離断性骨軟骨炎とは?成長期の膝痛・スポーツ復帰と手術の目安
離断性骨軟骨炎は、関節の表面を支える軟骨とその下の骨に起こる病気です。英語では Osteochondritis Dissecans と呼ばれ、略して OCD と表記されます。
膝では、太ももの骨である大腿骨の関節面に起こることが多く、成長期のスポーツをしている子どもや中高生で見つかることがあります。
初期には「運動すると膝が痛い」「膝が腫れる」「休むとよくなる」といったはっきりしない症状のことがあります。進行すると、軟骨と骨の一部が不安定になり、膝の引っかかり、ロッキング、膝が伸びない、急な腫れにつながることがあります。
成長期で病変が安定している場合は、運動制限や免荷などの保存療法で治癒を目指せることがあります。一方で、骨片が不安定、関節内に遊離している、成長が終わっている、保存療法で改善しない場合は、手術を検討します。
この記事では、膝の離断性骨軟骨炎について、原因、症状、診断、保存療法、手術、スポーツ復帰の目安を患者さんと保護者向けに解説します。
早めに整形外科を受診した方がよい症状
- スポーツ後に膝が繰り返し腫れる
- 膝が引っかかる、ロックして伸びない
- 膝の中で何かが動く感じがある
- 体重をかけると強く痛い
- 運動を休んでも膝痛が改善しない
- 転倒や接触後から膝が大きく腫れた
- 歩けない、足を引きずる
- 夜間や安静時にも強く痛む
- 発熱、赤み、強い熱感を伴う
- 成長期の子どもで膝の痛みが数週間続く
離断性骨軟骨炎とは
離断性骨軟骨炎は、関節軟骨とその下にある軟骨下骨に限局した病変が起こる状態です。
病名に「炎」とついていますが、現在では単純な炎症だけで起こる病気とは考えられていません。血流、繰り返しの微小外傷、骨の成熟、遺伝的な要因など、複数の要因が関係すると考えられています。
病変が進むと、軟骨と骨の一部が周囲から分離し、不安定になります。さらに進行すると、骨軟骨片が関節内に遊離し、関節ねずみのように動いて膝の引っかかりやロッキングを起こすことがあります。
どこに起こりやすいですか?
膝の離断性骨軟骨炎は、大腿骨の関節面に多く起こります。特に、大腿骨内側顆の外側寄りに起こることが多いとされています。
一方で、大腿骨外側顆、膝蓋骨、滑車部に起こることもあります。大腿骨外側に起こる場合は、円板状半月板などを合併することがあります。
痛みの場所は病変の位置によって変わります。膝の内側が痛い、外側が痛い、膝の奥が痛い、はっきりした場所が分かりにくいなど、症状だけで部位を特定するのは難しいことがあります。
なぜ起こるのですか?
離断性骨軟骨炎の原因は一つではありません。はっきりした原因が分からないこともあります。
関係すると考えられている要因
- スポーツによる繰り返しの微小外傷
- ジャンプ、ダッシュ、方向転換の反復
- 軟骨下骨への血流の問題
- 成長期の骨の未成熟さ
- 膝の形や荷重のかかり方
- 円板状半月板などの合併
- 家族性・遺伝的要因
スポーツをしている子どもに多く見つかりますが、スポーツだけが原因とは限りません。
子どもと大人で治りやすさが違います
離断性骨軟骨炎では、成長線が開いているかどうかが重要です。
成長期で骨の成長が残っている子どもでは、病変が安定していれば、保存療法で治癒する可能性があります。
一方で、成長が終わっている、病変が不安定、骨軟骨片が遊離している場合は、自然治癒が難しく、手術を検討することがあります。
| 状態 | 治療の考え方 |
|---|---|
| 成長期・安定病変 | 運動制限、免荷、装具など保存療法を優先しやすい |
| 成長期・不安定病変 | 保存療法だけで難しい場合があり、手術を検討 |
| 成長終了後 | 治癒しにくいことがあり、病変の状態により手術を検討 |
| 遊離体・ロッキングあり | 関節鏡手術や骨軟骨片の処置を検討 |
主な症状
離断性骨軟骨炎の初期症状は、はっきりしないことがあります。
初期に多い症状
- 運動すると膝が痛い
- 走ると痛い
- ジャンプやダッシュで痛い
- 練習後に膝が重い
- 膝が軽く腫れる
- 休むと楽になる
- 痛む場所がはっきりしない
進行したときの症状
- 膝が繰り返し腫れる
- 膝が引っかかる
- 膝がロックして伸びない
- 関節内で何かが動く感じがある
- 膝を曲げ伸ばしすると痛い
- 歩行でも痛い
- スポーツ復帰後にすぐ痛みが戻る
膝の引っかかりやロッキングがある場合は、骨軟骨片が不安定になっている可能性があります。
離断性骨軟骨炎と間違えやすい病気
成長期の膝痛には多くの原因があります。離断性骨軟骨炎は、痛みの場所や症状がはっきりしないことがあるため、ほかの病気との区別が大切です。
半月板損傷
ひねった後の痛み、関節のすき間の痛み、引っかかり、ロッキングがある場合は半月板損傷を考えます。
円板状半月板
外側の離断性骨軟骨炎では、円板状半月板を合併することがあります。膝外側の痛み、引っかかり、クリック音がある場合に確認します。
オスグッド・シュラッター病
膝のお皿より下の脛骨粗面が痛い場合は、オスグッド病を考えます。離断性骨軟骨炎とは痛む場所と病態が異なります。
Sinding-Larsen-Johansson症候群
膝のお皿の下端が痛い場合は、Sinding-Larsen-Johansson症候群を考えます。
Sinding-Larsen-Johansson症候群について詳しく見る
膝蓋骨脱臼・骨軟骨損傷
膝のお皿が外れた後に膝が大きく腫れた場合は、膝蓋骨脱臼に伴う骨軟骨損傷を確認する必要があります。
診断方法
問診
痛みが出た時期、スポーツ種目、練習量、痛む動作、膝の腫れ、引っかかり、ロッキング、過去の外傷、成長期かどうかを確認します。
「運動すると痛くなり、休むとよくなる」「練習後に腫れる」「引っかかる」という症状は重要な手がかりです。
診察
膝の腫れ、可動域、圧痛、歩き方、膝の曲げ伸ばし、半月板や靱帯の症状を確認します。
病変の部位によっては、膝を曲げた状態で脛骨を内旋すると痛みが出ることがあります。ただし、診察だけで確定するのは難しく、画像検査が重要です。
X線検査
X線では、骨軟骨病変の位置、大きさ、骨片、骨の成熟度を確認します。
正面・側面だけでなく、トンネルビューなど、病変が見えやすい撮影を行うことがあります。
MRI検査
MRIは、離断性骨軟骨炎の診断と重症度評価に非常に重要です。
MRIでは、病変の大きさ、軟骨の状態、骨片が安定しているか、不安定か、骨髄浮腫、関節液、遊離体の有無を確認します。
治療方針を決めるためにも、MRIが必要になることが多いです。
CT検査
CTでは、骨片の形や骨癒合の状態を詳しく確認できます。手術計画や治療経過の評価で使うことがあります。
重症度:安定病変と不安定病変
離断性骨軟骨炎では、病変が安定しているかどうかが重要です。
安定病変
骨軟骨片がまだしっかり付いていて、関節面が保たれている状態です。成長期であれば、保存療法で治癒を期待できることがあります。
不安定病変
骨軟骨片が周囲からはがれかけている、関節面に亀裂がある、液体が入り込んでいる、関節内で動いている状態です。
不安定病変では、保存療法だけで治りにくいことがあり、手術を検討します。
遊離体
骨軟骨片が完全に外れて関節内に遊離した状態です。膝のロッキング、引っかかり、急な腫れの原因になります。
保存療法
成長期で病変が安定している場合は、保存療法を行います。
保存療法の目的
- 病変部への負担を減らす
- 軟骨下骨の修復を待つ
- 膝の腫れや痛みを抑える
- 筋力と柔軟性を保つ
- スポーツ復帰に向けて段階的に整える
具体的な方法
- ジャンプ、ダッシュ、方向転換を休む
- 体育や部活動を一時的に制限する
- 痛みが強い場合は松葉杖で免荷する
- 装具を使うことがある
- 定期的にX線やMRIで確認する
- 痛みのない範囲で筋力と可動域を保つ
保存療法では、数週間休んで痛みが軽くなったからすぐ復帰、ではありません。画像で病変の修復が進んでいるかを確認しながら、段階的に進めます。
保存療法の期間
保存療法の期間は、病変の大きさ、場所、安定性、成長の残り、症状によって異なります。
安定した若年性離断性骨軟骨炎では、数か月単位で保存療法を行い、X線やMRIで治癒を確認します。3か月程度で改善することもありますが、6か月以上かかることもあります。
痛みだけで治癒を判断するのは危険です。痛みが軽くなっても、骨軟骨病変が十分に治っていなければ、スポーツ復帰で悪化する可能性があります。
手術が必要になる場合
離断性骨軟骨炎では、次のような場合に手術を検討します。
- 骨軟骨片が不安定
- 関節内に遊離体がある
- ロッキングや強い引っかかりがある
- 成長が終わっている
- 保存療法を行っても治癒しない
- 病変が大きい
- スポーツや日常生活に支障が大きい
手術の目的は、病変部を治癒させること、骨軟骨片を安定させること、関節面をできるだけ保つことです。
手術方法
手術方法は、病変の安定性、骨片の大きさ、軟骨の状態、成長の残りによって変わります。
ドリリング
病変部に小さな穴をあけ、血流と骨の修復を促す方法です。安定病変で保存療法に反応しない場合などに検討されます。
骨軟骨片の固定
骨軟骨片がはがれかけている場合、スクリューやピンなどで固定し、元の位置で癒合を目指します。
骨軟骨移植
骨軟骨片が修復できない場合や、関節面の欠損がある場合に、自分の骨軟骨を移植する方法を検討することがあります。
骨髄刺激法
小さな軟骨欠損に対して、骨髄から修復組織を誘導する方法を検討することがあります。
どの方法が適しているかは、病変の状態によって大きく異なります。
リハビリとスポーツ復帰
離断性骨軟骨炎では、保存療法でも手術後でも、段階的な復帰が重要です。
復帰前に確認したいこと
- 日常生活で痛みがない
- 膝の腫れがない
- 膝の曲げ伸ばしが十分に戻っている
- 筋力が回復している
- 片脚動作が安定している
- 画像で病変の修復が確認されている
- ジョギング、ジャンプ、方向転換を段階的に行っても痛みが戻らない
- 担当医から復帰許可が出ている
特に重要なのは、痛みだけで復帰を決めないことです。画像で治癒が不十分なままスポーツへ戻ると、病変が悪化することがあります。
復帰の段階
- 痛みのない日常生活
- 平地歩行
- 自転車や水中運動
- 軽いジョギング
- ダッシュ
- ジャンプ
- 方向転換
- 競技練習
- 試合復帰
ジャンプ、ダッシュ、方向転換、接触プレーは後半に戻します。復帰後に腫れや痛みが再燃する場合は、負荷を戻して再評価します。
保護者・指導者が知っておきたいこと
離断性骨軟骨炎では、子ども本人が「痛みが軽くなったから大丈夫」と感じても、病変がまだ治っていないことがあります。
保護者や指導者は、痛みの有無だけでなく、腫れ、引っかかり、足を引きずる、練習後や翌日の痛みを確認してください。
注意したいサイン
- 練習後に膝が腫れる
- 痛みを隠して練習している
- 足を引きずる
- 階段で痛がる
- 膝が引っかかると言う
- 練習復帰後にすぐ痛みが戻る
- 医師の許可前に試合へ出ようとする
短期的な試合出場より、将来の膝関節を守ることが大切です。
放置するとどうなりますか?
離断性骨軟骨炎を放置すると、病変が不安定になり、骨軟骨片がはがれることがあります。
起こりうる問題
- 膝の痛みが長引く
- 膝が繰り返し腫れる
- 関節内遊離体ができる
- 膝がロックする
- 関節軟骨が傷む
- 将来的な変形性関節症のリスクが高まる
- スポーツ復帰が遅れる
早期に発見して、病変が安定している段階で治療を始めることが重要です。
よくある質問
離断性骨軟骨炎は自然に治りますか?
成長期で病変が安定している場合は、保存療法で治癒を期待できることがあります。ただし、不安定病変、遊離体、成長終了後では自然治癒が難しいことがあります。
スポーツは完全に休まないといけませんか?
病変の状態によります。ジャンプ、ダッシュ、方向転換は制限することが多いです。痛みが少ない運動でも、病変への負担を考えて医師の指示に従う必要があります。
痛みがなくなれば復帰してよいですか?
痛みだけで復帰を決めてはいけません。画像で病変の修復が進んでいるか、腫れがないか、筋力や動作が戻っているかを確認します。
MRIは必要ですか?
治療方針を決めるために必要になることが多いです。MRIでは、病変の安定性、軟骨、骨髄浮腫、遊離体の有無を確認できます。
手術をするとスポーツに戻れますか?
戻れる方はいますが、病変の大きさ、手術方法、治癒の状態、リハビリの進み具合で異なります。復帰には数か月から1年以上かかることがあります。
両膝に起こることはありますか?
あります。片膝で見つかった場合、症状がなくても反対側を確認することがあります。
大人の離断性骨軟骨炎は治りにくいですか?
成長が終わっている場合、成長期の安定病変より治癒しにくいことがあります。不安定病変や遊離体がある場合は手術を検討します。
関節ねずみとは関係ありますか?
関係があります。離断性骨軟骨炎で骨軟骨片がはがれると、関節内遊離体、いわゆる関節ねずみになることがあります。
まとめ
離断性骨軟骨炎は、関節軟骨とその下の骨に起こる病気で、成長期のスポーツをしている子どもに見つかることがあります。
初期には、運動時の膝痛、軽い腫れ、休むと改善する痛みとして現れることがあります。進行すると、膝の引っかかり、ロッキング、遊離体につながることがあります。
治療方針は、成長期かどうか、病変が安定しているか、不安定か、遊離体があるかで変わります。成長期の安定病変では保存療法を行い、不安定病変や遊離体では手術を検討します。
スポーツ復帰は痛みだけで判断せず、画像で治癒を確認し、腫れ、可動域、筋力、動作を確認しながら段階的に進めることが大切です。
成長期の子どもで膝痛が数週間続く、スポーツ後に膝が腫れる、膝が引っかかる、ロックする場合は、早めに整形外科で評価を受けましょう。
参考文献
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- American Academy of Orthopaedic Surgeons. The Diagnosis and Treatment of Osteochondritis Dissecans. Clinical Practice Guideline Rapid Update. 2023.
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- Mohr B, et al. Osteochondritis Dissecans of the Knee. StatPearls. Updated 2024.
- 済生会. 膝離断性骨軟骨炎. 2023.
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の診断や治療を代替するものではありません。成長期の膝痛が続く場合、膝の腫れ、引っかかり、ロッキングがある場合は整形外科でご相談ください。

