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膝の痛みを取り除く新しい方法:冷却ラジオ波焼灼術(CRFA)

膝の痛みは、特に高齢者にとって深刻な問題です。変形性膝関節症(OA)による痛みは、日常生活の質を大きく低下させるだけでなく、動きの自由を奪い、精神的な負担も増やします。従来、ヒアルロン酸(HA)注射やステロイド注射が一般的な治療法でしたが、近年、新たな治療法「冷却ラジオ波焼灼術(CRFA)」が注目されています。この治療法は、膝の痛みを効果的に和らげ、長期間にわたって症状を改善することが期待されています。

参考文献

Cooled radiofrequency ablation of the genicular nerves for chronic pain due to osteoarthritis of the knee

Cooled radiofrequency ablation of genicular nerves for knee osteoarthritis

Crossover Clinical Trial Comparing the Safety and Effectiveness of Cooled Radiofrequency Ablation With Corticosteroid Injection in the Management of Knee Pain From Osteoar

Cooled radiofrequency ablation provides extended clinical utility in the management of knee osteoarthritis 12-month results

 

CRFAとは何か? 

CRFAは、特殊なラジオ波を用いて膝の痛みを伝える神経を焼灼する方法です。通常のラジオ波焼灼法(RFA)とは異なり、CRFAは冷却技術を併用することで、より広範囲かつ効果的に神経を遮断します。これにより、痛みの伝達を妨げると同時に、周囲の組織へのダメージを最小限に抑えることができます。

 

研究結果から見るCRFAの効果

最近の研究では、CRFAの効果が大きく注目されています。177名の変形性膝関節症患者を対象とした前向き無作為化試験では、CRFAとヒアルロン酸(HA)注射を比較しました。この試験の結果、CRFAを受けた患者の65.2%が、12ヶ月後に痛みが50%以上軽減したと報告しています。また、痛みの評価スコア(NRS)は2.8±2.4に減少し、全員が生活の質の向上を感じました。さらに、CRFAを受けた患者の大半が、膝の機能が大きく改善されたと述べています。

一方、ヒアルロン酸注射を受けた患者では、6ヶ月後に効果が満足できなかった場合、CRFAに切り替えるクロスオーバーが行われました。これらの患者も、CRFAによって有意な痛みの軽減を経験し、NRS痛みスコアが3.0±2.4に減少しました。このように、CRFAは長期間にわたり持続的な痛みの軽減を提供するだけでなく、生活の質の向上にも寄与しています。

 

他の治療法との比較

従来の治療法と比較して、CRFAはどのような点で優れているのでしょうか?ヒアルロン酸(HA)注射やステロイド注射は一時的な痛みの緩和を提供しますが、CRFAはより長期間にわたり痛みを和らげる効果があります。例えば、別の研究では、CRFAを受けた患者の74.1%が6ヶ月後に痛みが50%以上軽減し、ステロイド注射を受けた患者の16.2%を大きく上回る結果となりました。また、CRFAは痛みの評価スコア(NRS)やオックスフォード膝スコア、全体的な治療効果(GPE)においても優れた改善を示し、痛み止めの使用も減少しました。

 

CRFAの施術方法

CRFAは専門の医師によって行われます。まず、膝の痛みを伝える特定の神経を特定するために、診断神経ブロックが行われます。この段階で、レントゲン透視または超音波ガイドを使用して正確な位置を確認します。次に、患者は仰向けに寝た状態で膝を少し曲げ、局所麻酔を適用します。冷却技術を備えたCRFA電極が、痛みを伝える神経に正確に配置され、ラジオ波を使って神経を焼灼します。冷却機能により、周囲の組織を保護しつつ、効果的に痛みを伝える神経を遮断します。

神経ブロックの手技についてのYoutubeがありますのでこちらを参照ください(英語ですが。。)。

http://Ultrasound Guided Genicular Blocks (2024 update!) (youtube.com)

 

CRFAの利点と安全性

CRFAの主な利点は、その長期的な効果と安全性にあります。従来のラジオ波焼灼法(RFA)と比較して、CRFAは冷却技術を活用することで、より大きな焼灼範囲を持ち、神経の効果的な焼却を可能にします。これにより、長期間の痛みの軽減が期待できます。また、CRFAは重篤な副作用がほとんど報告されておらず、安全性が高いとされています。

 

CRFAの適応と限界

CRFAは、保存的な治療に反応しない変形性膝関節症患者に特に有効です。また、人工膝関節置換術を受けることができないか、希望しない患者にも適しています。例えば、重度の肥満や心臓病、精神的な健康問題を抱える患者が対象となります。しかし、CRFAの効果には個人差があり、長期的な追跡調査が必要です。また、浅い部位での施術では皮膚の火傷のリスクがあるため、特に注意が必要です。

 

将来の展望

CRFAは、変形性膝関節症に対する新たな治療オプションとして非常に有望です。今後の研究により、患者選択基準や最適な手技がさらに明確化されることで、より広範な患者に利益をもたらす可能性があります。また、他の治療法との併用や、新たな技術の導入によって、さらに効果的な治療法が開発されることが期待されます。

 

結論

膝の痛みに悩む多くの人々にとって、CRFAは新たな希望の光となる治療法です。特に、従来の治療法で効果が得られなかった場合には、この新しい方法を検討する価値があります。CRFAを受けることで、痛みから解放され、より快適な生活を取り戻すことができるかもしれません。膝の痛みでお悩みの方は、一度医師に相談してみてはいかがでしょうか?CRFAがあなたの生活を大きく変えるかもしれません。