歩くと膝が痛いのはなぜ?原因・受診目安と歩き方の工夫
歩くと膝が痛む原因は一つではありません。中高年では変形性膝関節症がよくみられますが、半月板損傷、内側半月板後根断裂、膝軟骨下不全骨折、膝蓋大腿痛、腱や滑液包の障害などでも歩行時痛が起こります。
また、「膝が痛い」と感じていても、腰や股関節、血管、神経の病気によって脚の痛みが起きている場合があります。
歩くことは、筋力、体力、生活の自立を保つために重要です。慢性的な変形性膝関節症などでは、症状に合わせた歩行や運動が治療の中心になります。一方、突然の強い痛み、骨折や膝軟骨下不全骨折、急性の靱帯・半月板損傷などでは、一時的に荷重を減らす必要があります。
「痛くても歩くべきか」「休んだ方がよいか」は、病名、痛み方、腫れ、歩き方の変化によって判断することが大切です。
当日または早めに医療機関を受診した方がよい症状
- 転倒やスポーツ外傷後に体重をかけられない
- けがの後、数時間以内に膝が大きく腫れた
- 明確な大けががないのに突然強く痛み、歩けなくなった
- 膝が引っかかり、完全に伸ばせない
- 膝が何度も抜ける、ぐらついて転びそうになる
- 膝が赤く熱を持ち、発熱や全身のだるさを伴う
- 片脚のふくらはぎまで腫れ、熱感や赤みがある
- 胸痛、突然の息苦しさ、血の混じったせき、失神を伴う
- 足先が冷たい、白い、紫色になる、しびれや麻痺がある
- 夜間・安静時にも強く痛み、徐々に悪化している
歩き始め・歩行中・歩いた後では原因が違いますか?
痛みが出るタイミングは診断の手がかりになります。ただし、タイミングだけで病名を確定することはできません。
| 痛み方 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 立ち上がり・歩き始めが痛い | 変形性膝関節症、膝蓋大腿痛、関節のこわばりなど |
| 歩くほど徐々に膝が痛くなる | 変形性膝関節症、膝蓋大腿痛、腱障害、筋力・負荷の問題など |
| 一歩ごとに鋭く痛む | 半月板損傷、後根断裂、膝軟骨下不全骨折、急性炎症など |
| 歩いた日の夕方や翌日に腫れて痛む | 関節水腫、変形性膝関節症、半月板・軟骨病変、負荷の増やしすぎなど |
| 毎回ほぼ同じ距離で脚が痛み、休むと治る | 末梢動脈疾患、腰部脊柱管狭窄症など |
| 方向転換やでこぼこ道で膝が抜ける | 前十字靱帯などの靱帯損傷、膝蓋骨不安定症、筋力低下など |
痛む場所から考えられる主な原因
| 主に痛む場所 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 膝の内側 | 内側型変形性膝関節症、内側半月板損傷、後根断裂、鵞足部の障害など |
| 膝の外側 | 外側半月板損傷、外側型関節症、腸脛靱帯周囲の障害など |
| 膝のお皿の周囲・奥 | 膝蓋大腿痛、膝蓋大腿関節症、膝蓋骨不安定症など |
| お皿のすぐ下 | 膝蓋腱障害、成長期ではオスグッド病など |
| 膝の裏 | ベーカー嚢胞、半月板後方の損傷、筋腱の障害など |
| ふくらはぎ・脚全体 | 深部静脈血栓症、末梢動脈疾患、腰からの神経痛など |
歩くと膝が痛む主な原因
1.変形性膝関節症
中高年以降の歩行時膝痛で、代表的な原因です。変形性膝関節症は、軟骨だけでなく、半月板、軟骨下骨、滑膜、関節包、靱帯、筋肉など、関節全体に変化が起こる病気です。
- 立ち上がりや歩き始めが痛い
- 歩く距離が長いと痛みや腫れが増える
- 階段、坂道、方向転換がつらい
- 膝が伸びにくい、曲げにくい
- O脚やX脚が目立つ
治療の中心は、個人に合わせた運動療法、患者教育、必要な人への体重管理です。歩くことも有酸素運動の一つですが、痛みで歩き方が崩れる場合は、距離や速度を調整し、自転車や水中運動などを組み合わせます。
2.膝蓋大腿痛
膝蓋大腿痛は、膝蓋骨の周囲や奥に感じる痛みです。若い人から中高年まで起こり、長時間歩行、階段、坂道、スクワットなどで悪化します。
練習量や歩行量の増加、膝・股関節の筋力、動作、痛みへの不安など、複数の要因が関係します。
治療では、患者教育と膝を中心とした運動療法を基本とし、必要に応じて股関節の運動、テーピング、足底板などを組み合わせます。
3.半月板損傷
膝をひねった後から歩行時に関節の内側または外側が痛み、腫れ、引っかかりを伴う場合は、半月板損傷を考えます。
- 一歩ごとに関節のすき間が痛む
- 方向転換やでこぼこ道で痛い
- しゃがむと引っかかる
- 歩いた後に膝が腫れる
- 膝が完全に伸びない
半月板損傷のすべてに手術が必要なわけではありません。ただし、転位した半月板によって膝がロックしている場合は、早期の評価が必要です。
4.内側半月板後根断裂
中高年の人が、階段、立ち上がり、しゃがみ込み、小走りなどをきっかけに突然、膝の後内側を痛め、その後一歩ごとに強く痛む場合は、内側半月板後根断裂を考えます。
- 発症時に「ブチッ」「ポキッ」と感じた
- 膝の後内側が痛い
- 体重をかけると強く痛む
- 数日休んでも改善しにくい
- 夜間や安静時にも痛む
一般的な変性半月板損傷とは治療方針が異なるため、立位X線とMRIなどで評価します。
5.膝軟骨下不全骨折
膝軟骨下不全骨折は、関節軟骨の下にある骨へ小さな骨折が起こる病気です。中高年以降に多く、明確な転倒がなくても突然発症します。
- 突然、体重をかけると強く痛むようになった
- 夜間・安静時にも痛む
- 痛む場所が限局している
- X線で大きな異常がないと言われても痛みが強い
初期にはX線で分かりにくい場合があります。疑われる場合はMRIを行い、病変に応じて荷重を調整します。通常の関節症と考えて痛みを我慢しながら歩き続けないことが重要です。
6.腱・滑液包・筋肉の障害
膝蓋腱、大腿四頭筋腱、鵞足部、腸脛靱帯周囲などの障害でも歩行時痛が起こります。
これらは、押すと限られた場所が痛むことや、坂道、速歩、運動量の増加で症状が出ることがあります。
7.靱帯損傷・膝の不安定性
前十字靱帯などを損傷した膝では、平地では歩けても、方向転換、でこぼこ道、坂道で膝が抜けることがあります。
痛みによって大腿四頭筋へ力が入りにくくなり、実際には靱帯が切れていなくても「膝がカクッとする」と感じる場合もあります。
8.ベーカー嚢胞・ふくらはぎの病気
膝関節の腫れに伴って膝裏にベーカー嚢胞ができると、歩行時に膝裏やふくらはぎが張ることがあります。嚢胞が破裂すると、ふくらはぎが急に痛く腫れる場合があります。
片脚だけの腫れ、熱感、赤みがある場合は、深部静脈血栓症との区別が必要です。胸痛や突然の息苦しさを伴う場合は、直ちに救急要請してください。
9.腰や股関節からの関連痛
腰椎の神経が圧迫された場合や股関節に病気がある場合、膝周囲に痛みを感じることがあります。
- 腰や臀部から脚へしびれが広がる
- 前かがみや座位で楽になる
- 股関節が動かしにくい
- 鼠径部や太ももにも痛みがある
- 膝の診察だけでは痛みの原因が説明できない
膝の画像に変形があっても、すべての痛みが膝由来とは限りません。
10.末梢動脈疾患・腰部脊柱管狭窄症
歩くと毎回ほぼ同じ距離で、ふくらはぎ、太もも、臀部などが痛み、休むと軽くなる状態を間欠性跛行といいます。
末梢動脈疾患では、歩行によって脚の血流が不足し、休むと比較的速く軽くなります。腰部脊柱管狭窄症では、立位や歩行で症状が出て、座る・前かがみになると楽になる傾向があります。
足が冷たい、傷が治りにくい、足の色が変わる場合は、血管の評価が必要です。
歩くと痛いときも、歩いた方がよいですか?
慢性的な変形性膝関節症や膝蓋大腿痛では、適切な運動を完全に中止する必要はありません。運動療法は、痛みや身体機能を改善するための基本治療です。
一方、次の状態では、歩行量を減らし、原因を確認する必要があります。
- びっこを引くほど痛い
- 一歩ごとに鋭く痛む
- 歩くほど急速に悪化する
- 歩いた後に膝が大きく腫れる
- 夜間・安静時痛が強い
- 突然発症した強い荷重時痛がある
- 膝崩れやロッキングがある
「痛いほど歩けば強くなる」わけではありません。
歩行は治療になりますが、痛みで歩き方が大きく崩れたり、腫れや翌日の悪化が続いたりする負荷は多すぎます。病態に合った量へ調整してください。
歩く量はどのように調整しますか?
「1日1万歩」などの一律の目標は必要ありません。現在歩ける量、痛み、体力、生活環境に合わせます。
短い時間から分けて歩く
長時間を一度に歩くと痛む場合は、短い歩行と休憩を繰り返します。たとえば、買い物を一度に済ませず、歩く日と休む日を調整する方法もあります。
運動後と翌日の反応を確認する
次のような場合は、負荷がおおむね許容範囲と考えられます。
- 歩き方が大きく崩れない
- 歩行中の痛みが増え続けない
- 休むと痛みが落ち着く
- 翌朝に明らかな腫れや痛みの増加がない
翌日まで強く悪化する場合は、距離、速度、坂道、連続時間のいずれかを減らしてください。
歩数より継続性を重視する
歩数計は活動量を把握するために役立ちますが、数字を達成するために痛みを我慢しないでください。まず現在の無理のない歩数を把握し、症状を見ながら少しずつ増やします。
膝への負担を調整する歩き方
歩幅を少し小さくする
痛みが強いときに大きな歩幅で速く歩くと、膝を支える力が増えます。無理のない範囲で歩幅を少し小さくし、一定のリズムで歩くと楽になる場合があります。
平坦な道から始める
坂道、階段、でこぼこ道は、平地より高い筋力とバランスを必要とします。症状が強い時期は、平坦で休憩できる場所を選びます。
痛みを隠すために極端な歩き方をしない
つま先を必ず正面へ向ける、膝を完全に伸ばして歩く、足を一直線に置くなど、一つの「正しい歩き方」を全員に当てはめることはできません。
無理にフォームを作るより、上体を大きく傾けず、痛みの少ない自然な歩幅から始めます。痛みで明らかにびっこを引く場合は、歩行量を減らすか、杖を利用してください。
杖を使う
杖は、基本的に痛い膝と反対側の手で使用します。痛い脚と杖を一緒に前へ出し、その後、痛くない脚を進めます。
杖を使うことは「負け」ではなく、安全に活動量を維持するための方法です。高さや使い方が合わない場合は、医療者に調整してもらってください。
靴を確認する
滑りにくく、足に合い、かかとが安定する靴を選びます。特定の高価な靴やインソールが、すべての膝痛を改善するわけではありません。
歩行を楽にするための運動
歩行には、膝だけでなく、股関節、ふくらはぎ、バランス能力が関係します。危険な病気が除外され、運動を行ってよい状態であれば、次の運動から始めます。
1.太ももに力を入れる運動
- 仰向けまたは座った姿勢で膝を伸ばします。
- 膝の裏を床やタオルへ軽く押しつけ、太ももの前へ力を入れます。
- 数秒保ってから緩めます。
目安:5~10回から開始します。
2.椅子からの立ち上がり
- 安定した椅子に浅く座ります。
- 両足を床へ置き、体を少し前へ傾けます。
- 両脚で床を押して立ち、ゆっくり座ります。
目安:6~10回を1~2セット。
痛い場合は、椅子を高くするか、手を軽く使います。
3.股関節を横へ開く運動
- 手すりや椅子を持って立ちます。
- 体を傾けず、片脚を横へゆっくり開きます。
- ゆっくり戻します。
目安:左右6~10回を1~2セット。
4.かかと上げ
- 手すりや椅子の背を持ちます。
- 両足のかかとをゆっくり上げます。
- ゆっくり下ろします。
目安:10~15回を1~2セット。
5.片脚で支える練習
安全な場所で手すりを持ち、片脚へ少しずつ体重を移します。完全な片脚立ちが難しい場合は、反対のつま先を床につけたまま行います。
運動後に膝が腫れる、びっこが増える、翌日まで強く悪化する場合は、回数や負荷を下げてください。
歩く代わりにできる運動
歩行で痛みが強い場合は、膝への荷重を調整しやすい運動を組み合わせます。
- エアロバイク
- 水中歩行・水泳
- 座位での筋力運動
- 上半身を使う有酸素運動
ただし、急性の骨折、膝軟骨下不全骨折、術後などでは運動内容が制限される場合があります。担当医の指示を優先してください。
整形外科ではどのように調べますか?
問診
痛む場所、歩き始め・歩行中・歩行後のどこで痛むか、歩ける距離、外傷、腫れ、夜間痛、ロッキング、不安定感などを確認します。
診察
歩き方、O脚・X脚、膝の腫れ、可動域、圧痛、半月板・靱帯、筋力、股関節、腰、足の脈拍などを評価します。
X線検査
慢性的な膝痛では、一般にX線が最初の画像検査です。変形性膝関節症、骨折、骨の変化、関節のすき間、アライメントなどを確認します。
MRI検査
すべての歩行時膝痛にMRIが必要なわけではありません。次の場合に検討します。
- 突然の強い荷重時痛があり、X線で原因が分からない
- 膝軟骨下不全骨折や内側半月板後根断裂が疑われる
- 外傷後に半月板・靱帯・軟骨損傷が疑われる
- ロッキングがある
- 適切な治療を行っても症状が続く
超音波・血液検査など
関節水腫、ベーカー嚢胞、腱、静脈血栓などには超音波が役立つ場合があります。感染、痛風・偽痛風、炎症性関節疾患が疑われる場合は、血液検査や関節液検査を行います。
よくある質問
歩くと軟骨がさらにすり減りますか?
通常の適切な歩行を行っただけで、直ちに軟骨が削れて関節症が悪化するとは考えません。変形性膝関節症では、個人に合った運動が基本治療です。
ただし、強い痛みや腫れを我慢し、歩き方が大きく崩れた状態で長距離を歩き続ける必要はありません。
毎日歩いた方がよいですか?
毎日歩ける人もいれば、歩く日と軽い運動の日を分けた方がよい人もいます。頻度よりも、症状を悪化させず継続できることが重要です。
1日何歩を目標にすればよいですか?
全員に共通する歩数目標はありません。まず現在の無理のない歩数を把握し、歩行後と翌日の状態を確認しながら少しずつ増やします。
歩き始めだけ痛く、しばらくすると楽になります。受診は必要ですか?
変形性膝関節症などでみられる症状ですが、痛みが続く、腫れる、可動域が低下する場合は一度評価を受けてください。
歩いた後に膝が腫れます。歩きすぎですか?
負荷が現在の膝の能力を超えている可能性がありますが、半月板損傷や関節炎などが隠れている場合もあります。距離を減らしても腫れを繰り返す場合は受診してください。
杖はどちらの手で持ちますか?
基本的には、痛い膝と反対側の手で持ちます。痛い脚と杖を一緒に前へ出します。
自転車の方が膝に良いですか?
自転車は歩行より荷重を調整しやすく、変形性膝関節症などの有酸素運動として役立つ場合があります。ただし、サドルが低すぎると膝が深く曲がり痛むことがあります。
歩くと毎回ふくらはぎが痛み、休むと治ります。膝の問題ですか?
末梢動脈疾患や腰部脊柱管狭窄症による間欠性跛行の可能性があります。喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症などがある人は、医療機関で血流を含めて評価してください。
どのくらい続いたら受診すべきですか?
荷重不能、急な腫れ、発熱、ロッキングなどがあればすぐに受診してください。危険な症状がなくても、歩行距離が短くなっている、数週間改善しない、徐々に悪化する場合は、期間だけで判断せず相談してください。
まとめ
歩くと膝が痛む原因には、変形性膝関節症、膝蓋大腿痛、半月板損傷、内側半月板後根断裂、膝軟骨下不全骨折、腱や靱帯の障害などがあります。
毎回ほぼ同じ距離で脚が痛み、休むと軽くなる場合は、末梢動脈疾患や腰部脊柱管狭窄症も考える必要があります。
慢性的な膝痛では、歩行や運動を完全に避けるのではなく、距離、速度、坂道、休憩を調整しながら継続します。一方、突然の強い荷重時痛、荷重不能、急な腫れ、ロッキング、発熱がある場合は、無理に歩かず早めに受診してください。
歩数だけを目標にせず、歩き方、運動後の回復、翌日の腫れや痛みを確認しながら、自分の膝に合う活動量を見つけることが大切です。
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※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。

