ふくらはぎの痛みは、筋肉痛や肉離れなど比較的よくある原因で起こる一方、深部静脈血栓症、動脈の血流障害、急性コンパートメント症候群など、早急な対応が必要な病気でも起こります。

スポーツ中に突然痛くなったのか、外傷がないのに片脚だけ腫れたのか、歩くと毎回同じ距離で痛くなり休むと治るのかによって、考える原因が変わります。

「つま先を上げて痛ければ血栓」といったセルフテストだけで、深部静脈血栓症を診断したり否定したりすることはできません。原因がはっきりしない片脚の腫れや痛みは、自己判断せず医療機関で確認しましょう。

すぐに医療機関を受診した方がよい症状

  • 片脚だけが急に腫れ、熱を持ち、赤くなっている
  • ふくらはぎの痛みに、突然の息苦しさ、胸痛、血の混じったせき、失神を伴う
  • 強い痛みに対して見た目のけがが軽く、ふくらはぎが硬く張っている
  • 足のしびれや麻痺が進み、足先が冷たい・白い・紫色になっている
  • スポーツ中に「バチン」と音がし、つま先立ちや歩行ができない
  • 転倒・衝突後から急激に腫れ、体重をかけられない
  • 赤み、熱感、発熱、皮膚の傷を伴う
  • 安静にしていても強く痛み、夜間に悪化する

痛み方から考えられる主な原因

痛み方・きっかけ 考えられる主な原因
ダッシュやジャンプ中に突然痛んだ 腓腹筋・ヒラメ筋の肉離れ
かかと寄りで音がし、つま先立ちできない アキレス腱断裂
片脚だけ腫れ、熱感や赤みがある 深部静脈血栓症、感染症、破裂したベーカー嚢胞など
歩くと毎回痛み、休むと数分で治る 末梢動脈疾患、腰部脊柱管狭窄症など
腰や臀部からしびれが広がる 腰椎由来の神経痛
夜中に突然筋肉が硬くなり数分で治る こむら返り
運動時だけ強く張り、休むと治る 慢性労作性コンパートメント症候群など

症状には重なりがあり、痛み方だけで病名を確定することはできません。特に、筋肉の肉離れ、深部静脈血栓症、破裂したベーカー嚢胞は、痛みや腫れが似ることがあります。

ふくらはぎが痛む主な原因

1.ふくらはぎの肉離れ

ふくらはぎの肉離れは、腓腹筋やヒラメ筋が急に引き伸ばされたり、強く収縮したりして損傷するけがです。ダッシュ、ジャンプ、テニスやサッカーの切り返しなどで起こります。

  • 運動中に突然鋭く痛んだ
  • 後ろから蹴られたように感じた
  • 押すと限られた場所が痛い
  • 腫れや内出血が出る
  • 歩行やつま先立ちで痛む

腓腹筋損傷は膝を伸ばした状態で痛みやすく、ヒラメ筋損傷は膝を曲げた状態の負荷で痛むことがありますが、自己検査だけで正確に損傷部位を決めることは困難です。

治療の考え方

急性期は、痛みを悪化させる運動を減らし、必要に応じて冷却や軽い圧迫を行います。その後は、可動域、筋力、片脚でのつま先立ち、走行、ジャンプなどを段階的に回復させます。

競技復帰の時期は、損傷した筋肉、重症度、競技内容によって異なります。「何日休めばよい」と一律には決められません。痛みが消えただけでなく、筋力と競技動作が回復していることを確認します。

2.運動後の筋肉痛

普段より強い運動や慣れない運動の後、数時間から翌日にかけて両側または広い範囲が痛くなる場合は、遅発性筋肉痛が考えられます。

  • 運動直後ではなく、翌日から痛む
  • 筋肉全体が重だるい
  • 数日かけて徐々に軽くなる
  • 大きな腫れや内出血はない

軽い活動を続けながら回復を待てることが多いですが、片脚だけ著しく腫れる、尿が褐色になる、強い筋力低下がある場合は、一般的な筋肉痛ではない可能性があります。

3.アキレス腱障害・アキレス腱断裂

ふくらはぎの筋肉はアキレス腱を介してかかとの骨につながっています。そのため、アキレス腱の病気でも、ふくらはぎ下部からかかとの上に痛みを感じることがあります。

アキレス腱障害

  • かかとの少し上が痛む
  • 朝の最初の数歩が痛い
  • 運動開始時に痛み、動くと一時的に軽くなる
  • 腱が太く感じる

単なる「炎症」だけではなく、腱が繰り返す負荷へ適応できなくなった状態が関係します。治療の中心は、運動量の調整と段階的な筋力トレーニングです。

アキレス腱断裂

  • ふくらはぎやかかとの後ろで「バチン」と音がした
  • 後ろから蹴られたように感じた
  • 歩きにくい
  • 片脚でつま先立ちできない

アキレス腱が完全に切れていても、足首を少し動かせる場合があります。「動くから断裂ではない」とは判断できません。疑われる場合は早めに整形外科を受診してください。

4.こむら返り

こむら返りは、ふくらはぎの筋肉が突然、自分の意思と関係なく強く収縮する状態です。多くは数秒から数分で軽くなります。

原因が明確でないことも多く、運動、筋疲労、妊娠、脱水、薬の影響、神経や血管の病気などが関係する場合があります。「ミネラル不足だけ」が原因とは限りません。

  • 筋肉が急に硬く盛り上がる
  • 夜間や運動中に起こる
  • 数分で治るが、しばらく痛みが残る

発作中は、膝を伸ばし、足首をゆっくり反らしてふくらはぎを伸ばすと軽くなることがあります。頻繁に繰り返す、筋力低下やしびれを伴う、薬を変更してから増えた場合は医療機関へ相談してください。

5.深部静脈血栓症

深部静脈血栓症は、脚の深い静脈に血のかたまりができる病気です。血栓の一部が肺へ移動すると、肺塞栓症を起こし、命に関わることがあります。

  • 片脚だけが腫れる
  • 原因となるけががないのに痛い
  • 皮膚が熱を持つ
  • 赤みや色の変化がある
  • ふくらはぎや太ももを押すと痛い

手術や入院後、長期間の安静、長時間移動、がん、妊娠・産後、女性ホルモン製剤、過去の血栓症などが危険因子になります。ただし、明らかな危険因子がなくても起こります。

セルフテストでは判断できません。
足首を反らして痛みが出るか確認する方法などでは、深部静脈血栓症を診断したり否定したりできません。診察、臨床確率、血液検査、静脈超音波などを組み合わせて評価します。

突然の息苦しさ、深呼吸で悪化する胸痛、血の混じったせき、動悸、失神がある場合は、肺塞栓症の可能性があるため、直ちに救急要請してください。

6.破裂したベーカー嚢胞

膝裏にあるベーカー嚢胞が破裂すると、関節液がふくらはぎへ流れ、急な痛みや腫れを起こすことがあります。

深部静脈血栓症と症状が似ており、見た目だけでは区別できません。膝裏のふくらみがあった人に急なふくらはぎの腫れが出た場合でも、「嚢胞が破れただけ」と自己判断しないことが大切です。

膝裏の痛みについて詳しく見る

ベーカー嚢胞について詳しく見る

7.末梢動脈疾患

末梢動脈疾患は、脚へ血液を送る動脈が狭くなったり詰まったりする病気です。代表的な症状は間欠性跛行です。

  • 歩くとふくらはぎが痛む、重くなる、つる
  • 毎回ほぼ同じ距離や負荷で症状が出る
  • 立ち止まると数分で軽くなる
  • 歩き始めると再び症状が出る

喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症、腎臓病、加齢などが危険因子になります。

安静時にも足が痛む、足の傷が治りにくい、足が冷たい、色が変わる場合は、血流障害が進んでいる可能性があります。突然足が強く痛み、冷たく白くなる場合は緊急受診が必要です。

8.腰からの神経痛・脊柱管狭窄症

腰椎の神経が圧迫されると、腰や臀部から、太もも、ふくらはぎ、足にかけて痛みやしびれが広がることがあります。

  • 電気が走るような痛みがある
  • しびれを伴う
  • 腰や臀部にも痛みがある
  • 歩くと悪化し、前かがみや座位で軽くなる
  • 足首や足指に力が入りにくい

排尿・排便の異常、会陰部のしびれ、急速に進む筋力低下がある場合は、緊急の評価が必要です。

9.急性コンパートメント症候群

ふくらはぎの筋肉は、筋膜で囲まれたいくつかの区画に分かれています。骨折、強い打撲、筋肉内の出血などによって区画内の圧が急激に上がると、筋肉や神経への血流が障害されます。

  • けがの程度に比べて非常に強い痛みがある
  • 時間とともに急速に悪化する
  • ふくらはぎが硬く張っている
  • 足首や足指を動かすと強く痛む
  • しびれや感覚低下が進む

急性コンパートメント症候群は緊急手術が必要になる病気です。しびれや麻痺は進行した段階で現れるため、それを待たずに受診する必要があります。

10.慢性労作性コンパートメント症候群

運動時に下腿の筋区画内圧が上がり、ふくらはぎやすねに痛み、張り、しびれが出る病気です。

  • 走り始めて一定時間で症状が出る
  • 運動を中止すると比較的早く軽くなる
  • 同じ負荷で繰り返す
  • 張り、しびれ、足の動かしにくさを伴うことがある

肉離れ、疲労骨折、血流障害などとの区別が必要です。

11.感染症・その他の原因

皮膚の傷から細菌が入る蜂窩織炎では、ふくらはぎが赤く腫れ、熱を持ち、発熱を伴うことがあります。

そのほか、疲労骨折、骨や軟部組織の腫瘍、薬の副作用、炎症性疾患なども原因になります。原因不明の痛みが長く続く、夜間に悪化する、しこりが大きくなる場合は診察を受けてください。

歩くとふくらはぎが痛む場合

歩行時のふくらはぎの痛みは、血流障害だけでなく、筋肉・腱の障害、腰部脊柱管狭窄症、慢性労作性コンパートメント症候群などでも起こります。

症状の特徴 考える手がかり
立ち止まるだけで数分以内に軽くなる 末梢動脈疾患
前かがみや座位で軽くなる 腰部脊柱管狭窄症
運動中に張りやしびれが出て、休むと軽くなる 慢性労作性コンパートメント症候群
押すと局所的に痛く、つま先立ちで悪化する 筋肉・アキレス腱の障害

自宅でできる対処

危険な症状がなく、運動中の軽い肉離れや使い過ぎが疑われる場合は、次のように対処します。

  • 痛みを強くする走行、ジャンプ、急な方向転換を控える
  • 腫れや熱感がある場合は、布で包んだ保冷剤で10~15分程度冷やす
  • きつすぎない弾性包帯などで軽く圧迫する
  • 脚を少し高くして休む
  • 痛みが落ち着いたら、歩行、可動域、筋力を段階的に戻す

圧迫後にしびれ、足の冷感、皮膚の色の変化が出た場合は、すぐに圧迫を外してください。

片脚の原因不明の腫れがあるときは、強く揉まないでください。
深部静脈血栓症、破裂したベーカー嚢胞、出血、感染などの可能性があります。診断がつくまでは強いマッサージや無理なストレッチを避けましょう。

医療機関ではどのような検査をしますか?

診察

痛みが始まったきっかけ、片脚か両脚か、腫れ、熱感、皮膚の色、筋肉・腱の圧痛、つま先立ち、神経症状、足の脈拍などを確認します。

超音波検査

筋肉やアキレス腱の損傷、ベーカー嚢胞などの確認に役立ちます。深部静脈血栓症が疑われる場合には、静脈超音波検査を行います。

血液検査

深部静脈血栓症の臨床的な可能性に応じて、Dダイマーを測定することがあります。Dダイマーは単独で診断を確定する検査ではなく、年齢や病状によって上昇することがあります。

足関節上腕血圧比

末梢動脈疾患が疑われる場合は、腕と足首の血圧を比較する足関節上腕血圧比などで血流を評価します。

X線・MRI検査

骨折や疲労骨折が疑われる場合にはX線を行います。筋肉・腱の重い損傷、疲労骨折、腫瘍などが疑われる場合にはMRIを検討します。

ふくらはぎの痛みはどのように治療しますか?

治療は原因によって大きく異なります。

  • 肉離れ:急性期の負荷調整後、可動域・筋力・走行動作を段階的に回復
  • アキレス腱障害:運動量の調整と段階的な腱のトレーニング
  • アキレス腱断裂:装具による保存療法または手術を患者背景に応じて選択
  • こむら返り:原因となる薬や病気の確認、生活・運動状況に応じた対応
  • 深部静脈血栓症:抗凝固療法などの専門治療
  • 末梢動脈疾患:禁煙、運動療法、動脈硬化リスクの治療、薬、必要に応じて血行再建
  • 神経痛:原因となる腰椎・末梢神経の治療
  • 急性コンパートメント症候群:緊急手術

よくある質問

ふくらはぎの痛みが肉離れか血栓か、自分で見分けられますか?

運動中に突然発症し、限局した圧痛や内出血があれば肉離れを考えます。一方、けががない片脚の腫れ、熱感、赤みがあれば深部静脈血栓症を考えます。ただし症状は重なるため、自己判断だけで完全に見分けることはできません。

足首を反らして痛ければ血栓ですか?

その方法だけでは判断できません。痛みが出ても血栓とは限らず、痛みが出なくても血栓を否定できません。疑われる場合は、医療機関で臨床評価、血液検査、超音波検査などを行います。

痛くても歩いてよいですか?

軽い筋肉痛で歩き方が変わらず、歩いた後や翌日に悪化しない場合は、短い距離から歩けることがあります。びっこを引く、腫れが増える、強い痛みやしびれがある場合は歩行量を減らして受診してください。

マッサージやストレッチをしてよいですか?

軽い筋肉のこわばりには役立つ場合がありますが、肉離れ直後、原因不明の腫れ、血栓、感染、出血が疑われる場合には適しません。強く揉む前に原因を確認してください。

片脚で何回つま先立ちできれば正常ですか?

回数は年齢、体格、運動歴、測定方法によって異なり、「30回できれば正常」と一律には判断できません。左右差、痛み、動作の質、競技で必要な能力などを合わせて評価します。

夜中にふくらはぎがつります。病院へ行くべきですか?

一時的で頻度が低く、ストレッチで治る場合は経過を見られることがあります。頻繁に繰り返す、片脚の腫れ、しびれ、筋力低下、歩行時痛、薬の変更後に増えた場合は相談してください。

どのくらいで治りますか?

軽い筋肉痛は数日、軽度の肉離れは数週間で改善することがあります。重い筋損傷やアキレス腱断裂では数か月かかります。血栓、血流障害、神経障害では治療内容と回復期間が大きく異なります。

まとめ

ふくらはぎの痛みは、肉離れ、筋肉痛、アキレス腱障害、こむら返りなどで起こりますが、深部静脈血栓症、末梢動脈疾患、急性コンパートメント症候群なども見逃せません。

片脚だけの原因不明の腫れや熱感、息苦しさや胸痛、足の冷感・変色、非常に強い痛み、つま先立ちができない状態がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

セルフテストだけで血栓を判断したり、原因不明の腫れを強くマッサージしたりせず、症状に応じて適切な診察と検査を受けることが大切です。

参考文献

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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。