階段で膝が痛いのはなぜ?上り・下りの原因と楽にする方法
階段を上るとき、または下りるときに膝が痛む原因は一つではありません。膝蓋大腿痛、変形性膝関節症、半月板損傷、膝蓋腱障害など、年齢や痛む場所、腫れ、外傷の有無によって考える病気が異なります。
階段では、平地歩行よりも膝を深く曲げた状態で体重を支えます。上りでは体を持ち上げる筋力が必要になり、下りでは体が落ちないようにゆっくり支える筋力とバランスが必要です。そのため、平地では痛くなくても階段だけで症状が出ることがあります。
痛みを減らすためには、階段を完全に避け続けるのではなく、まず安全な上り下りの方法で負荷を調整し、その後、膝・股関節・ふくらはぎの筋力と動作を段階的に回復させることが大切です。
早めに整形外科を受診した方がよい症状
- 転倒やひねり外傷の後、体重をかけられない
- けがの後、数時間以内に膝が大きく腫れた
- 膝が引っかかり、伸ばせない状態が続く
- 膝が何度も抜ける、階段で転びそうになる
- 膝が赤く熱を持ち、発熱を伴う
- 明確な外傷がないのに、突然強い痛みで歩けなくなった
- ふくらはぎまで腫れ、胸痛や息苦しさを伴う
- 夜間や安静時にも強く痛み、徐々に悪化している
なぜ階段では膝が痛みやすいのですか?
階段では、平地歩行より膝を曲げた状態で片脚に体重がかかります。膝を曲げるほど、大腿四頭筋が強く働き、膝蓋骨と大腿骨の間や、大腿骨と脛骨の間に大きな力が加わります。
ただし、「上りは体重の何倍、下りは何倍」と一つの数字で表すことはできません。膝に加わる力は、段差の高さ、速度、体重、手すりの使用、歩き方、筋力、関節の状態などによって変わります。
階段を上るとき
上りでは、膝と股関節を伸ばして体を持ち上げる必要があります。大腿四頭筋、臀筋、ふくらはぎの筋力が不足している場合や、膝が十分に曲がらない場合に難しくなります。
階段を下りるとき
下りでは、体が急に落ちないように、大腿四頭筋がブレーキのように働きます。また、片脚で体を支えながら足を次の段へ運ぶため、バランスと動作のコントロールも必要です。
そのため、膝蓋大腿痛や変形性膝関節症がある人では、上りより下りの方がつらいことがあります。ただし、痛み方だけで病名を確定することはできません。
痛む場所から考えられる主な原因
| 主に痛む場所・症状 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| お皿の周囲・奥 | 膝蓋大腿痛、膝蓋大腿関節の変形性関節症 |
| 膝の内側 | 内側型変形性膝関節症、半月板損傷、鵞足炎、内側側副靱帯損傷 |
| 膝の外側 | 外側半月板損傷、外側型変形性膝関節症、腸脛靱帯周囲の障害 |
| お皿のすぐ下 | 膝蓋腱障害、成長期ではオスグッド病など |
| 膝の裏 | ベーカー嚢胞、半月板後方の損傷、筋腱の障害 |
| 腫れ・引っかかりを伴う | 半月板損傷、関節内遊離体、軟骨損傷、関節炎 |
| 膝崩れ・不安定感を伴う | 前十字靱帯などの靱帯損傷、筋力低下、膝蓋骨不安定症 |
階段で膝が痛む主な病気
1.膝蓋大腿痛
膝蓋大腿痛は、お皿の周囲や奥に痛みを感じる病気です。若い人やスポーツ選手にも多く、階段、スクワット、しゃがみ込み、長時間座った後などで痛みます。
原因を「お皿がずれている」「太ももの筋肉が弱い」だけで説明することはできません。練習量や活動量、膝と股関節の筋力、動作、痛みへの不安などを含めて評価します。
治療の基本は、患者教育と、膝を中心とした運動療法です。必要に応じて股関節周囲の運動、テーピング、足底板などを組み合わせます。
2.変形性膝関節症
中高年以降では、変形性膝関節症が代表的な原因です。内側、外側、お皿と大腿骨の間のいずれにも変化が起こる可能性があります。
- 立ち上がりや歩き始めが痛い
- 階段、特に下りで痛い
- 膝が腫れる、水がたまる
- 曲げ伸ばしがしにくい
- O脚やX脚が目立つ
治療の中心は、個人に合わせた運動療法と、必要な人への体重管理です。薬、注射、装具などは、運動や日常生活を続けるための補助として使います。
3.半月板損傷
膝をひねった後から階段で痛み、関節の内側または外側に限局した痛み、腫れ、引っかかりを伴う場合は、半月板損傷を考えます。
半月板損傷があっても、すべて手術が必要になるわけではありません。ただし、膝が引っかかって伸びないロッキングがある場合は早めの評価が必要です。
4.膝蓋腱障害・大腿四頭筋腱障害
ジャンプ、ダッシュ、スクワットを繰り返す人では、膝蓋骨の下にある膝蓋腱や、膝蓋骨の上にある大腿四頭筋腱が痛むことがあります。
階段を力強く上る動作で痛みが出やすく、押すと腱の限られた場所が痛むことがあります。
5.けがや手術後の筋力低下・可動域制限
前十字靱帯損傷、半月板手術、骨折、人工膝関節手術などの後では、痛みが軽くなっても、大腿四頭筋力、膝の可動域、片脚でのバランスが十分に戻っていない場合があります。
階段は、平地歩行より高い筋力と動作能力を必要とするため、日常生活の最後まで難しさが残りやすい動作です。
術後の荷重や膝を曲げる制限は手術内容によって異なるため、自己判断で段差運動を進めず、担当医や理学療法士の指示を優先してください。
上りと下りの痛み方は診断の手がかりになりますか?
| 痛みが出る場面 | 考える手がかり |
|---|---|
| 上りで体を持ち上げると痛い | 膝・股関節の筋力不足、膝蓋大腿部や膝蓋腱の痛み、可動域制限 |
| 下りでゆっくり支えると痛い | 膝蓋大腿痛、変形性膝関節症、大腿四頭筋の制御不足 |
| ひねると関節のすき間が痛い | 半月板損傷など |
| 階段の途中で力が抜ける | 靱帯不安定性、筋力低下、痛みによる反射的な脱力 |
この表はあくまで手がかりです。「下りで痛いから膝蓋大腿痛」「上りで痛いから筋力不足」と一つの症状だけで断定することはできません。
痛いときに階段を安全に使う方法
手すりを使う
手すりは、転倒を防ぎ、体を安定させるために有効です。痛みがある時期は、手すりを使うことを「筋力が弱くなるから良くない」と考える必要はありません。
階段の照明、滑りやすい履物、段差に置かれた物にも注意してください。
一段ずつ上り下りする
痛みが強いときは、左右交互に一段ずつ進む通常の方法ではなく、両足を同じ段にそろえる方法を使います。
- 上り:痛くない方・症状の軽い方の脚から上がり、痛い脚を同じ段へそろえる
- 下り:痛い脚から下ろし、痛くない方の脚を同じ段へそろえる
覚え方は「良い脚から上る、痛い脚から下りる」です。これは痛みが強い時期の一時的な方法であり、症状と筋力が改善したら通常の交互昇降へ戻していきます。
杖を使用する場合
杖は、基本的に痛い膝と反対側の手で持ちます。手すりがある場合は、片手で手すりを持ち、反対の手で杖を使います。
- 上り:痛くない脚、痛い脚、杖の順
- 下り:杖、痛い脚、痛くない脚の順
手術後や荷重制限がある場合は方法が異なることがあるため、担当医療者から指導を受けてください。
足を段にしっかり乗せる
つま先だけを段に乗せると不安定になります。可能な範囲で足底を段へ乗せ、膝とつま先をおおむね同じ方向へ向けます。
足を段につけたまま体だけをひねらず、方向を変えるときは小さく足を踏み替えます。
急いで下りない
痛みや筋力低下があると、最後の数段で疲れて動作が崩れることがあります。手すりを使い、段差を見ながら、一定の速度で下りてください。
階段を楽にするための運動
階段の改善には、大腿四頭筋だけでなく、臀筋、ふくらはぎ、バランス、膝の可動域を段階的に整えることが重要です。
最初は「軽い痛みで、運動後に落ち着き、翌日まで明らかに悪化しない」範囲で始めます。腫れが増える、びっこが出る、翌日まで痛みが強く残る場合は、回数、深さ、段差を下げてください。
1.椅子からの立ち上がり
- 安定した椅子に浅く座ります。
- 両足を肩幅程度に置きます。
- 体を少し前へ傾け、両足で床を押して立ちます。
- 膝を急に曲げず、ゆっくり座ります。
目安:6~10回を1~2セットから開始します。
簡単にする方法:高い椅子を使う、肘掛けや机へ軽く手をつく。
難しくする方法:手を使わない、少し低い椅子にする、ゆっくり座る。ただし、痛みを我慢して低くしすぎないでください。
2.低い段差へのステップアップ
- 手すりや安定した台の近くで行います。
- 痛い側の足を低い段へ乗せます。
- 膝とつま先を同じ方向へ保ち、ゆっくり体を持ち上げます。
- 反対の足を段へそろえ、ゆっくり戻ります。
目安:左右6~10回を1~2セット。
痛みが出る場合は、段差を低くする、手すりへかける体重を増やす、回数を減らします。
3.ゆっくり座る練習
階段を下りる動作では、膝が曲がりながら体を支える力が必要です。
- 少し高めの椅子の前に立ちます。
- 手すりや机へ軽く手をつきます。
- 3秒程度かけて、ゆっくり椅子へ座ります。
- 立ち上がるときは、両脚を使います。
目安:5~8回を1~2セット。
痛みが強い場合は椅子を高くしてください。慣れてから、低い段差でのステップダウンへ進みます。
4.かかと上げ
- 手すりや椅子の背を持って立ちます。
- 両足のかかとをゆっくり上げます。
- ゆっくり下ろします。
目安:10~15回を1~2セット。
ふくらはぎの筋力は、階段の上りで体を持ち上げる動作や、下りでの安定に関係します。
5.膝の曲げ伸ばし
膝が十分に伸びない、または曲がらない場合は、筋力だけを鍛えても階段が難しいことがあります。
仰向けでかかとを滑らせる運動や、膝の下へタオルを入れて膝を伸ばす運動を、痛みのない範囲で行います。
階段を避けた方がよいですか?
痛みが強い増悪期には、不要な階段を一時的に減らし、エレベーターや手すりを使うことは合理的です。
一方、痛みを恐れて長期間まったく階段を使わないと、筋力と自信が低下し、さらに階段が難しくなることがあります。
症状が落ち着いたら、低い段差、少ない回数、手すりありの状態から練習し、徐々に通常の階段へ戻します。
自宅での痛みへの対処
- 痛みが強い日は、階段の往復回数を減らす
- 腫れや熱感がある場合は、布で包んだ保冷剤で10~15分程度冷やす
- 長時間座った後は、すぐ階段へ向かわず軽く膝を動かす
- 滑りにくく安定した靴を履く
- 必要に応じて手すり、杖、サポーターを利用する
原因不明の大きな腫れ、強い熱感、ロッキング、不安定感がある場合は、自宅運動を続ける前に診察を受けてください。
整形外科ではどのように調べますか?
問診と診察
上りと下りのどちらで痛むか、痛む場所、腫れ、引っかかり、膝崩れ、外傷、歩ける距離などを確認します。
診察では、膝の腫れ、可動域、圧痛、膝蓋骨、半月板、靱帯、筋力、片脚立ち、ステップ動作などを評価します。
X線検査
中高年の慢性的な膝痛では、変形性膝関節症や骨の状態を確認するため、X線を行うことがあります。
MRI検査
すべての階段痛にMRIが必要なわけではありません。ロッキング、外傷後の大きな腫れ、靱帯損傷、半月板・骨軟骨病変などが疑われる場合に検討します。
よくある質問
階段の下りだけ痛いのはなぜですか?
下りでは、大腿四頭筋が体重をゆっくり支えるブレーキとして働き、片脚でのバランスも必要です。膝蓋大腿痛、変形性膝関節症、筋力や動作の問題などで痛みが出ます。
階段の上りだけ痛い場合は筋力不足ですか?
筋力不足は一つの要因ですが、それだけとは限りません。膝蓋大腿痛、膝蓋腱障害、変形性膝関節症、可動域制限などでも上りが痛くなります。
痛くても運動を続けてよいですか?
軽い痛みで、運動後に落ち着き、翌日に明らかな悪化がなければ、負荷を調整して続けられる場合があります。びっこ、腫れ、強い痛み、膝崩れが出る場合は中止して評価を受けてください。
スクワットはしてもよいですか?
浅い範囲で症状が悪化しなければ、筋力トレーニングとして役立ちます。深く曲げるほど負荷は大きくなるため、椅子からの立ち上がりや浅いスクワットから始めます。
サポーターをつければ階段が楽になりますか?
安心感や痛みの軽減が得られる場合がありますが、すべての人に同じ効果があるわけではありません。サポーターだけで筋力や動作の問題が改善するわけではないため、運動療法と組み合わせます。
膝がポキポキ鳴ります。軟骨がすり減っていますか?
痛みのない音は健康な膝にもみられます。音だけで軟骨の状態は判断できません。痛み、腫れ、引っかかり、動かしにくさを伴う場合は受診してください。
どのくらいで改善しますか?
軽い負荷増加による痛みは、活動調整と運動で数週間かけて改善することがあります。膝蓋大腿痛や変形性膝関節症では、運動療法を少なくとも6~12週間程度続けながら評価することがあります。
ただし、半月板損傷、靱帯損傷、骨軟骨病変、進行した関節症では経過が異なります。「4週間で必ず治る」と一律には判断できません。
階段がつらければ手術が必要ですか?
階段痛だけで手術が必要とは限りません。多くの患者さんでは、運動療法、体重管理、薬、注射、装具などから治療します。生活への影響が大きく、適切な保存療法で改善しない場合に手術を検討します。
まとめ
階段で膝が痛む原因には、膝蓋大腿痛、変形性膝関節症、半月板損傷、腱障害、けがや手術後の筋力低下などがあります。
上りでは体を持ち上げる筋力、下りでは体をゆっくり支える筋力とバランスが必要です。ただし、上り・下りの痛み方だけで病名を決めることはできません。
痛みが強い時期は、手すりを使い、「良い脚から上る、痛い脚から下りる」方法で負荷を減らします。症状が落ち着いたら、椅子からの立ち上がり、低い段差へのステップアップ、ゆっくり座る練習などを段階的に行います。
大きな腫れ、ロッキング、膝崩れ、荷重不能、発熱などがある場合は、運動だけで様子を見ず整形外科を受診してください。
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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。

