膝の筋力トレーニング|膝痛を悪化させずに鍛える考え方
膝が痛いとき、「筋力をつけたほうがよい」と言われることがあります。
しかし、実際には「どの筋肉を鍛えればよいのか」「痛みがあるのに筋トレしてよいのか」「スクワットをしても大丈夫なのか」と迷う方は多いと思います。
膝の筋力トレーニングで大切なのは、痛みを我慢して鍛えることではありません。
大切なのは、膝にかかる負担を調整しながら、膝を支える筋肉を段階的に回復させることです。
この記事では、膝の痛みがある方に向けて、筋力トレーニングの考え方、始め方、注意点をわかりやすく解説します。
運動を始める前の基本的な考え方については、先に 膝の運動療法の考え方 も参考にしてください。
この記事の結論
- 膝の筋力トレーニングは、痛みを我慢して行うものではありません。
- 太ももだけでなく、お尻・股関節・ふくらはぎも重要です。
- 最初は寝た姿勢や椅子を使った軽い運動から始めます。
- スクワットは、深く曲げずに浅い範囲から行います。
- 運動中よりも、運動後や翌日に痛み・腫れが増えないかが大切です。
- 膝が腫れる、熱を持つ、歩けない場合は、筋トレより診察を優先します。
- 筋力トレーニングは、ストレッチ・体重管理・生活動作の工夫と組み合わせると効果的です。
なぜ膝痛に筋力トレーニングが必要なのですか?
膝は、体重を支えながら曲げ伸ばしをする関節です。
歩く、階段を上り下りする、立ち上がる、しゃがむといった日常動作では、膝には体重以上の負担がかかります。
このとき、膝を支えているのが筋肉です。
筋力が落ちると、膝関節だけに負担が集中しやすくなります。その結果、歩くと痛い、階段がつらい、立ち上がりで痛い、膝が不安定に感じるといった症状につながることがあります。
筋力トレーニングの目的は、単に筋肉を太くすることではありません。
膝への負担を分散し、動作を安定させることが目的です。
膝を支える筋肉は太ももだけではありません
膝の筋力トレーニングというと、太ももの前の筋肉を思い浮かべる方が多いと思います。
もちろん、太ももの前にある大腿四頭筋はとても重要です。
ただし、膝を支えるためには、太ももだけでなく、お尻、股関節、ふくらはぎ、体幹も関係します。
| 筋肉 | 主な役割 |
|---|---|
| 太ももの前 | 膝を伸ばす、立ち上がりや階段で体を支える |
| 太ももの後ろ | 膝を曲げる、走る・止まる動作を助ける |
| お尻の筋肉 | 股関節を安定させ、膝が内側に入るのを防ぐ |
| ふくらはぎ | 歩行時の蹴り出し、足首の安定に関係する |
| 体幹 | 姿勢を安定させ、膝への余分な負担を減らす |
膝だけを鍛えるのではなく、脚全体で体を支えることを目標にすると、日常生活の動きが安定しやすくなります。
筋トレを始める前に確認したい症状
筋力トレーニングは大切ですが、すべての膝痛にすぐ始めてよいわけではありません。
次のような症状がある場合は、筋トレよりも先に整形外科などで原因を確認してください。
早めに受診したほうがよい症状
- けがの直後から強く痛む
- 膝が大きく腫れている
- 膝に熱感がある
- 体重をかけて歩けない
- 膝が引っかかって伸びない・曲がらない
- 膝くずれを繰り返す
- 夜間や安静時にも強く痛む
- 発熱を伴う
- 痛みが日ごとに強くなっている
膝の腫れや水がたまる症状がある場合は、膝が腫れて水がたまる原因 を確認してください。
受診の目安については、膝の痛みで病院へ行く目安 も参考になります。
痛みがあるときの筋トレの判断
筋力トレーニングでは、痛みの判断がとても大切です。
軽い違和感や少しの痛みがあっても、運動後や翌日に悪化しない範囲であれば続けられることがあります。
一方で、痛みを我慢して行う筋トレはおすすめできません。
続けてもよいことが多い目安
- 運動中の痛みが軽い
- 運動中に痛みが強くならない
- 運動後に痛みが長く残らない
- 翌日に膝が腫れない
- 歩き方が崩れない
- 階段や日常生活が悪化しない
負荷を下げたほうがよいサイン
- 運動中に痛みが強くなる
- 運動後に膝が腫れる
- 翌日に痛みが増える
- 階段がつらくなる
- 膝をかばって歩く
- 痛みが数日続く
筋トレの負荷は、「その場でできるか」ではなく、翌日に悪化していないかで判断しましょう。
痛みがあるときの活動量の調整については、膝が痛いときの休み方 も参考にしてください。
膝にやさしい筋力トレーニングの始め方
膝痛がある方は、いきなりスクワットや階段トレーニングから始める必要はありません。
まずは、膝への負担が少ない姿勢から始めます。
第1段階:寝た姿勢で始める
痛みが強い時期や、筋力が落ちている方では、寝た姿勢の運動から始めると安全です。
1. 太ももに力を入れる運動
- 仰向けに寝ます。
- 膝を軽く伸ばします。
- 太ももの前に力を入れて、膝を床の方へ押すようにします。
- 3〜5秒保ち、力を抜きます。
- 10回を1〜2セット行います。
膝を大きく動かさずに、太ももの筋肉を使う練習です。痛みが強い時期でも行いやすい運動です。
2. 脚上げ運動
- 仰向けに寝ます。
- 片方の膝を立て、反対側の脚を伸ばします。
- 伸ばした脚をゆっくり持ち上げます。
- 数秒保ち、ゆっくり下ろします。
- 5〜10回を目安に行います。
腰が反りすぎる場合や膝が痛む場合は、無理に行う必要はありません。
第2段階:椅子を使って行う
寝た姿勢の運動に慣れてきたら、椅子を使った運動に進みます。
1. 椅子からの立ち座り
- 安定した椅子に座ります。
- 足を肩幅くらいに開きます。
- 手すりや太ももに手を添えても構いません。
- ゆっくり立ち上がります。
- ゆっくり座ります。
- 5〜10回から始めます。
低い椅子から始めると膝への負担が大きくなります。最初は少し高めの椅子を使うとよいです。
2. 座って膝を伸ばす運動
- 椅子に座ります。
- 片膝をゆっくり伸ばします。
- 太ももの前に力が入るのを感じます。
- 2〜3秒保ち、ゆっくり下ろします。
- 左右それぞれ10回を目安に行います。
勢いをつけず、ゆっくり行うことが大切です。
第3段階:立って行う
痛みや腫れが落ち着き、椅子での運動が安定してできるようになったら、立った姿勢の運動に進みます。
1. 浅いスクワット
- 足を肩幅くらいに開いて立ちます。
- 椅子や手すりを持っても構いません。
- 膝を少しだけ曲げます。
- お尻を軽く後ろに引くようにします。
- ゆっくり元に戻ります。
- 5〜10回から始めます。
深くしゃがむ必要はありません。膝が痛い方では、浅い範囲から始めることが大切です。
2. かかと上げ
- 椅子や壁に手を添えて立ちます。
- 両足のかかとをゆっくり上げます。
- ゆっくり下ろします。
- 10〜15回を目安に行います。
ふくらはぎの筋肉を使う運動です。歩行時の安定にも関係します。
3. 片脚立ち
- 壁や椅子の近くに立ちます。
- 片脚で立ちます。
- 最初は5〜10秒から始めます。
- ふらつく場合は手を添えて行います。
バランス練習は、膝の安定性を高めるために重要です。転倒しない環境で行いましょう。
スクワットはしてもよいですか?
膝痛がある方からよく聞かれるのが、「スクワットをしてもよいですか?」という質問です。
スクワットは、太ももやお尻を鍛えるよい運動です。ただし、やり方を間違えると膝痛が悪化することがあります。
膝痛がある方のスクワットの注意点
- 最初は浅く行う
- 深くしゃがみすぎない
- 膝が内側に入らないようにする
- 痛みが出る角度まで曲げない
- 回数よりフォームを優先する
- 翌日に痛みや腫れが増えないか確認する
スクワットで痛みが出る場合は、椅子からの立ち座りに戻す、曲げる角度を浅くする、回数を減らすなど調整しましょう。
変形性膝関節症と筋力トレーニング
変形性膝関節症では、膝の軟骨、半月板、骨、滑膜などに変化が起こり、痛みや腫れが出ます。
「動くと膝がすり減るのでは」と心配される方もいます。
たしかに、痛みを我慢して長時間歩く、階段を繰り返す、深いスクワットを何度も行うと、膝痛が悪化することがあります。
しかし、膝の状態に合わせた筋力トレーニングは、膝を支える力を高め、日常生活の負担を減らす助けになります。
変形性膝関節症では、太ももだけでなく、お尻や股関節まわりの筋力を整えることも重要です。
変形性膝関節症について詳しく知りたい方は、変形性膝関節症とは も参考にしてください。
筋トレとストレッチはどちらが大切ですか?
結論としては、どちらも大切です。
筋力トレーニングは、膝を支える力を高めるために行います。
一方で、ストレッチは、太もも、ふくらはぎ、股関節まわりのこわばりをやわらげ、膝を動かしやすくする目的で行います。
筋力だけあっても、体が硬いと膝に負担がかかることがあります。逆に、柔軟性だけあっても、支える筋力が不足していると不安定になります。
筋トレとストレッチは、どちらか一方ではなく組み合わせて考えましょう。
ストレッチについては、膝のストレッチ を参考にしてください。
筋力トレーニングを続けるコツ
筋力トレーニングは、1回だけ頑張っても大きな変化は出にくいです。
大切なのは、無理なく続けることです。
続けるための工夫
- 最初は1日5分から始める
- 回数を少なめにする
- 毎日同じ時間に行う
- 痛みが強い日は軽い運動に変える
- 運動後の膝の反応を記録する
- 翌日に腫れない範囲で続ける
「たくさんやる」よりも、「悪化させずに続ける」ことを目標にしてください。
サポーターや杖を使いながら筋トレしてもよいですか?
サポーターや杖を使うことは悪いことではありません。
膝の不安感が強い方では、サポーターや杖を使うことで運動しやすくなることがあります。
ただし、サポーターや杖は筋力そのものを回復させる道具ではありません。
不安感を減らしながら、少しずつ自分の筋力で支えられるようにしていくことが大切です。
サポーターについては、膝サポーターの選び方 を参考にしてください。
手術後の筋力トレーニングは自己判断しない
膝の手術後は、手術内容によって筋力トレーニングの進め方が大きく変わります。
半月板縫合、半月板切除、前十字靱帯再建術、骨切り術、人工膝関節置換術では、荷重の時期、膝を曲げる角度、筋力トレーニングの内容が異なります。
手術後は、自己判断でスクワットやランニングを始めず、主治医や理学療法士の指示に従ってください。
よくある質問
Q1. 膝が痛いときも筋トレしてよいですか?
痛みの原因や程度によります。軽い痛みで、運動後や翌日に悪化しない場合は、痛みのない範囲で行えることがあります。ただし、膝が腫れている、熱を持つ、歩けない場合は筋トレより診察を優先してください。
Q2. スクワットは膝に悪いですか?
スクワット自体が悪いわけではありません。ただし、深く曲げすぎる、膝が内側に入る、痛みを我慢して行う場合は膝痛が悪化することがあります。最初は浅い範囲から行いましょう。
Q3. 太ももだけ鍛えればよいですか?
太ももの筋肉は重要ですが、それだけでは不十分です。お尻、股関節、ふくらはぎ、体幹も膝の安定に関係します。脚全体で体を支えることを目標にしましょう。
Q4. 毎日筋トレしてもよいですか?
軽い運動であれば毎日行えることもありますが、痛みや疲労が残る場合は休息も必要です。翌日に痛みや腫れが増えない範囲で調整してください。
Q5. 筋トレで変形性膝関節症は治りますか?
筋トレで変形そのものや軟骨のすり減りが元通りになるわけではありません。ただし、筋力がつくことで膝への負担が減り、痛みや動きやすさが改善することがあります。
Q6. 筋トレ後に膝が腫れたらどうすればよいですか?
運動量が多すぎた可能性があります。いったん負荷を下げ、休息や冷却を行いましょう。腫れが繰り返す場合や強い痛みを伴う場合は、医療機関で相談してください。
まとめ
膝の筋力トレーニングは、痛みを我慢して鍛えることではありません。
太もも、お尻、股関節、ふくらはぎ、体幹を含めて、膝を支える力を段階的に高めることが大切です。
最初は寝た姿勢や椅子を使った軽い運動から始め、痛みや腫れの反応を見ながら、少しずつ負荷を上げていきます。
運動中の痛みだけでなく、運動後や翌日の状態を確認しましょう。
膝が腫れる、熱を持つ、歩けない、膝くずれや引っかかりがある場合は、筋トレを続ける前に整形外科などで原因を確認してください。
参考文献
- Kolasinski SL, et al. 2019 American College of Rheumatology/Arthritis Foundation Guideline for the Management of Osteoarthritis. Arthritis Care & Research. 2020.
- NICE. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management. NG226. 2022.
- Fransen M, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015.
- Bannuru RR, et al. OARSI guidelines for the non-surgical management of knee, hip, and polyarticular osteoarthritis. Osteoarthritis and Cartilage. 2019.
- Juhl C, et al. Impact of exercise type and dose on pain and disability in knee osteoarthritis. Arthritis & Rheumatology. 2014.
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Osteoarthritis of the Knee Evidence-Based Clinical Practice Guideline. 2021.
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。膝の痛み、腫れ、熱感、歩行困難、急な悪化がある場合は、整形外科などの医療機関へご相談ください。

