ランニングは、特別な道具が少なく、誰でも始めやすい運動です。

一方で、走る距離や回数が増えると、膝、すね、足首、足裏、アキレス腱、股関節などに痛みが出ることがあります。

ランニングで起こる痛みの多くは、1回の大きなけがというより、同じ動作を繰り返すことで負担が蓄積して起こる「使い過ぎ」による障害です。

この記事では、ランニング障害の考え方、起こりやすい部位、受診の目安、走る量の調整方法、再開の考え方をわかりやすく解説します。

ランニング中の膝の痛みについて先に知りたい方は、走ると膝が痛い原因も参考にしてください。

この記事の結論

  • ランニング障害は、走る量・強度・頻度の変化に体が追いつかないと起こりやすくなります。
  • 膝だけでなく、すね、足首、足裏、アキレス腱、股関節にも痛みが出ます。
  • 痛みを我慢して走り続けると、回復が長引くことがあります。
  • 大切なのは、完全休養だけではなく、痛みが悪化しない範囲に負荷を調整することです。
  • 翌日に痛みや腫れが増える場合は、負荷が高すぎるサインです。
  • 骨に響く痛み、片脚ジャンプで強い痛み、歩行痛がある場合は疲労骨折の確認が必要です。
  • 再開は、ウォーキング、短時間ジョグ、ジョグと歩行の組み合わせから段階的に進めます。

ランニングについて、さらに詳しく読みたい方へ

ランニング障害、走り方、身体の使い方、痛みを予防する考え方については、noteでも詳しくまとめています。

文章だけでなく、ランニングを「体の使い方」や「負荷の調整」という視点から整理したい方は、こちらも参考にしてください。


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ランニング障害とは

ランニング障害とは、ランニングに関連して起こる筋肉、腱、靱帯、骨、関節の痛みや不調を指します。

ランニングでは、着地と蹴り出しを何千回も繰り返します。

1回の着地の負担は小さくても、走る距離、スピード、坂道、路面、疲労、筋力不足、柔軟性低下などが重なると、体の一部に負担が集中します。

その結果、次のような症状が出ることがあります。

  • 走り始めに痛い
  • 走っている途中から痛くなる
  • 走った翌日に痛い
  • 階段やしゃがみ込みで痛い
  • 押すと痛い場所がある
  • 足を引きずる
  • 練習量を増やしたあとから痛い

ランニング障害では、「痛い場所」だけでなく、なぜそこに負担が集中したのかを考えることが大切です。

ランニング障害が起こりやすい原因

1. 走る量が急に増えた

もっとも多い原因の一つが、練習量の急な増加です。

久しぶりに走り始めた、急に距離を伸ばした、毎日走るようになった、レースに向けて練習量を増やした、という場面で痛みが出やすくなります。

体は負荷に適応しますが、適応には時間がかかります。

2. スピード練習や坂道が増えた

同じ距離でも、速く走る、坂道を走る、下り坂を走る、インターバル走を増やすと、膝や足への負担は変わります。

距離だけでなく、スピード、坂道、路面、疲労も負荷として考える必要があります。

3. 休養が足りない

走るたびに組織には小さな負担がかかります。

休養が不足すると、回復する前に次の負荷がかかり、痛みにつながることがあります。

4. 筋力や柔軟性の不足

太もも、お尻、股関節、ふくらはぎ、足部の筋力が不足していると、着地時の衝撃をうまく分散できないことがあります。

また、ふくらはぎや太もも、股関節まわりが硬いと、膝や足首に負担が集中することがあります。

5. フォームだけを原因にしすぎる

ランニング障害では「フォームが悪いから」と考えられがちです。

もちろん、走り方が痛みに関係することはあります。ただし、フォームだけで説明できることは多くありません。

フォーム、練習量、筋力、柔軟性、疲労、靴、路面、睡眠、体重などを合わせて考えることが大切です。

起こりやすいランニング障害

部位 代表的な障害 特徴
膝の前 膝蓋大腿関節痛、膝蓋腱炎 階段、しゃがみ込み、下り坂で痛みやすい
膝の外側 腸脛靱帯炎 走行中に膝外側が痛くなり、距離が伸びると悪化しやすい
すね シンスプリント、疲労骨折 押すと痛い、走ると痛い、骨に響く痛みは注意
足首・アキレス腱 アキレス腱症、足関節周囲炎 走り始めや坂道で痛みやすい
足裏 足底腱膜炎 朝の一歩目、走った翌日に痛みやすい
股関節・骨盤 股関節周囲痛、疲労骨折 深部痛、片脚での痛み、歩行痛に注意

膝外側の痛みについては、腸脛靱帯炎とはも参考にしてください。

注意したい症状

ランニング障害の中には、走る量を調整するだけで改善するものもあります。

しかし、次のような症状がある場合は、自己判断で走り続けず、整形外科などで確認することをおすすめします。

早めに受診したほうがよい症状

  • 歩いても痛い
  • 足を引きずる
  • 片脚ジャンプで強く痛い
  • 骨の一点を押すと強く痛い
  • 痛みが日ごとに強くなる
  • 腫れや熱感がある
  • 夜間や安静時にも痛い
  • しびれや力の入りにくさがある
  • 数日休んでも改善しない

特に、すね、足の甲、股関節、骨盤周囲の「骨に響く痛み」は疲労骨折の確認が必要です。

痛みが出たときの考え方

痛みが出たときに大切なのは、すぐに「走ってよいか、走ってはいけないか」の二択で考えないことです。

まず、膝や足が今の負荷に耐えられているかを確認します。

走る量を下げる目安

  • 走っている途中で痛みが強くなる
  • 走ったあとに痛みが長く残る
  • 翌日に痛みが増える
  • 階段や歩行が悪化する
  • 痛みをかばってフォームが崩れる

このような場合は、距離、スピード、坂道、頻度を減らします。

走らずに調整したほうがよい目安

  • 歩行で痛い
  • 痛みで足を引きずる
  • 腫れや熱感がある
  • 片脚ジャンプで強く痛い
  • 骨の一点が強く痛い

この場合は、ランニングを中止して原因を確認することをおすすめします。

痛みがあるときの活動量調整については、膝が痛いときの休み方も参考になります。

ランニングを再開する流れ

痛みが落ち着いたら、いきなり元の距離やスピードに戻すのではなく、段階的に再開します。

第1段階:日常生活で痛みがない

  • 歩いて痛くない
  • 階段で強い痛みがない
  • 片脚立ちができる
  • 翌日に痛みが増えない

第2段階:ウォーキングから始める

まずは短時間のウォーキングで反応を確認します。

ウォーキングで翌日に痛みが増える場合は、まだランニング再開には早い可能性があります。

第3段階:ジョグと歩行を組み合わせる

最初から連続で走らず、短いジョグと歩行を組み合わせます。

  • 1分ジョグ+2分歩行を数回
  • 痛みがなければジョグ時間を少し増やす
  • スピードは上げない
  • 坂道やダッシュは避ける

第4段階:距離を少しずつ戻す

痛みや腫れが出ない範囲で、距離や時間を少しずつ戻します。

距離、スピード、頻度を同時に増やさないことが大切です。

予防のためにできること

走る量を記録する

痛みが出たときに、何が変わったのかを振り返るために、走行距離、時間、スピード、路面、坂道、痛みの有無を記録しておくと役立ちます。

急に増やさない

距離やスピードを増やすときは、一度に大きく変えないようにします。

特に、初心者、久しぶりに再開する方、成長期の子どもでは慎重に増やします。

筋力トレーニングを入れる

ランニングでは、太もも、お尻、股関節、ふくらはぎ、足部の筋力が重要です。

筋力トレーニングは、痛みが出た場所だけでなく、体全体で衝撃を受け止めるために行います。

膝の筋力トレーニングについては、膝の筋力トレーニングを参考にしてください。

ストレッチで動きやすさを保つ

ふくらはぎ、太もも、股関節まわりが硬いと、膝や足への負担が増えることがあります。

ストレッチについては、膝のストレッチも参考になります。

靴や路面を見直す

靴が古い、サイズが合わない、急に靴を変えた、硬い路面や下り坂が増えた場合は、痛みのきっかけになることがあります。

靴だけで障害がすべて防げるわけではありませんが、急な変更は避けたほうが安全です。

子ども・成長期のランニング障害

成長期の子どもでは、大人とは違う注意点があります。

骨が成長している時期は、骨端線、骨端症、腱付着部の痛み、疲労骨折が問題になることがあります。

  • 膝の前が痛い
  • かかとが痛い
  • すねが痛い
  • 股関節や太ももが痛い
  • 足を引きずる
  • 痛みが数週間続く

成長期の痛みは、「成長痛だから大丈夫」と決めつけないことが大切です。

子どもの膝痛については、子ども・成長期の膝の痛み、かかとの痛みについては子どものかかとの痛みも参考にしてください。

よくある質問

Q1. ランニング中に少し痛みがあっても走ってよいですか?

軽い違和感で、走っている途中に悪化せず、翌日に痛みや腫れが増えない場合は、負荷を下げて様子をみられることがあります。ただし、痛みが強くなる、足を引きずる、骨に響く痛みがある場合は走るのを中止してください。

Q2. 何日休めば治りますか?

原因によって異なります。軽い使い過ぎであれば数日から数週間で改善することがありますが、疲労骨折、腱障害、成長期の骨の痛みでは長引くことがあります。日数だけでなく、歩行痛や翌日の反応を確認します。

Q3. 痛みがなくなったらすぐ元の距離に戻してよいですか?

おすすめしません。痛みが落ち着いても、組織が元の負荷に耐えられるとは限りません。ウォーキング、短時間ジョグ、ジョグと歩行の組み合わせから段階的に戻します。

Q4. フォームを変えれば治りますか?

フォーム修正が役立つことはありますが、フォームだけで解決しないことも多いです。走る量、スピード、坂道、筋力、柔軟性、睡眠、靴、路面なども合わせて見直します。

Q5. ランニング障害の予防には何が大切ですか?

急に走る量を増やさないこと、痛みが出たら早めに負荷を調整すること、筋力と柔軟性を保つこと、休養を入れることが大切です。

まとめ

ランニング障害は、走る量、強度、頻度、路面、筋力、柔軟性、疲労などが重なって起こります。

痛みが出たときは、痛い場所だけでなく、最近変わった練習内容を振り返ることが大切です。

歩行痛、足を引きずる、骨の一点を押すと強い痛み、片脚ジャンプで強い痛みがある場合は、疲労骨折などを確認するために受診をおすすめします。

再開するときは、いきなり元の距離へ戻さず、ウォーキング、短時間ジョグ、ジョグと歩行の組み合わせから段階的に進めましょう。

参考文献

  1. Yamato TP, et al. A consensus definition of running-related injury in recreational runners: a modified Delphi approach. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2015.
  2. Videbæk S, et al. Incidence of running-related injuries per 1000 h of running in different types of runners: a systematic review and meta-analysis. Sports Medicine. 2015.
  3. Winter SC, et al. The association between running injuries and training parameters: a systematic review. Journal of Athletic Training. 2021.
  4. Emery CA, et al. Do exercise-based prevention programs reduce injury in endurance runners? A systematic review and meta-analysis. Sports Medicine. 2024.
  5. Willy RW, et al. Patellofemoral Pain: Clinical Practice Guidelines. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2019.

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。ランニング中の痛み、歩行痛、腫れ、熱感、骨に響く痛み、足を引きずる症状がある場合は、整形外科などの医療機関へご相談ください。