治療

半月板損傷 術後のリハビリ

半月板を怪我して手術を行ったあとには、リハビリを行います。

しかし、入院中にできるリハビリには限界があります。

患者さんの仕事や学業復帰を遅らせないために長期のリハビリ加療は現実的に不可能と言ってもいいのではないでしょうか。

医療者側と患者さん側相互のジレンマを解決すべく、毎日多くの患者さんを治療してくれているリハビリスタッフが、家で行うリハビリを丁寧に解説してくれました。

紹介します。杉村将太先生です。先生は岡山県にある倉敷市立市民病院でリハビリ加療を行っており、日々抱える問題解決に向けて積極的に取り組むナイスガイです。

それでは、杉村先生の解説を動画と合わせてみていきましょう。

半月板損傷の発生機序

半月板は膝関節の荷重を分散し膝の安定性を高めます。つまり膝にかかる荷重を和らげるクッションの役割です。しかし、半月板はその構造から重力方向への力には強いものの回旋方向への力(膝を捻じる方向)への力には弱いのが特徴です。そのため若年層のスポーツ外傷の中でも高頻度に発生する疾患の一つです。

 膝関節運動に伴う半月板の動きを確認します。まず、膝関節伸展では大腿骨と脛骨の接触面が前方に移動することに伴い半月板も前方に移動します。また伸展時には半月板の前側に圧力が加わります。次に、膝関節屈曲では大腿骨と脛骨の接触面が後方に移動することに伴い半月板は後方移動し後方に圧力が加わります。

つまり、半月板損傷の前側損傷は膝関節伸展位、半月板損傷の後方の損傷は膝関節屈曲位でそれぞれ回旋ストレスがかかった時に発生しやすいことが予想されます。

半月板部分切除術・縫合術の長所と短所

スポーツ選手において半月板損傷後に変形性膝関節症の進行や疼痛、関節水腫(膝に水がたまる)などにより引退に追い込まれることがあります。

そのスポーツ選手の状況に合った治療選択ができるようにそれぞれの治療の特徴を正しく理解することが必要です。

半月板部分切除術

損傷した半月板を部分的に切り取り除く手術です。

その最大の長所は競技復帰までの期間が短いことです。

イングランドのプロサッカー選手に対する検討では、約5~7週で試合できるようです。しかし、短所としては関節軟骨損傷を起こしやすく協議復帰後も疼痛や関節水腫に悩まされるケースが多い事です。そのため長期的には変形性膝関節症へ進行するケースがあります。早く復帰するためのリスクを自分で取る必要がありますね。

長所と短所

・早期復帰可能
・将来、変形性膝関節症に至るリスクがある

半月板縫合術

損傷した半月板を縫合する手術です。

長所としては長期的に予後が良好であることです。

システマティックレビューにおいて約90%の選手が元のレベルまでの競技復帰ができたと報告があります。さらに長期の軟骨変性を比較した報告でも部分切除術では9年後に約6割の患者に変性を認めたのに対し、縫合術では約8割で正常な関節が保たれていたとあります。短所としては、術後2年間で約25%の再断裂を認めること、そして競技復帰までの期間が部分切除術と比べて長いことがあります。

長所と短所

・将来にわたり軟骨の変性を防ぐ効果
・早期復帰困難であり、再断裂のリスクもある

半月板損傷後のリハビリテーション

半月板縫合術後についてのリハビリについて記載します。

術後のリハビリは再損傷の予防に配慮することが重要です。

また半月板は神経線維に乏しいため疼痛での評価がしにくい特徴があるため、疼痛だけでなく、腫脹・熱感・や引っかかり感の有無に注意する必要があります。

これらの症状が急激に出現、増悪し持続する場合は運動負荷を制限する必要があります。

術後の経過

半月板縫合術の場合は半月板の“切れ方”によって期間が延長することがあるため、この経過はあくまで目安です。

術後1~2週間:膝関節シーネ固定、松葉杖歩行完全免荷

術後2~3週間:膝関節0-45度まで許可。松葉杖歩行20kgの体重をかけて歩く

術後3~4週間:膝関節0-60°まで許可。松葉杖歩行40kgの体重をかけて歩く
(体重が40㎏台であれば全ての体重を両足で支えることが出来ます。40㎏以上の人はもう少し我慢が必要になります。)

術後4~5週目:膝関節0-90度まで許可。松葉杖歩行で全ての体重をかけて歩く
この時期になると痛みもないため、どんどんできるような気分になります。

この時期(術後4~5週目)に重要なポイントが2つあります

  • 日常生活で膝関節0-90度が守れること。
  • 完全伸展できる膝関節であること。

完全伸展(伸びている)した膝とは文字通り両膝を伸ばした時に左右差がないことを指します。目標はうつ伏せになり足を垂らした時に踵の位置が同じであることを目指します。

踵の位置が同じ(良い例)
右膝が伸びていないため右踵の位置が高い(悪い例)

またもう一つ重要なことは自分で足を持ち上げても(リハビリではSLRといいます)、膝が完全伸展を保てていることです。

右膝が真っ直ぐ伸びて持ち上げれている(良い例)
右膝が曲がって持ち上げている(悪い例)

この2つが術後早い時期から出来ないと松葉杖なしで歩行が難しくなります。
そのため、これが獲得できないとスクワットなどの筋力トレーニングの開始を遅らせることになりかねません。

運動療法ではクアドセッティングを行います。
膝下をベッドに押し付けるように力を入れます。膝下にタオルや枕を入れると大腿四頭筋の収縮が分かりやいです。

クアドセッティングの導入

この訓練に慣れてくれば、タオルなしで膝下をベッドに押し付けるような訓練に移行します。

膝下をベッドに押し付ける

とても地味な運動ですが、最重要な運動と言っても過言ではありません。

次に、膝蓋下脂肪体のマッサージを紹介します。

膝蓋骨(お皿の骨)の下を持って左右に動かしマッサージします。術創部があるためそこは持たないようにしましょう。

膝蓋下脂肪体のマッサージ

退院後の筋力トレーニング 「ジョギング開始前まで」

入院、手術で弱った筋力を回復させるためには自主トレが非常に大事です。

しかし、勝手な自主トレは膝の痛みを誘発したり、再断裂をきたしたりと却って逆効果となる可能性があります。

ここでは、動画を使用してトレーニング方法を紹介していきます。

まずは、ランニングやジョギングを行う全身の耐久性をつける必要があります。それは、膝だけでなく上肢や体幹においても言えることです。

退院後の筋力トレーニング 「ランニング開始から競技復帰まで」

ランニングが出来るようになれば、いよいよ実践で使える筋肉やバランスを鍛えていく必要があります。

半月板を怪我して手術を受けると、復帰まで多くの月日を要します。

しかし、大事なことはリハビリを行うことで自分の体の癖や筋力低下を見抜くことです。

これらのことを確認し鍛えていくことは、将来のあなたの体にとって必ずいい結果をもたらします。