半月板損傷は、膝の中にある半月板という組織が切れたり、傷んだりした状態です。

スポーツ中に膝をひねって突然起こることもあれば、中高年以降に年齢に伴う変化を背景として、立ち上がりやしゃがみ込みなどの日常動作で発症することもあります。

主な症状は、膝の内側または外側の痛み、腫れ、引っかかり、伸ばしにくさなどです。ただし、MRIで半月板の断裂が見つかっても、それが必ず痛みの原因とは限りません。年齢、発症のきっかけ、診察所見、軟骨や靱帯の状態を合わせて治療を考えます。

半月板損傷のすべてに手術が必要なわけではありません。一方、切れた半月板がずれて膝が伸びない場合や、修復できる可能性が高い急性損傷では、早めの手術が望ましいことがあります。

早めに整形外科を受診した方がよい症状

  • 膝が引っかかり、完全に伸ばせない状態が続く
  • 転倒やスポーツ外傷の後、数時間以内に大きく腫れた
  • 体重をかけられない、歩けない
  • 膝が明らかにぐらつく
  • 膝の変形がある
  • 膝が赤く熱を持ち、発熱を伴う
  • ふくらはぎまで腫れ、胸痛や息苦しさを伴う

半月板とはどのような組織ですか?

半月板は、大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨です。膝の内側と外側に1つずつあります。

「クッション」と表現されることが多い組織ですが、役割は衝撃吸収だけではありません。

  • 体重や衝撃を広い範囲へ分散する
  • 膝関節の安定性を補助する
  • 膝の曲げ伸ばしに合わせて動き、関節の適合性を高める
  • 関節軟骨に加わる負担を軽減する
  • 関節の感覚や動きの調整に関わる

半月板の外側縁に近い部分には比較的血流がありますが、関節の中央に近い部分は血流が乏しくなります。そのため、損傷した場所、断裂の形、組織の状態によって、自然に治る可能性や縫合できる可能性が異なります。

半月板損傷にはどのような種類がありますか?

1.外傷性半月板損傷

スポーツ中の方向転換、着地、切り返しなどで、足が地面についた状態のまま膝をひねることで起こります。若い人やスポーツ選手に多く、前十字靱帯などの靱帯損傷を伴うこともあります。

明確なけががある場合でも、半月板の損傷だけとは限りません。急激な腫れや強いぐらつきがある場合は、靱帯や骨軟骨の損傷も評価します。

2.変性半月板損傷

年齢に伴って半月板の組織が変化し、明確な外傷がなくても傷むことがあります。立ち上がり、しゃがみ込み、階段、軽いひねりなどをきっかけに痛くなる場合があります。

変性半月板損傷は、変形性膝関節症の一部として見つかることもあります。中高年以降では、MRIで断裂が見つかっても症状がない人が少なくありません。そのため、「MRIで切れている=必ず手術が必要」とは判断できません。

3.半月板後根断裂

半月板後根断裂は、半月板を骨へ固定している後方の付着部が切れる損傷です。内側半月板後根断裂は中高年の女性に多く、階段、立ち上がり、しゃがみ込み、小走りなどの軽い動作で発症することがあります。

  • 膝の後内側に突然強い痛みが出た
  • 「ブチッ」「ポキッ」と音や感覚があった
  • その後、体重をかけると強く痛む
  • 数日休んでも改善しにくい

後根が切れると半月板の荷重分散機能が大きく低下し、関節軟骨への負担が増える可能性があります。一般的な変性断裂とは治療方針が異なるため、独立して評価することが重要です。

内側半月板後根断裂について詳しく見る

4.円板状半月板

外側半月板が通常より大きく、円板に近い形をしている状態を円板状半月板といいます。生まれつきの形態で、症状がなければ治療を必要としない場合があります。

子どもや若い人に、膝外側の痛み、クリック音、引っかかり、伸ばしにくさがある場合に見つかることがあります。

断裂の形によって治療は変わりますか?

半月板の断裂にはさまざまな形があります。

主な断裂の形 特徴
縦断裂 半月板の線維に沿った断裂。外側縁に近く組織が良好なら縫合を検討しやすい。
バケツ柄断裂 縦断裂した半月板が中央へずれ、膝が伸びないロッキングを起こすことがある。
横断裂・放射状断裂 半月板を横切る断裂で、荷重分散機能への影響が大きくなる場合がある。
水平断裂 半月板が上下に分かれる形。変性を背景にみられることが多い。
複合断裂 複数の方向へ複雑に切れた状態。変性を伴うことが多い。
後根断裂 骨への付着部周辺の断裂。一般的な半月板損傷とは分けて治療方針を検討する。

同じ名称の断裂でも、断裂の長さ、位置、ずれ、組織の質、年齢、軟骨の状態によって治療は変わります。MRIだけでは、手術中に確認する組織の状態を完全には予測できないことがあります。

半月板損傷の主な症状

  • 膝の内側または外側の関節のすき間が痛む
  • ひねる、しゃがむ、立ち上がると痛む
  • 膝が腫れる、水がたまる
  • 引っかかりやクリックを感じる
  • 膝が伸びきらない、曲げにくい
  • 膝が動かないロッキングが起こる
  • スポーツや歩行中に膝が抜けるように感じる

ただし、これらの症状は変形性膝関節症、靱帯損傷、軟骨損傷、滑膜ヒダ障害などでも起こります。

また、膝が鳴るだけで痛みや腫れがない場合は、必ずしも半月板損傷によるものではありません。

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半月板損傷はどのように診断しますか?

問診

次のような点を確認します。

  • スポーツや転倒など明確な外傷があったか
  • どの動作で痛むか
  • 腫れはいつから始まったか
  • 引っかかりやロッキングがあるか
  • 膝の不安定感があるか
  • 仕事やスポーツへどの程度影響しているか

診察

関節裂隙の圧痛、膝の可動域、腫れ、靱帯の安定性などを確認します。McMurrayテストやThessalyテストなど、半月板へ負荷をかける診察を行うこともあります。

一つのテストだけで診断するのではなく、複数の診察所見と病歴を組み合わせて判断します。

X線検査

通常のX線には半月板そのものは写りません。ただし、骨折、変形性膝関節症、脚のアライメント、関節のすき間などを確認するために重要です。

特に中高年以降の慢性的な膝痛では、MRIより先にX線を行うことがあります。

MRI検査

MRIは、半月板の位置、断裂の形、靱帯や軟骨、骨内部の状態を確認できる検査です。急性半月板損傷を詳しく評価する画像検査として最も一般的です。

ただし、中高年以降では、痛みがない人にも半月板の変性や断裂が見つかることがあります。MRI所見だけで痛みの原因や手術の必要性を決めるのではなく、症状と診察所見が一致しているかを確認します。

膝の診察と検査について詳しく見る

半月板損傷は自然に治りますか?

治る可能性は、次の条件によって異なります。

  • 断裂した場所と血流
  • 断裂の形と大きさ
  • 半月板がずれているか
  • 外傷性か変性か
  • 半月板組織の質
  • 年齢や活動性
  • 前十字靱帯損傷などの合併

外側縁に近い安定した小さな断裂は、症状が改善し、手術をせずに活動へ戻れる場合があります。一方、血流が乏しい部位の大きな断裂、ずれた断裂、後根断裂などでは、自然修復を期待しにくい場合があります。

「画像上の断裂が完全に消えること」と「痛みや機能が改善すること」は同じではありません。断裂がMRIに残っていても、症状が改善して日常生活やスポーツへ戻れる人もいます。

手術をしない治療

半月板が大きくずれておらず、膝がロックしていない場合は、保存療法から始めることがあります。

活動量の調整

  • 深いしゃがみ込みを避ける
  • 膝をひねる動作を減らす
  • 走る、跳ぶ、方向転換を一時的に控える
  • 痛みで歩き方が崩れる場合は歩行量を減らす

完全な安静を長く続けると、筋力や関節の動きが低下します。痛みや腫れを悪化させない範囲で、日常活動と運動を段階的に戻します。

運動療法

運動療法では、次の改善を目指します。

  • 膝の曲げ伸ばしを回復する
  • 太ももや股関節周囲の筋力を高める
  • 片脚での安定性を改善する
  • 歩行、階段、スポーツ動作を段階的に戻す

変性半月板損傷では、運動療法を中心とした治療が部分切除術に劣らない結果を示した研究が複数あります。若い成人の半月板損傷でも、早期手術が運動療法と教育から始める方法より明らかに優れていなかった研究があります。

ただし、膝が伸びない転位断裂や、早期に縫合した方がよい損傷は、これらとは別に考える必要があります。

薬・装具

症状に応じて、外用薬や内服薬を使用することがあります。サポーターは痛みや不安感を軽くする場合がありますが、断裂そのものを修復するものではありません。

手術が検討されるのはどのような場合ですか?

次のような場合に手術を検討します。

  • ずれた半月板によって膝が伸びない、ロッキングがある
  • 修復できる可能性がある急性外傷性断裂
  • 後根断裂など、関節機能への影響が大きい損傷
  • 適切な保存療法を行っても痛みや腫れ、機能障害が続く
  • 仕事やスポーツへの復帰が難しい
  • 靱帯損傷など、ほかの手術と同時に治療する必要がある

「MRIで断裂がある」「クリック音がする」という理由だけで手術を決めるものではありません。症状、断裂形態、軟骨状態、年齢、活動目標、リハビリへ取り組めるかを含めて相談します。

半月板縫合術と部分切除術の違い

半月板縫合術

切れた半月板を糸などで縫い、できるだけ半月板を残す手術です。

主な利点

  • 半月板の組織と機能を温存できる
  • 部分切除術より、将来の変形性膝関節症の進行を抑えられる可能性がある

主な注意点

  • すべての断裂を縫えるわけではない
  • 治癒まで時間が必要
  • 術後の荷重や膝の曲げ方に制限が必要な場合がある
  • 再断裂や再手術の可能性がある

半月板部分切除術

修復できない不安定な部分を、必要最小限だけ切除して形を整える手術です。

主な利点

  • 縫合術より術後の回復が早いことが多い
  • 不安定な断裂による引っかかりを改善できる場合がある

主な注意点

  • 失った半月板は元に戻らない
  • 切除する量が多いほど、関節軟骨へかかる負担が増える
  • 将来の変形性膝関節症のリスクが高まる可能性がある
  • 変性断裂では、手術をしても痛みの原因が残る場合がある

現在の基本的な考え方
手術が必要な場合も、健康な半月板をできるだけ残し、修復可能であれば縫合を検討します。部分切除術を行う場合も、不安定な部分だけを必要最小限に切除することが重要です。

手術後はどのくらいで回復しますか?

回復期間は、部分切除術か縫合術か、断裂の場所や形、同時に行った手術、仕事や競技内容によって大きく異なります。

  • 部分切除術:日常生活への復帰は比較的早いことが多いですが、腫れや筋力低下が残る場合があります。
  • 縫合術:治癒を待つ必要があるため、部分切除術より長いリハビリが必要です。
  • 後根修復術:荷重や深い屈曲を慎重に進める必要があり、一般的な縫合術と異なる場合があります。

日付だけで復帰を決めるのではなく、腫れ、可動域、筋力、片脚動作、走行や方向転換などを確認します。

半月板手術後のリハビリについて詳しく見る

自宅でできる初期対応

急に膝をひねって痛くなった場合は、次のように対処します。

  • 痛みを悪化させるスポーツや深いしゃがみ込みを中止する
  • 腫れや熱感がある場合は、布で包んだ保冷剤で10~15分程度冷やす
  • 脚を少し高くして休む
  • 必要に応じて松葉杖などを使用し、痛みを我慢して歩かない
  • 膝を無理に曲げ伸ばししてロックを解除しようとしない

膝が伸びない、大きく腫れる、体重をかけられない場合は、自宅で様子を見続けず受診してください。

よくある質問

半月板損傷があっても歩いてよいですか?

軽い痛みで歩き方が変わらず、歩いた後や翌日に腫れや痛みが増えない場合は、距離を短くして歩けることがあります。びっこを引く、膝が腫れる、引っかかる場合は歩行量を減らして受診してください。

半月板損傷は必ず手術になりますか?

必ずではありません。ずれのない断裂、変性断裂、ロッキングのない症例では、運動療法や活動調整から始めることがあります。ずれた断裂や修復可能な急性断裂などでは、早期手術を検討します。

MRIで半月板損傷と言われました。これが痛みの原因ですか?

可能性はありますが、必ずとは限りません。中高年以降では、痛みのない人にも半月板断裂が見つかることがあります。痛む場所、発症の経過、診察、X線での関節症、MRIの断裂形態を合わせて判断します。

膝がカクカク鳴るのは半月板損傷ですか?

音だけでは半月板損傷と判断できません。痛み、腫れ、引っかかり、可動域制限を伴う場合は診察を受けてください。

半月板は切るより縫った方がよいですか?

修復可能な場合は、半月板を温存することが基本です。ただし、組織が大きく変性している、断裂形態が修復に適さないなど、縫合できない場合もあります。手術中に最終判断が変わることもあります。

スポーツへ復帰できますか?

多くの人が復帰を目指せますが、断裂の種類、治療法、筋力、競技によって時期は異なります。痛みがないだけでなく、腫れがないこと、十分な筋力と動作能力が回復していることが必要です。

半月板損傷を放置すると変形性膝関節症になりますか?

半月板の機能が大きく失われる損傷や、半月板を多く切除した膝では、将来の関節症リスクが高まる可能性があります。一方、MRIで小さな変性断裂があるだけで、必ず関節症が急速に進むわけではありません。軟骨状態、脚の形、体重、活動性なども影響します。

まとめ

半月板損傷には、スポーツ外傷による急性断裂、年齢に伴う変性断裂、関節への影響が大きい後根断裂など、異なる病態があります。

すべての半月板損傷に手術が必要なわけではなく、運動療法と活動調整で改善する場合があります。一方、膝が伸びない転位断裂や修復できる可能性が高い急性断裂は、早めの評価が重要です。

MRI画像だけで治療を決めず、症状、診察所見、断裂形態、軟骨状態、活動目標を合わせて治療法を選びます。手術が必要な場合も、健康な半月板を可能な限り温存することが現在の基本的な考え方です。

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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。