保存療法

変形性膝関節症の保存療法 第4回 減量について

体重過多の状態と肥満(BMIがそれぞれ25~29.9kg/m2または30kg/m2以上)は、変形性膝関節症の発症と進行、および人工関節に進行する危険因子です。

BMIとは肥満指数のことでBMI=体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)}という計算式で求めます。
今は自動で計算してくれるサイトがたくさんありますので”BMI”で検索すればすぐに見つけることが出来ます。

日本肥満学会PDFより抜粋

上の表で見るとBMIが25未満が正常範囲ということになります。
体重過多は肥満度1の人のことです。肥満はBMIが30以上の肥満度2からということになるようです。

メタ分析によると、BMIが ”5” 増加すると変形性膝関節症のリスクが35%増加することがわかりました。

この関連性の病態生理学は、過剰な体重が関節負荷の増加、相対的な筋力低下、およびアディポカインとして知られる脂肪率に関連した全身性炎症性タンパク質を引き起こすことで、機械的および代謝的に障害を受けます。

肥満の病態生理のキーワード

1、過剰な体重が関節負荷の増加
2、相対的な筋力低下
3、全身性炎症性タンパク質

治療戦略としての減量は、主に食事と運動の変更を中心としたライフスタイルの変更が、痛みと身体機能に臨床的に有意な改善をもたらすことがわかっています。

変形性膝関節症患者が減量を行った研究を紹介します。

変形性膝関節症の体重過多の患者419人を対象に、カロリー制限と部分的な食事変更をベースとした食事または運動、またはその両方の組み合わせを18ヵ月間行った場合の効果が調査された。
この研究では、体重を10%以上減少させることで、6分歩行テストと歩行速度で測定される自己申告の痛み、機能、可動性が有意に増加したことが示されました。さらに、研究者らは、体重を10%以上減少させた人の間で、膝の圧迫力と炎症性メディエーターであるインターロイキン-6の血清中濃度が低下していることを発見した。このことは、変形性膝関節症の基礎となる力学的および炎症性経路の調節における体重減少の潜在的な役割を支持するものである。

以上のような研究結果が出ています。
要約すると、体重過多の範囲(BMI:25-30)にある人は自分の体重を10%(*体重過多の人:体重60㎏を10%(6㎏)落として54㎏にする)落とすことで、歩くスピード・痛み・運動のしやすさが改善される。ということです。

良いことだらけのようですが、体重減少が関節構造の進行に及ぼす影響は明らかにされていません。つまり、減量したからと言って、軟骨が良くなったりすることはないということです。

しかしながら、メリットの方が圧倒的に多いため、膝が痛いと思えば自分のBMIを確認し、自分が、どのカテゴリーに入っているかを確認する。体重過多に入っていれば体重の10%を1年程度かけて落としていくことをお勧めします。