病態

ランナー膝

ランナー膝とは

原因:お皿(膝蓋骨)の動きに問題があり、大腿骨と膝蓋骨の軟骨に余分な負荷がかかること

症状:膝蓋骨の下や横に所在のはっきりしない鈍い痛み

回復までの期間:一般的には4-6週(適切な治療を行うことで)

はじめに、ランナー膝=腸脛靭帯炎と考えている人が多く、これは、整形外科医にも多い間違いの一つです。

ランナー膝とは、膝蓋骨の周囲に痛みを生じるいくつかの疾患のうちの1つを表す一般的な用語です。

これらの症状には、anterior knee pain syndrome、Patellofemoral pain syndrome(膝蓋大腿部症候群)、膝蓋軟骨軟化症、腸脛靭帯炎などがあります。

これらの総称をランナー膝と分類するため、結果的にその頻度も多くなり、ランニングなどのスポーツにおける怪我の25%を占めているというデータもあります。

ここでは、混乱を避けるため腸脛靭帯炎を切り離して話を進めることにします。

腸脛靭帯炎を除くこれらの怪我は、お皿(膝蓋骨)の動きに問題があり、膝蓋骨の裏に摩擦が生じることが原因とされており、内側広筋の弱さとも関連していることが多いです。

症状は徐々に現れ、運動に応じて出たり消えたりする傾向があります。実はランニングによる膝の痛みの原因はランナー膝だけではありません。そのため、オフィスワーカーなど座っていることが多い人にもランナー膝という診断がついたりします。

ここでは、「ランナー膝」の原因症状治療法について解説します。

ランナー膝の原因

ランナー膝の原因は、その名の通りランニングが多いのですが、膝関節に繰り返し負担をかけるような活動をしていると、この障害を引き起こす可能性があります。ウォーキング、スキー、自転車、ジャンプ、サッカーなどがこれにあたります。

ハーバード大学の研究ではランナー膝は男性よりも女性に多く見られ、特に中年の女性に多いようです。太っている人は特にこの障害になりやすいと言われています。

ランナー膝になりやすい人

・女性
・中年
・太っている人

ランナー膝で病院へかかる患者さんの多くは、お皿(膝蓋骨)の動きに問題があり、大腿骨と膝蓋骨の軟骨に余分な負荷がかかることが原因のことが多いです。

膝蓋骨は、膝の前部にある大腿骨(太ももの骨)の溝に収まっており、非常に厚い軟骨で裏打ちされています。膝蓋骨は、この溝の中で上下左右に滑走します。

膝蓋骨の動きを妨げる要因はいくつかありますが、いずれも膝蓋骨を通過する力や摩擦を増大させ、ランナー膝を引き起こします。

それでは、膝蓋骨の動きを妨げる要因について一つ一つ見ていきましょう。

筋力低下

筋力が低下すると、膝周りのサポート力(特に内側広筋)が低下し、膝蓋骨が受ける力が増大します。

また、膝の片側の筋肉が弱かったり、反対側の筋肉が強すぎたりすると、膝にかかる力は膝蓋骨の通り道である溝の中央ではなく内側・外側のいずれかにずれてしまい、摩擦が生じます(内側広筋の筋力が低下することが多いため、通常は外側にずれることになります)。

つまり、筋力が低下することにより、膝蓋骨にかかる力の増大と膝蓋骨の偏移が起こります。

筋肉が硬くなる

膝蓋骨周辺の筋肉が硬いと、膝蓋骨が硬い筋肉のある方向へ引っ張られます

例えば、外側の筋肉が硬くなれば、膝蓋骨は外側に引っ張られ、内側の筋肉が硬ければ内側に引っ張られます。このため、引っ張られた方向(硬い筋肉がある方向)で膝蓋骨へかかる圧力が増大します

足の異常

扁平足では足が内側に入り込み、膝にかかる力が変化し、膝蓋骨への負担が大きくなります。

Q Angleの増大

上にも書いてある通り偏平足の人は足が内側に入り込みX脚(外反膝)になりやすい傾向にあります。

Q angleとは大腿骨と脛骨の角度のことです。この角度が大きくなる(X脚になる)と、膝蓋骨にかかる負担も大きくなります。

解剖学的異常

生まれつき膝蓋骨の通り道である溝が浅かったり、膝蓋骨自体の形状に問題があったりして、両者が正しく並んでいないために、動きが制限されたり、摩擦が生じたりします。

ランナー膝の症状

ランナー膝は、何かのきっかけで発症するのではなく、徐々に発症するのが一般的です。

膝蓋骨の周り、特に膝蓋骨の下や横に所在のはっきりしない鈍い痛みを訴える人が多いです。

また、ランナー膝では、膝の動きに伴って、ゴリゴリとすり減るような音がすることがあります。症状の強い人は、軽度の膝の腫れが見られることもあります。

ランナーの膝の痛みは、一定ではなく、良くなったり悪くなったりします。

通常は以下のような時に痛みを感じることがあります。

長時間の活動:長距離走、スポーツ、スキー、特に下り坂での運動

階段:特に階段を下りるとき

長時間座った後:映画館、オフィスワーカー、長距離運転

起床時:起きてすぐは膝が痛くなるが、動くと楽になる

ランナー膝の治療

米国整形外科学会では、ランナー膝を予防するために以下の方法を推奨していますが、治療の目的は膝の腫れを軽減し、脚の筋肉のアンバランスを解消することです。

膝の筋力強化

ランナー膝の患者さんは、臀部(でんぶ)や大腿四頭筋が弱いことが多いです。

これらの筋肉を強化することで、膝を不規則に通る力を減らすことができます。

定期的な筋力トレーニングを行いましょう。

ストレッチ

また、筋肉の緊張を和らげることで、膝蓋骨が大腿骨の溝の中で滑るようになり、膝蓋骨の摩擦を減らすことができます。

膝のストレッチのページでは、ランナー膝の痛みの原因が筋肉の緊張にあるかどうかを確認するための簡単なテストや、効果的なエクササイズを紹介しています。

サポーター

サポーターの役割は、膝周りのサポートと膝蓋骨の位置を改善し、ランナー膝に伴う痛みを軽減することにあります。

痛みが軽減するため、サポーターに依存する人が多いのですが、これは根本的な治療ではないことに留意してください。

サポーターをつけて運動することは筋力を断続的に低下させているのと同等です。しっかりと筋力強化も行いましょう。

サポーターには様々なスタイルがありますが、一般的にランナー膝に最適なものは、膝蓋骨に余分な圧力がかからないように前方に穴が開いています。




適切なランニングシューズ

衝撃吸収性に優れた高品質のシューズを購入し、正しく快適にフィットしていることを確認してください。履き古した靴で走らないようにしましょう。


扁平足の方はインソール(靴敷き)を使用しましょう。

インソールを作る時は自己判断せずに整形外科を受診したり、自分の足の型取りをしてくれる専門の靴屋さんに行くことをお勧めします。

そんな時間はないので、とりあえずインソールを試してみたいという人はこのような偏平足に対応したインソールを買うようにしてください。


自分に合ったペースで運動する

ランナー膝は、急激に運動量が増えた後に発症することが多いです。

定期的な運動を始めて間もなくして痛みが出るようであれば、数日休んで膝の痛みを落ち着かせてから、徐々に運動量を増やしたり、全ての運動を陸上で行うのではなく、時には水泳などの衝撃の少ない運動に切り替えたりすることが望ましいです。

はじめの頃は運動中に痛みが出ることはほとんどなく、運動後しばらくして、あるいは一晩経ってから痛みが出ることも多いので、ゆっくりと始め、徐々に増やしていくことを覚えておいてください。

運動後の痛みにはPRICE

運動後に痛みが出てしまった人は、応急処置として最も優れているPRICEを行いましょう。

痛みが出現して早めに対処することは、競技へのを早めることが出来ます。

長時間同じ姿勢でいることを避ける

長時間座っていると痛みが出てくる場合は、定期的に足を動かすようにしましょう。

デスクワークの人は、30分ごとに立ち上がって少し歩くか、それができない場合は、膝の曲げ伸ばしを数回軽く行いましょう。

そうすることで、関節周りの筋肉が緩み、ランナー膝の痛みを軽減することができます。

痛み止め

ロキソニンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、腫れを抑え、痛みを和らげる効果があります。

痛みが続く場合や、膝を動かすのが困難になってきた場合は、医師に相談して評価してもらいましょう。

手術

ランナー膝の痛みに対する外科的治療が必要になることは非常に稀で、非外科的治療で効果が得られない重症の場合にのみ行われます。外科的治療には以下のようなものがあります。

手術は関節鏡を使用して行われますが、膝蓋骨の軟骨や大腿骨の軟骨表面から損傷した関節軟骨を除去することで痛みを減らすことが出来ますが、変形が進むというデメリットもあります。

外側の筋肉が硬くなって膝蓋骨が溝から外れている場合は、Lateral releaseによって組織を緩め、膝蓋骨の位置異常を修正することができます。