膝の診察と検査|整形外科で何を調べる?X線・MRI・超音波の違い
膝の痛みで整形外科を受診すると、「まず何を聞かれるのか」「レントゲンだけで分かるのか」「MRIは必要なのか」「水を抜くのはどんな時か」と不安になることがあります。
膝の診察では、画像だけで病名を決めるわけではありません。痛みの場所、きっかけ、腫れ方、歩けるか、膝が伸びるか、膝崩れや引っかかりがあるかなどを確認し、診察所見と必要な検査を組み合わせて原因を考えます。
同じ「膝が痛い」でも、変形性膝関節症、半月板損傷、靱帯損傷、膝蓋大腿痛、膝軟骨下不全骨折、痛風・偽痛風、感染症など、必要な検査や治療は異なります。
この記事では、膝の診察と検査の流れ、X線・MRI・超音波・血液検査・関節液検査で分かること、検査を受ける前に知っておきたいポイントを解説します。
検査を待たず、早めに医療機関へ相談した方がよい症状
- 転倒・スポーツ外傷後に体重をかけられない
- 膝や脚に明らかな変形がある
- けがの後、数時間以内に膝が大きく腫れた
- 膝が引っかかり、完全に伸ばせない
- 膝が何度も抜ける、ぐらつく
- 膝が赤く熱を持ち、発熱や強いだるさを伴う
- 足先が冷たい、白い、紫色になる、しびれる、動かしにくい
- 片脚のふくらはぎまで腫れ、胸痛や息苦しさを伴う
- 人工膝関節や手術後に、痛み・腫れ・熱感が急に悪化した
膝の診察はどのように進みますか?
整形外科では、一般的に次の順番で膝を評価します。
- 問診で症状と経過を確認する
- 歩き方、腫れ、可動域、痛む場所を診る
- 半月板、靱帯、膝蓋骨、筋力、神経・血流を診察する
- 必要に応じてX線、超音波、MRIなどの画像検査を行う
- 感染、痛風・偽痛風、炎症性疾患が疑われる場合は血液検査や関節液検査を行う
- 診断だけでなく、生活・仕事・スポーツに合わせた治療方針を決める
最初からすべての検査を行うわけではありません。疑われる病気、年齢、外傷の有無、腫れ方、診察所見によって必要な検査を選びます。
問診で確認すること
問診は、膝痛の原因を絞るうえで非常に重要です。検査画像よりも、発症のきっかけや痛み方が診断の手がかりになることがあります。
1.いつから痛いか
- 今日、急に痛くなった
- 数日前から痛い
- 数週間から数か月続いている
- 何年も前から繰り返している
急な痛みでは、外傷、痛風・偽痛風、感染症、内側半月板後根断裂、膝軟骨下不全骨折などを考えます。慢性的な痛みでは、変形性膝関節症、膝蓋大腿痛、腱障害、変性半月板損傷などを考えます。
2.きっかけがあったか
- 転倒した
- スポーツでひねった
- 着地や方向転換で痛めた
- 階段やしゃがみ込みで突然痛くなった
- 特にきっかけがない
スポーツ外傷では靱帯損傷や半月板損傷、膝蓋骨脱臼などを考えます。中高年で、階段やしゃがみ込みをきっかけに突然後内側が痛くなった場合は、内側半月板後根断裂や膝軟骨下不全骨折も考えます。
3.どこが痛いか
| 痛む場所 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 膝の内側 | 変形性膝関節症、内側半月板損傷、内側半月板後根断裂、鵞足炎など |
| 膝の外側 | 外側半月板損傷、腸脛靱帯症候群、外側型関節症など |
| 膝の前・お皿周囲 | 膝蓋大腿痛、膝蓋腱障害、膝蓋骨不安定症など |
| 膝の裏 | ベーカー嚢胞、半月板後方の損傷、筋腱の障害など |
| ふくらはぎまで痛い・腫れる | ベーカー嚢胞破裂、深部静脈血栓症、筋損傷、腰からの神経痛など |
4.腫れ方を確認する
膝の腫れは、原因を考える重要な手がかりです。
- 外傷後、数時間以内に大きく腫れた:靱帯損傷、膝蓋骨脱臼、骨軟骨損傷、骨折など
- 運動後や夕方に腫れる:変形性膝関節症、半月板損傷、滑膜炎など
- 赤く熱を持ち急に腫れた:感染症、痛風、偽痛風など
- 膝裏やふくらはぎまで腫れる:ベーカー嚢胞、血栓症など
5.膝が引っかかる・抜けるか
膝がロックして伸びない場合は、転位した半月板や関節内遊離体などを考えます。
方向転換で膝が抜ける場合は、前十字靱帯損傷、膝蓋骨不安定症、半月板損傷、筋力低下などを考えます。
診察で確認すること
歩き方
診察室に入るときの歩き方から、痛みの強さや荷重のかけ方が分かることがあります。
- びっこを引いているか
- 膝を伸ばしきれずに歩いているか
- 膝崩れがあるか
- 足先や股関節の向きに大きな偏りがあるか
- 杖や手すりが必要か
腫れ・熱感・赤み
膝に水がたまっているか、熱を持っているか、赤みがあるかを確認します。
赤く熱を持ち、発熱を伴う膝は、感染症や急性炎症を疑います。腫れがある場合は、関節水腫、血腫、滑膜炎、ベーカー嚢胞などを考えます。
可動域
膝がどこまで伸びるか、どこまで曲がるかを確認します。
- 完全に伸びない
- 深く曲げられない
- 途中で引っかかる
- 痛みで動かせない
- 反対側と比べて硬い
膝が完全に伸びない場合は、ロッキング、腫れ、痛み、筋肉の緊張、術後の拘縮などを区別します。
圧痛
どこを押すと痛いかを確認します。
- 関節のすき間:半月板損傷、関節症など
- 膝蓋骨周囲:膝蓋大腿痛、膝蓋骨不安定症など
- 膝蓋腱:膝蓋腱障害など
- 鵞足部:鵞足炎など
- 骨の一点:骨ストレス障害、骨折、骨軟骨病変など
半月板の診察
半月板損傷が疑われる場合、関節裂隙の圧痛、曲げ伸ばしやひねりでの痛み、引っかかりを確認します。
McMurrayテストやThessalyテストなどを行うことがありますが、どれか一つのテストだけで診断が確定するわけではありません。症状、診察、画像検査を組み合わせて判断します。
靱帯の診察
前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯などの安定性を確認します。
- Lachmanテスト
- 前方引き出しテスト
- 後方引き出しテスト
- 内反・外反ストレステスト
- Pivot shiftテスト
急性期は痛みや腫れで正確に評価しにくいことがあります。その場合は、再診時に再評価したり、MRIを併用したりします。
膝蓋骨の診察
膝蓋骨の動き、痛み、不安定性を確認します。
- 膝蓋骨周囲の圧痛
- 膝蓋骨の不安定感
- 脱臼しそうな不安感
- 膝蓋骨と大腿骨の間の痛み
筋力・バランス・動作
膝痛では、筋力や動作も重要です。
- 椅子から立ち上がれるか
- 片脚立ちが安定しているか
- 浅いスクワットで膝が内側へ入るか
- 階段や段差で痛むか
- 大腿四頭筋へ力が入るか
痛みのある膝では、筋力そのものが落ちているだけでなく、痛みや腫れによって筋肉に力が入りにくくなることがあります。
腰・股関節・足首の確認
膝の痛みでも、股関節や腰から痛みが出ていることがあります。必要に応じて、股関節の可動域、腰からの神経症状、足首の柔軟性も確認します。
X線検査で分かること
X線は、膝の検査で最も基本となる画像検査です。骨の形、関節のすき間、骨棘、骨折、アライメントなどを確認できます。
X線で分かりやすいもの
- 骨折
- 変形性膝関節症
- 関節のすき間の狭さ
- 骨棘
- O脚・X脚の傾向
- 膝蓋骨の位置や関節症
- 一部の骨腫瘍や骨病変
X線だけでは分かりにくいもの
- 半月板損傷
- 前十字靱帯損傷
- 軟骨損傷の詳細
- 初期の膝軟骨下不全骨折
- 骨ストレス障害の初期
- 滑膜炎の詳細
慢性的な膝痛では、まずX線を行うことが多いです。X線で大きな異常がなくても、痛みが強い、症状が続く、半月板や靱帯、骨内部の病変が疑われる場合は、MRIなどを検討します。
MRI検査で分かること
MRIは、半月板、靱帯、軟骨、骨の内部、滑膜、腫瘍性病変などを評価するのに役立ちます。
MRIを検討することがある症状
- 外傷後に前十字靱帯や半月板損傷が疑われる
- 膝がロックして伸びない
- 膝蓋骨脱臼後に骨軟骨損傷が疑われる
- X線では分からない強い荷重時痛がある
- 内側半月板後根断裂や膝軟骨下不全骨折が疑われる
- 骨ストレス障害が疑われる
- 治療しても原因不明の痛みが続く
- 腫瘍や感染などを疑う症状がある
ただし、MRIで異常が見つかっても、それが現在の痛みの原因とは限りません。年齢とともに半月板や軟骨の変化が画像で見えることがあり、症状と一致するかを確認します。
MRIは早く撮った方がよいですか?
急性外傷後の靱帯損傷、ロッキング、膝蓋骨脱臼後の骨軟骨損傷、膝軟骨下不全骨折、骨ストレス障害などが疑われる場合は、早めのMRIが治療方針に役立つことがあります。
一方、典型的な変形性膝関節症や軽い慢性膝痛では、最初からMRIが必要でないこともあります。診察とX線を踏まえて判断します。
超音波検査で分かること
超音波検査は、膝の表面に近い組織や関節液をリアルタイムで確認できる検査です。
超音波で評価しやすいもの
- 関節液の有無
- 滑膜炎
- ベーカー嚢胞
- 膝蓋腱・大腿四頭筋腱
- 滑液包炎
- 筋肉や腱の損傷
- 注射や穿刺の位置確認
超音波は被ばくがなく、診察室で行いやすい検査です。一方、半月板の内部や前十字靱帯、骨内部の病変などはMRIの方が適していることがあります。
CT検査で分かること
CTは、骨の形を詳しく見る検査です。
- 複雑な骨折
- 関節内骨折
- 骨片の位置
- 人工関節や骨切り術前後の骨の評価
- 一部の骨腫瘍や骨病変
CTは骨の詳細評価に優れていますが、半月板や靱帯の評価はMRIの方が適しています。放射線被ばくがあるため、必要性を考えて行います。
血液検査で分かること
膝の痛みで血液検査を行うのは、主に感染、炎症性疾患、痛風などを考える場合です。
血液検査を考える場面
- 発熱がある
- 膝が赤く熱を持って大きく腫れている
- 複数の関節が痛い
- 朝のこわばりが長い
- 痛風・偽痛風が疑われる
- 術後や人工関節後に感染が疑われる
白血球数、CRP、赤沈、尿酸値、リウマチ関連項目などを、症状に応じて確認します。
ただし、血液検査だけで感染性関節炎を完全に否定できるわけではありません。疑わしい場合は関節液検査が重要です。
関節液検査で分かること
膝に水がたまっている場合、必要に応じて関節液を採取します。これを関節穿刺といいます。
関節液検査で確認すること
- 感染の有無
- 痛風・偽痛風の結晶
- 血液が混じっているか
- 炎症の程度
- 関節液の性状
膝が急に赤く熱を持って腫れ、発熱や強い痛みがある場合は、感染性関節炎を除外することが重要です。感染が疑われる場合は、関節液の細菌検査などを行います。
膝の水は抜くと癖になりますか?
膝の水を抜いたから癖になるわけではありません。水が繰り返したまるのは、関節内に炎症や病変が残っているためです。
ただし、すべての関節水腫で毎回抜く必要があるわけではありません。張りが強い場合、感染や痛風・偽痛風を調べる必要がある場合、診断や治療に必要な場合に行います。
検査で異常がないと言われたのに痛いのはなぜですか?
検査で大きな異常がないと言われても、痛みが「気のせい」とは限りません。
考えられる理由には、次のようなものがあります。
- X線では分からない軟部組織や骨内部の病変がある
- 画像上の変化が軽くても痛みが強い
- 痛みの原因が膝以外、たとえば腰や股関節にある
- 腫れや筋力低下、動作の問題が痛みを悪化させている
- 睡眠不足や不安、長引く痛みによって痛みを感じやすくなっている
画像所見は診断の一部です。症状、診察、生活への影響を合わせて治療方針を考えます。
検査を受ける前に準備しておくとよいこと
受診前に次の内容をメモしておくと、診察がスムーズになります。
- いつから痛いか
- きっかけはあったか
- どこが痛いか
- 何をすると痛いか
- 歩ける距離
- 腫れ、熱感、赤みの有無
- 膝が引っかかる、抜ける、音がするか
- 過去のけがや手術歴
- 内服薬、持病、アレルギー
- スポーツ、仕事、生活で困っていること
痛む場所をスマートフォンで写真に印をつける、症状が出る動作を安全な範囲で動画に残すことも参考になります。
検査ごとの注意点
X線検査
金属類を外す場合があります。妊娠の可能性がある場合は、検査前に必ず伝えてください。
MRI検査
MRIは強い磁場を使います。心臓ペースメーカー、人工内耳、体内金属、刺青、閉所恐怖症などがある場合は、事前に伝えてください。
検査中は大きな音がします。一定時間、膝を動かさずにいる必要があります。
関節穿刺・注射
感染予防のため、皮膚を消毒して行います。抗凝固薬を服用している場合、糖尿病、免疫を抑える薬の使用、人工関節がある場合は、事前に伝えてください。
検査結果を聞くときのポイント
検査結果を聞くときは、画像の異常名だけでなく、次の点を確認すると治療方針が分かりやすくなります。
- この所見は今の痛みと一致するか
- 放置してよい変化か、治療が必要な変化か
- 運動や仕事で制限する動作はあるか
- どのくらいで再評価するか
- リハビリ、薬、注射、装具、手術のどれを考えるか
- 悪化したときに受診すべき症状は何か
MRIで半月板損傷や軟骨変化が見つかっても、それだけで手術が決まるわけではありません。痛み、年齢、活動性、病変の種類、生活への影響を合わせて治療を選びます。
よくある質問
膝が痛いとき、必ずレントゲンを撮りますか?
必ずではありません。外傷後の強い痛み、歩けない、変形がある、慢性的な膝痛が続く、中高年の関節症が疑われる場合などではX線を行うことが多いです。
レントゲンで異常がなければ大丈夫ですか?
X線で分かるのは主に骨や関節のすき間です。半月板、靱帯、軟骨、骨内部の病変は分かりにくいことがあります。症状が続く場合は、診察所見に応じてMRIなどを検討します。
MRIを撮れば原因は必ず分かりますか?
MRIは有用ですが、すべての痛みの原因が必ず分かるわけではありません。また、MRIで見つかった所見が痛みの原因とは限りません。症状と診察所見に合うかを確認します。
膝に水がたまったら、必ず抜きますか?
必ずではありません。張りが強い場合、感染や痛風・偽痛風を調べる必要がある場合、診断や治療に必要な場合に検討します。
血液検査で膝の病気は分かりますか?
血液検査は、感染、炎症性疾患、痛風などを考える場合に役立ちます。変形性膝関節症や半月板損傷の診断は、血液検査だけではできません。
超音波とMRIはどちらがよいですか?
目的が違います。超音波は関節液、ベーカー嚢胞、腱、滑液包などを診るのに便利です。MRIは半月板、靱帯、軟骨、骨内部の病変を見るのに向いています。
画像で変形性膝関節症と言われました。痛みの原因は全部それですか?
必ずしもそうではありません。画像上の関節症があっても、半月板損傷、膝軟骨下不全骨折、腰や股関節からの関連痛などが同時に関係している場合があります。
検査をたくさん受けた方が安心ですか?
検査は多ければよいわけではありません。診断や治療方針を変える可能性がある検査を、適切な順番で行うことが大切です。
まとめ
膝の診察では、画像だけでなく、問診、歩き方、腫れ、可動域、痛む場所、半月板・靱帯・膝蓋骨・筋力の評価を組み合わせて原因を考えます。
X線は骨や関節のすき間を見る基本的な検査です。MRIは半月板、靱帯、軟骨、骨内部の病変を評価するのに役立ちますが、全員に最初から必要なわけではありません。
超音波は関節液、ベーカー嚢胞、腱、滑液包などの評価に役立ちます。発熱や赤く熱い腫れがある場合は、血液検査や関節液検査で感染や痛風・偽痛風を確認します。
大切なのは、検査結果だけでなく、症状と生活への影響を合わせて治療方針を決めることです。受診前には、痛みの場所、きっかけ、腫れ、引っかかり、膝崩れ、困っている動作を整理しておくと、診察がよりスムーズになります。
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- 日本整形外科学会. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023.
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。

