病態

半月板断裂を分類する:ISAKOS Classification        

最良の治療法を決定する上で最も重要なのは、外科学的文献に発表された研究ですが、残念ながら、これらの文献はしばしば矛盾しており、異なる治療法が推奨されています。

エビデンスに基づいた医学が採用されるようになった今日、整形外科の文献に掲載するための方法論の基準はどんどん厳格になっています。異なる機関で、また異なる国で診療を行っている我々にとって、リソースを共有することは大切なことです。

研究者間での関節鏡検査と半月板断裂の記録の一貫性は不可欠です。術者間で半月板断裂の分類が一貫していないと、最も厳密に実施された臨床試験の結果に測定誤差が生じる可能性があります。

これらの問題を察知し、 International Society of Arthroscopy, Knee Surgery and Orthopaedic Sports Medicine(ISAKOS)は、アウトカム評価を容易にするための信頼性の高い国際的な半月板評価・文書化システムを開発することを目的として、2006年に小委員会を設立しました。

今回紹介する論文は、そんなISAKOSが4年の年月をかけて2010年に発表した半月板の分類についてです。この分類がについて詳しく見ていこうと思います。(論文の4ページ目を中心に書いています)

2020.11.14_28-Interobserver-reliability-of-the-international-society-of-arthroscopy

Tear Depth:断裂の深さ

部分断裂は半月板の上面または下面のいずれかを通って伸びています。
水平断裂も部分断裂に含めます。完全断裂は、半月板の上面と下面の両方に至ります。

Rim width:(ゾーン分け)

_ Zone 1 tears have a rim width of<3 mm

_ Zone 2 tears have a rim width of 3 to<5 mm

_ Zone 3 tears have a rim width of >5 mm

ゾーン分類では、断裂は2つ以上のゾーンを含むことができます。
断裂範囲に基づ いて等級付けされます。
ただし、ゾーン3、2、1を通る完全な横断裂は、ゾーン1の断裂と表記します。

Radial Location:放射状に分類

a:断裂の位置を後、中、前で示します。
断裂がある場合、その位置にあるすべてのゾーンに応じて表示します。
*内側半月板の完全バケツ柄断裂は、後、中、前のゾーンになります。

b:後部-前部に分類します。
断裂が前方、後方、またはその両方であるかどうかを示す。
*外側半月板中央にある前方から後方への横断裂は、中横断裂と表示すべきである。

委員会では、断裂箇所の記録方法の2種類の方法の信頼性を評価しています。bの方が信頼性は高い結果でしたが、分類にはaを使うほうがわかりやすいですということでISAKOSではaを使用するように推奨しています。

Popliteal hiatus:膝窩筋腱孔

膝窩筋腱裂孔の前に部分的または完全に広がっている外側半月板断裂は、膝窩筋腱裂孔の中心部と評価されます。

 Tear pattern:断裂の種類
Quality of the tissue:組織の状態

断裂は、図面に示されているパターンに従って表記します。
Complex tearsは、2つ以上の断裂パターンが組み合わさったものです。

変性の特徴としては、空洞、複数の断裂パターン、軟化した半月板組織、フィブリル化などの退行性変化が挙げられます。

Length of tear:断裂の長さ

ミリ単位で測定します。
横断裂の長さは、半月板の中まで伸びている断裂距離で表します。

Drawing on the diagram:部分切除の範囲を表記します

摘出された半月板組織の量を図に描き、摘出されたメニスカスの部分を線で区切って表示します。

The percentage of meniscus:残存半月板の割合

摘出した半月板(表面積)の割合を示します

Interobserver reliability

委員会のメンバーではない経験豊富な整形外科医 8 名の国際的なオブザーバー間信頼性を決定した。これらの外科医は8カ国(オーストラリアベルギーブラジルフランスドイツイタリア日本米国)から選抜されています。4大陸のスポーツ医学学会(AOSSM、APOSSM、ESSKA、SLARD)の会員であることが条件でした。

この研究の結果は、異なる施設や国で診療を行っている研究者間の観察者間信頼性が、断裂の深さ位置断裂パターン長さ組織の質切除された半月板の割合を評価する上で有用であることを示しました。

研究に参加した8人の外科医は8カ国、4大陸に住んでいたため、結果は場所(国や地域)が変わっても信頼できる分類ということが出来ます。