前十字靭帯(ACL)は、膝を安定させる主要な構造物として知られていますが、半月板も膝の力学に重要な役割を果たしています。
半月板の形状、付着部、および組成は、引っぱり力と圧縮力の両方を分散させることで、関節のアライメントと荷重伝達に大きく貢献しています。
半月板損傷は、膝のプロプリオ知覚、安定性、および可動性に影響を及ぼすと言われており、その危険因子には長時間または反復的な膝の深屈曲、肥満、およびスポーツによる損傷が報告されています。
半月板損傷は一般的にACL断裂と同時に発生します。多くの研究でこれらの損傷の発生率が調査されおり、急性靭帯断裂の膝では16~82%、陳旧性靭帯断裂の膝では96%と報告されています。さらに、急性ACL損傷では外側半月板損傷が多く、時間経過とともに内側半月板損傷が増加するということは一般的に言われていることです。
しかし、地域や年齢によって発生率の報告にばらつきがあり、このことは解剖学的および機能的な違いに起因しているかもしれません。
今回紹介する論文はサウジアラビアからの報告ですが、サウジアラビアは日本と同様に変形性膝関節症の発生率が他の地域よりも比較的高い地域です。その原因は内反変形膝の頻度が多いことがあげられています。このように、内反変形が多い地域でもACL損傷後の外側半月板損傷が一般的なのかどうかを教えてくれます。
2020.11.17_44-Patterns-of-meniscal-damage-associated-with-acute半月板損傷の発生頻度
1996年から2012年までの間に、合計294人の患者が研究対象となっています。これらの患者のうち、175人(59.5%)が内側半月板損傷、91人(31%)が外側半月板損傷、28人(9.5%)が両者を合併していました。
3群(MMT、LMT、両群)間では、身長、体重、BMI、スポーツレベルに有意差はありませんでした。
半月板損傷の種類
図のように 外側半月板断裂よりも内側半月板に多くの損傷を示しました。
これは内側半月板断裂の患者が、外側半月板断裂のみ,または、内側半月板断裂と外側半月板断裂合併の患者に比べて、年齢が高かったということが考えられます。
まとめ
内側半月板損傷の発生率が高かったもう一つの原因は、この研究で対象とした患者のスポーツレベルはレクリエーションレベルであったことがあげられます。
日本においてもプロスポーツを対象に治療を行っている施設は限られており、そのほとんどがこの研究のような患者層である可能性が高いと思われます。
比較的高い年齢の急性ACL損傷を見た場合には外側半月板損傷という固定観念は捨てるべきで、むしろ内側半月板損傷が多い報告もあるということを忘れるべきではありません。