夜に膝が痛いのはなぜ?夜間痛の原因と受診目安・眠る工夫
夜に膝が痛む「夜間痛」は、病名ではなく症状です。変形性膝関節症や膝の腫れのような比較的よくある状態で起こることもあれば、痛風・偽痛風、感染症、膝軟骨下不全骨折など、早めの診断が必要な病気で起こることもあります。
日中は動けているのに、横になると痛みが気になって眠れない、夜中に目が覚める、寝返りのたびに痛むという人もいます。夜間痛だけで重い病気と決まるわけではありませんが、急に始まった強い痛み、赤みや熱感、発熱、体重をかけられない状態などがある場合は、自己判断せず受診してください。
夜間痛の改善には、単に寝る姿勢を変えるだけでなく、痛みの原因を確認し、日中の活動量、腫れ、筋力、薬、睡眠状態を一緒に見直すことが大切です。
当日または早めに医療機関を受診した方がよい症状
- 膝が急に赤く腫れ、熱を持っている
- 発熱、寒気、全身のだるさを伴う
- 明確な外傷がないのに、突然強く痛み、体重をかけられない
- 転倒やスポーツ外傷後に、数時間以内に大きく腫れた
- 膝が引っかかって伸びない、または曲げられない
- 人工膝関節や膝の手術後に、痛み・腫れ・熱感が急に強くなった
- ふくらはぎまで片脚が腫れ、胸痛や息苦しさを伴う
- 足先が冷たい、白い、紫色になる、しびれや麻痺がある
- 夜間痛が日ごとに悪化し、しこり、体重減少、食欲低下などを伴う
夜間痛とはどのような痛みですか?
夜間痛には、いくつかの異なる状態が含まれます。
- ベッドへ入ると痛みが気になる
- 寝返りや膝の向きによって痛む
- 夜中に痛みで目が覚める
- 安静にしていてもズキズキ痛む
- 明け方に膝がこわばり、動かしにくい
- 夕方以降に腫れや重だるさが強くなる
「夜に痛い」という共通点があっても、原因は同じではありません。痛む場所、腫れ、熱感、発症の速さ、日中の症状、朝のこわばりなどを合わせて考えます。
夜になると膝の痛みを強く感じるのはなぜですか?
1.周囲の刺激が少なくなり、痛みに注意が向きやすい
日中は仕事、会話、移動など多くの刺激があります。静かな寝室では痛みに注意が向きやすくなり、同じ強さの刺激でも痛みを大きく感じることがあります。
これは「気のせい」という意味ではありません。痛みは関節の状態だけでなく、注意、感情、疲労、睡眠などの影響も受ける感覚です。
2.日中の活動による腫れや刺激が残っている
歩行、階段、立ち仕事、運動などの後に滑膜炎や関節水腫が強くなると、夕方から夜に張りや痛みが増えることがあります。
ただし、夜に関節液が「干上がる」、骨同士が一晩で直接こすれ合うという説明は正確ではありません。変形性膝関節症の痛みには、滑膜、軟骨下骨、半月板、関節包、筋肉、神経の過敏化など複数の要因が関係します。
3.同じ姿勢が続く
長時間同じ姿勢でいると、膝周囲の組織が圧迫されたり、関節がこわばったりします。横向きで両膝が重なる、膝を深く曲げたまま眠るなど、特定の姿勢で症状が強くなることがあります。
4.痛みと睡眠不足が悪循環になる
痛みで眠れないと、翌日は疲労が増え、活動が減り、痛みへの感受性が高くなることがあります。反対に、睡眠状態を整えることで、痛みの受け止め方や日中の活動が改善する場合があります。
したがって、夜間痛では膝だけでなく、睡眠の質や生活リズムも治療の一部として確認します。
睡眠中の二酸化炭素増加が血管を広げ、痛み物質を放出するから夜間痛が起こる、という単純な仕組みは確立していません。
夜間痛は、炎症、骨や半月板の病変、姿勢、日中の負荷、痛みへの注意、睡眠不足などを総合して考えます。
夜間痛の主な原因
1.変形性膝関節症
変形性膝関節症では、立ち上がり、歩行、階段での痛みに加えて、進行例や増悪期に安静時痛・夜間痛が起こることがあります。
- 立ち上がりや歩き始めが痛い
- 長く歩いた日の夜に痛みが強い
- 膝が腫れる、水がたまる
- 曲げ伸ばしがしにくい
- O脚やX脚が目立つ
X線上の変形の強さと夜間痛は、必ずしも一致しません。痛み、腫れ、筋力、活動量、睡眠などを含めて治療します。
2.膝の腫れ・滑膜炎
変形性膝関節症、半月板損傷、外傷、炎症性関節疾患などで関節液が増えると、夜に張るような痛みが出ることがあります。
- 膝全体が腫れている
- 曲げ伸ばしが窮屈である
- 夕方以降に重だるい
- 膝裏に張りやふくらみがある
すべての水腫で必ず関節液を抜くわけではありません。感染、痛風・偽痛風、血腫などの原因を調べる必要がある場合や、強い張りを軽くする必要がある場合に関節穿刺を検討します。
3.痛風・偽痛風
痛風や偽痛風では、夜間や早朝に突然、強い関節痛が始まることがあります。
- 数時間で急激に痛くなった
- 膝が赤く熱を持っている
- 触れるだけでも強く痛む
- 大きく腫れて曲げられない
- 明確なけががない
痛風・偽痛風は感染性関節炎と症状が似ています。結晶が見つかっても感染が同時に起きている可能性があるため、初めての強い発作、発熱、全身状態の悪化がある場合は、早急な評価が必要です。
4.化膿性関節炎
化膿性関節炎は、細菌などが関節内へ入り込む感染症です。治療が遅れると、関節軟骨の破壊や全身の重い感染症につながる可能性があります。
- 急に強く痛くなった
- 膝が赤く熱を持ち、大きく腫れている
- 少し動かすだけでも激しく痛む
- 発熱、寒気、全身倦怠感がある
高齢者、糖尿病、免疫を抑える薬の使用、皮膚の傷、最近の手術・注射、人工関節がある場合は特に注意が必要です。発熱がない化膿性関節炎もあります。
感染が疑われる場合は、できるだけ早く関節液を採取し、細菌検査などを行います。
5.内側半月板後根断裂・膝軟骨下不全骨折
中高年の人が、明確な転倒や衝突がないのに突然強い膝痛を起こし、体重をかけたときや夜間に痛む場合は、内側半月板後根断裂や膝軟骨下不全骨折を考えます。
- 階段、立ち上がり、しゃがみ込み、小走りをきっかけに発症した
- 膝の後内側に「ブチッ」「ポキッ」と感じた
- 体重をかけると強く痛む
- 夜もズキズキして眠れない
- X線では大きな異常がないと言われたが痛みが続く
膝軟骨下不全骨折は、初期のX線に写らないことがあります。症状と診察から疑われる場合は、MRIを検討します。痛みを我慢して歩き続けず、早めに整形外科を受診してください。
6.半月板・靱帯・軟骨の損傷
スポーツや転倒後のけがでは、半月板、前十字靱帯、軟骨などの損傷によって、腫れや夜間痛が続くことがあります。
- ひねった後から痛む
- 膝が引っかかる
- 膝が伸びない
- 膝崩れや不安定感がある
- 外傷後に大きく腫れた
外傷直後の痛みが一度軽くなっても、競技や方向転換で不安定感が残る場合は評価が必要です。
7.関節リウマチなどの炎症性疾患
関節リウマチやそのほかの炎症性関節疾患でも、夜間痛や朝のこわばりが起こります。
- 両膝や複数の関節が痛む
- 手指や手首にも腫れがある
- 朝のこわばりが長く続く
- 安静にしていても痛む
- 症状が数週間以上続く
複数の関節症状や長い朝のこわばりがある場合は、整形外科またはリウマチ科で評価します。
8.手術後・人工膝関節置換術後の痛み
膝の手術後は、組織の炎症、腫れ、筋力低下、神経の刺激などによって、一定期間は夜間痛が出ることがあります。
しかし、痛みが一度軽くなった後に急に悪化した、赤み・熱感・発熱が出た、傷から液が出る、ふくらはぎまで腫れた場合は、感染や血栓症などを除外する必要があります。
処方薬の量や服用間隔を自己判断で変更せず、手術を受けた医療機関へ相談してください。
9.腰や神経からの痛み
腰椎や末梢神経の問題により、膝周囲へ痛みを感じることがあります。
- 腰や臀部から脚へ痛み・しびれが広がる
- 焼ける、電気が走るように痛む
- 皮膚に触れるだけで痛い
- 寝る姿勢によってしびれが変わる
排尿・排便の異常、会陰部のしびれ、急速に進む筋力低下がある場合は、緊急の評価が必要です。
10.子どもの夜間痛
典型的な成長痛は、両脚の太もも・ふくらはぎ・膝裏などに起こり、夕方から夜に痛み、朝には改善し、日中は普通に活動できます。
次の状態は典型的な成長痛とは異なります。
- 片脚だけの限局した痛み
- 日中も痛み、びっこを引く
- 膝が腫れる、赤い、熱を持つ
- 朝も痛みが残る
- 夜間痛が日ごとに悪化する
- 発熱、体重減少、食欲低下を伴う
11.まれですが見逃したくない病気
頻度は高くありませんが、骨や軟部組織の腫瘍、骨髄炎などが夜間痛の原因になることがあります。
夜間痛があるだけで、がんを意味するわけではありません。ただし、痛む場所がはっきりして徐々に悪化する、安静にしても変わらない、しこりや腫れが大きくなる、発熱・体重減少などを伴う場合は、画像検査を含めた評価が必要です。
自宅でできる夜間痛への対処
危険な症状がなく、すでに診断を受けている慢性の膝痛では、次の方法を試せます。
1.冷やすか温めるかを症状で選ぶ
冷却が適することがある状態
- 運動後に膝が熱を持つ
- 腫れが増えた
- ズキズキする急性の痛みがある
布で包んだ保冷剤を10~15分程度使用します。皮膚へ直接当て続けないでください。
温めると楽になることがある状態
- 赤みや明らかな熱感がない
- 冷えるとこわばる
- 慢性的な重だるさがある
入浴や温かいタオルを利用します。赤く熱を持つ膝、急な大きな腫れ、感染が疑われる状態を温めないでください。
「まず冷やし、その後は必ず温める」という一律の順番ではなく、その時の症状に合わせます。
2.楽な睡眠姿勢を探す
- 横向き:両膝の間に枕やクッションを挟みます。
- 仰向け:ふくらはぎからかかとを軽く支え、膝が楽な位置になるよう調整します。
- 寝返り:膝だけをひねらず、体全体を一緒に動かします。
厚い枕を膝の真下へ長時間入れ、膝を深く曲げた状態に固定すると、膝が伸びにくくなる場合があります。特に手術後は、医療機関から指示された姿勢を優先してください。
3.日中の負荷を調整する
夜に痛む日は、長時間歩行、階段の往復、深いしゃがみ込みなどが急に増えていなかったか確認します。
負荷を一時的に下げることは有効ですが、長期間の完全安静は筋力と睡眠を悪化させることがあります。症状が落ち着いたら、短い歩行や筋力運動を段階的に再開します。
4.睡眠習慣を整える
- 起床時刻をできるだけ一定にする
- 寝る直前のスマートフォンや強い光を減らす
- 夕方以降のカフェインや過度の飲酒を控える
- 昼寝が長すぎないようにする
- 眠れない時間が長い場合は、一度ベッドを出て静かな活動をする
必要な睡眠時間には個人差があります。「全員が必ず8時間眠らなければならない」と考えすぎず、日中の眠気や体調も含めて評価します。
5.薬は指示どおりに使用する
外用薬、アセトアミノフェン、NSAIDsなどが使われることがありますが、年齢、腎臓・肝臓・胃腸・心血管の病気、ほかの薬によって安全性が異なります。
- 市販薬と処方薬の成分を重ねない
- 効かないからと一度に量を増やさない
- 服用時刻を自己判断で大きく変えない
- 眠れるように長時間作用型の薬へ自己変更しない
夜間痛が続く場合は、痛み止めを追加するだけでなく、原因と治療方針を医師へ相談してください。
6.症状を記録する
次の内容を数日記録すると、診断や治療調整に役立ちます。
- 痛む時刻と場所
- 寝付けないのか、途中で目が覚めるのか
- 腫れや熱感の有無
- その日の歩行・運動・仕事量
- 薬を使った時刻と効果
- 朝のこわばりの長さ
整形外科ではどのように調べますか?
問診と診察
夜間痛が始まった時期、急性か慢性か、痛む場所、腫れ、熱感、朝のこわばり、外傷、手術歴、全身症状などを確認します。
診察では、歩き方、可動域、関節水腫、圧痛、半月板・靱帯、神経、血流などを評価します。
X線検査
慢性的な膝痛では、一般にX線が初期の画像検査です。変形性膝関節症、骨折、骨の変化、アライメントなどを確認します。
超音波検査
関節液、滑膜炎、ベーカー嚢胞、滑液包、腱などを確認できます。深部静脈血栓症が疑われる場合は、静脈超音波検査を行います。
MRI検査
X線では原因が分からない強い痛み、膝軟骨下不全骨折、半月板後根断裂、半月板・靱帯・軟骨病変、腫瘍などが疑われる場合に検討します。
関節液・血液検査
膝が赤く熱を持ち、感染、痛風、偽痛風、炎症性関節疾患が疑われる場合は、関節液検査や血液検査を行います。
夜間痛はどのように治療しますか?
夜間痛だけを抑えるのではなく、原因に応じた治療を行います。
- 変形性膝関節症:運動療法、体重管理、薬、注射、装具、必要に応じて手術
- 関節水腫・滑膜炎:原因治療、活動調整、必要に応じて関節穿刺
- 痛風・偽痛風:急性炎症の治療と再発予防
- 化膿性関節炎:関節液検査、抗菌薬、関節洗浄・排膿
- 膝軟骨下不全骨折:荷重調整を含む保存療法、病変や関節症に応じた手術
- 半月板・靱帯損傷:リハビリテーション、損傷形態に応じた手術
- 炎症性関節疾患:リウマチ科を含む専門治療
- 術後痛:手術内容と経過に応じた疼痛管理・リハビリ、合併症の除外
よくある質問
夜に膝が痛むのは変形性膝関節症が進行したからですか?
進行した変形性膝関節症で夜間痛が起こることはありますが、夜間痛だけで重症度は決まりません。滑膜炎、関節水腫、膝軟骨下不全骨折、痛風、睡眠状態なども関係します。
夜間痛があると、がんの可能性がありますか?
夜間痛の多くが腫瘍によるものではありません。ただし、原因不明の限局痛が徐々に悪化する、しこり、腫れ、体重減少、発熱などを伴う場合は、画像検査を含む評価が必要です。
寝る前は冷やすのと温めるのと、どちらがよいですか?
熱感や腫れがある場合は冷却、赤みや熱感がなく、こわばりが中心なら温熱で楽になることがあります。急に赤く大きく腫れた膝は、温めずに受診してください。
膝の下に枕を入れてもよいですか?
短時間、膝が楽になる位置へ調整することは可能です。ただし、厚い枕で膝を曲げたまま長時間固定すると、膝が伸びにくくなる場合があります。手術後は担当医療者の指示に従ってください。
寝る前に痛み止めを飲めばよいですか?
処方または製品の用法どおりであれば、夜間の痛みを管理するために使うことがあります。ただし、薬の種類や服用時刻は持病やほかの薬によって異なります。自己判断で増量したり、複数の鎮痛薬を重ねたりしないでください。
夜間痛があっても運動してよいですか?
感染、骨折、急性炎症などが否定され、慢性の変形性膝関節症などであれば、適切な運動は治療の中心です。夜間痛や腫れが増える場合は、運動量と方法を調整します。
何日続いたら受診すべきですか?
強い痛み、腫れ、熱感、発熱、荷重不能などがあれば、その日のうちに相談してください。危険な症状がなくても、夜間痛が連日続く、睡眠を繰り返し妨げる、徐々に悪化する場合は、期間だけで判断せず受診してください。
まとめ
夜間の膝痛は、変形性膝関節症、関節水腫、痛風・偽痛風、感染症、半月板・靱帯損傷、膝軟骨下不全骨折などで起こります。
夜に痛みが目立つ理由には、日中の負荷や腫れ、同じ姿勢、痛みへ注意が向きやすいこと、睡眠不足との悪循環などが関係します。関節液が一晩でなくなることや、睡眠中の二酸化炭素増加だけで説明することはできません。
自宅では、症状に応じた冷却・温熱、睡眠姿勢、日中の負荷、睡眠習慣を調整します。薬は自己判断で増量せず、指示どおりに使用してください。
赤く熱を持つ腫れ、発熱、突然の強い痛み、荷重不能、ロッキング、術後の急な悪化、進行する限局痛や全身症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。

