります。一方で、腫れや熱感が強い時期、けが直後、ロッキングがある場合に無理なストレッチを行うと、かえって悪化することがあります。
この記事では、膝に負担をかけにくいストレッチを画像付きで紹介します。太もも、ふくらはぎ、股関節まわりを整えることで、膝の曲げ伸ばしや歩行、階段動作を楽にすることを目指します。
ストレッチを始める前に受診を考えたい症状
- 転倒・スポーツ外傷後から膝が強く痛む
- 膝が大きく腫れている
- 膝が赤く熱を持っている
- 体重をかけられない、歩けない
- 膝が引っかかり、完全に伸ばせない
- 膝がぐらつく、抜ける
- 夜間や安静時にも強く痛む
- 発熱を伴う
- ストレッチ後に痛みや腫れが翌日まで強く残る
膝の痛みにストレッチが役立つ理由
膝は、膝だけで動いているわけではありません。太もも、ふくらはぎ、股関節、足首の動きが組み合わさって、歩く、立ち上がる、階段を上る、しゃがむという動作が行われます。
太ももやふくらはぎが硬くなると、膝の曲げ伸ばしがしにくくなり、膝のお皿や関節の内側・外側、膝裏に余分な負担がかかることがあります。
ストレッチの目的は、硬い筋肉を無理に伸ばすことではありません。膝にかかる力を少しずつ整え、痛みを悪化させずに動きやすくすることです。
ストレッチで大切な3つの考え方
1. 痛いほど伸ばさない
以前は「痛いくらい伸ばす」方法が勧められることもありました。しかし、膝痛がある方では、強く伸ばしすぎると筋肉や腱、関節に余計な刺激が入ることがあります。
目安は、気持ちよく伸びる、少し張る程度です。鋭い痛み、しびれ、関節の痛みが出る場合は中止してください。
2. 20〜30秒、反動をつけない
反動をつけて伸ばすと、筋肉が防御的に縮み、かえって痛みが出ることがあります。
呼吸を止めず、20〜30秒ほど静かに保ちます。慣れてきたら1〜3回行います。
3. ストレッチだけでなく筋力も必要
ストレッチで動きやすくなっても、膝を支える筋力が不足していると、痛みが戻ることがあります。
膝痛の改善には、柔軟性だけでなく、大腿四頭筋、股関節周囲筋、体幹、バランスの改善も大切です。
まず確認したいこと
ストレッチしてよい痛み
- 筋肉が伸びる感じ
- 軽い張り感
- ストレッチをやめるとすぐ消える違和感
- 翌日に痛みや腫れが増えない
中止した方がよい痛み
- 膝関節の中がズキッと痛い
- 膝のお皿の奥が強く痛い
- しびれが出る
- 膝が抜けそうになる
- ストレッチ後に腫れる
- 翌日まで痛みが残る
「伸びている痛み」と「傷んでいる痛み」は違います。迷う場合は、無理に続けず医療機関や理学療法士に相談してください。
画像付き|膝にやさしいストレッチ7選
ここからは、自宅で行いやすい膝まわりのストレッチを紹介します。すべてを一度に行う必要はありません。まずは痛みが出にくいものから2〜3種類選んで始めてください。
1. ハムストリングストレッチ
ハムストリングは太ももの裏の筋肉です。硬くなると、膝を伸ばしにくくなったり、歩行時に膝裏や太もも裏の張りを感じたりします。

やり方
- 椅子に浅く座ります。
- 片脚を前に伸ばし、かかとを床につけます。
- 背すじを伸ばし、股関節から体を少し前に倒します。
- 太もも裏が伸びるところで20〜30秒保ちます。
注意:膝裏が鋭く痛む場合は中止してください。腰を丸めすぎると、太もも裏ではなく腰に負担がかかります。
2. 大腿四頭筋ストレッチ
大腿四頭筋は太ももの前の筋肉です。膝のお皿の動きや、階段、立ち上がり、しゃがみ込みに関係します。

やり方
- 横向きに寝ます。
- 上側の足首を手で持ちます。
- 膝を後ろへ引きすぎず、太ももの前が伸びるところで止めます。
- 20〜30秒保ちます。
注意:膝のお皿の奥が痛い場合や、腰が反る場合は無理に行わないでください。立位で不安定な方は、横向きで行う方が安全です。
3. ふくらはぎストレッチ
ふくらはぎが硬いと、歩くときや階段で足首が動きにくくなり、膝への負担が増えることがあります。

やり方
- 壁に手をつきます。
- 伸ばしたい側の脚を後ろへ引きます。
- 後ろ脚のかかとを床につけます。
- ふくらはぎが伸びるところで20〜30秒保ちます。
注意:反動をつけないでください。かかとが浮くと、ふくらはぎが十分に伸びにくくなります。
4. お尻まわりのストレッチ
股関節の硬さは、膝のねじれや片脚動作に影響します。膝が内側へ入りやすい方、歩行や階段で膝の外側・前側が痛い方に役立つことがあります。

やり方
- 仰向けになります。
- 片方の足首を反対側の膝に乗せます。
- 反対側の太ももを胸へ近づけます。
- お尻の外側が伸びるところで20〜30秒保ちます。
注意:膝を手で強く押さないでください。膝ではなく、股関節とお尻が伸びる感覚を大切にします。
5. 股関節前面ストレッチ
腸腰筋や大腿直筋が硬いと、骨盤が前に傾きやすくなり、膝の曲げ伸ばしや歩行動作に影響します。

やり方
- 片膝立ちになります。
- 骨盤を立てたまま、体を少し前へ移動します。
- 後ろ脚の股関節前面が伸びるところで20〜30秒保ちます。
注意:腰を反らせないでください。膝を床につくと痛い方は、クッションやタオルを敷いてください。
6. 内もものストレッチ
内転筋は、股関節と膝の動きに関係します。スポーツで膝が内側へ入りやすい方や、内ももが張りやすい方に使います。

やり方
- 床に座り、左右の足裏を合わせます。
- 背すじを伸ばします。
- 膝を外へ開き、内ももが伸びるところで20〜30秒保ちます。
注意:膝を手で強く押し込まないでください。股関節や膝に痛みが出る場合は中止します。
7. 太もも外側のストレッチ
太もも外側の張り感が強い方に使いやすい補助ストレッチです。腸脛靱帯そのものは硬い組織で、大きく伸びるものではありませんが、股関節外側や大腿筋膜張筋周囲の緊張を軽くする目的で行います。

やり方
- 立った姿勢で脚を交差します。
- 骨盤を横へずらし、体を反対側へゆっくり倒します。
- 太もも外側から股関節外側が伸びるところで20〜30秒保ちます。
注意:膝の外側の痛い場所を無理に伸ばそうとしないでください。腸脛靱帯炎では、ストレッチだけでなく股関節周囲筋の強化やランニング負荷の調整が重要です。
症状別に選ぶストレッチ
| 症状・場面 | まず試しやすいストレッチ | 注意点 |
|---|---|---|
| 膝裏が張る | ハムストリング、ふくらはぎ | ベーカー嚢胞や半月板損傷でも膝裏痛は出ます |
| 階段で膝前面が痛い | 大腿四頭筋、股関節前面、お尻 | 膝蓋大腿関節症では深く曲げる姿勢に注意 |
| 走ると膝外側が痛い | お尻、股関節前面、太もも外側 | 腸脛靱帯炎では股関節筋力と練習量調整も必要 |
| しゃがむと痛い | ふくらはぎ、股関節前面、お尻 | ロッキングや強い引っかかりがある場合は受診 |
| 膝が内側へ入りやすい | お尻、内もも、股関節前面 | ストレッチだけでなく筋力・動作練習が重要 |
どのくらい行えばよいですか?
目安は次の通りです。
- 1回20〜30秒
- 左右1〜3回
- 1日1〜2回
- 反動をつけない
- 痛みが強い日は無理をしない
- 運動前は軽い動的ウォームアップ、運動後や入浴後は静的ストレッチが行いやすい
毎日すべて行う必要はありません。続けやすいメニューを選び、痛みや腫れの反応を見ながら調整します。
ストレッチを避けた方がよいタイミング
- けが直後
- 膝が大きく腫れている
- 熱感が強い
- 膝がロックしている
- 筋肉の肉離れ直後
- 骨折や靱帯損傷が疑われる
- 手術後で主治医から制限がある
このような場合は、ストレッチで改善しようとせず、まず原因を確認することが大切です。
よくある質問
膝が痛いときは毎日ストレッチしてよいですか?
痛みや腫れが悪化しない範囲であれば行ってよいことが多いです。ただし、ストレッチ後に痛みや腫れが増える場合は負荷が強すぎます。
痛いほど伸ばした方が効きますか?
おすすめしません。膝痛がある方では、強い痛みを我慢して伸ばすと、筋肉や腱、関節を刺激して悪化することがあります。
ストレッチだけで変形性膝関節症は治りますか?
ストレッチだけで軟骨が元通りになるわけではありません。ただし、柔軟性を保ち、運動療法や筋力トレーニングと組み合わせることで、痛みや動きやすさの改善に役立つことがあります。
朝と夜、どちらがよいですか?
どちらでも構いません。朝はこわばりを軽くする目的でやさしく、夜や入浴後は筋肉が温まり伸ばしやすいタイミングです。
運動前に静的ストレッチをしてよいですか?
運動前は、長くじっと伸ばすより、軽く歩く、足踏み、股関節を動かすなどの動的ウォームアップが合うことがあります。静的ストレッチは運動後や入浴後に行いやすいです。
人工膝関節や骨切り術の後も同じストレッチでよいですか?
手術後は時期や術式によって制限が異なります。主治医や理学療法士の指示に従ってください。
まとめ
膝のストレッチは、太もも、ふくらはぎ、股関節まわりの柔軟性を整え、膝への負担を減らすために役立つことがあります。
大切なのは、痛いほど伸ばさないこと、反動をつけないこと、ストレッチだけに頼らず筋力トレーニングや動作改善と組み合わせることです。
腫れ、熱感、ロッキング、外傷後の強い痛み、歩けない痛みがある場合は、ストレッチを続ける前に整形外科で原因を確認してください。
まずは、ハムストリング、大腿四頭筋、ふくらはぎ、お尻まわりのストレッチから始め、痛みや翌日の反応を見ながら続けましょう。
参考文献
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Knee Conditioning Program. OrthoInfo.
- National Institute for Health and Care Excellence. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management. NICE guideline NG226. 2022.
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Osteoarthritis of the Knee: Non-Arthroplasty. Clinical Practice Guideline. 2021.
- Kolasinski SL, et al. 2019 American College of Rheumatology/Arthritis Foundation Guideline for the Management of Osteoarthritis of the Hand, Hip, and Knee. Arthritis Rheumatol. 2020.
- Royal Orthopaedic Hospital NHS Foundation Trust. Exercises for Osteoarthritis of the Knee.
- Versus Arthritis. Exercises for the knees.
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。膝の痛みが続く場合、腫れ、熱感、ロッキング、外傷後の痛みがある場合は整形外科でご相談ください。

