膝の曲げ伸ばしでスクワットなどを行うと、膝周りのポキっという音がすることがあります。患者さんから、これって異常なんですか?と聞かれることが稀にあります。
結論から言います。
痛みを伴わない膝の音は気にする必要はありません。
痛みを伴うのであれば病院受診を勧めます。
この章ではそんな膝の音に関する疑問に答えていこうと思います。
参考とした文献はNoise around the Knee Clin Orthop Surg. 2018 です。
この論文では、膝の生理的な膝の音と病的な音の違いについて科学的な根拠をもとにまとめているものです。少し、長くなるので時間がない人や結果だけを知りたい人は上記のことだけを意識すればいいと思います。もう一度言うと
それでは、何で音が鳴るのでしょうか?
生理的な膝の音
これまで生理的雑音の発生源は様々報告されていますが膝の中の小さな気泡の蓄積や破裂が原因と考えられてきました。
最近の研究で音が鳴るメカニズムは気泡の崩壊ではなく、空洞の形成に関係しているということをMRIを使用して直接的な証拠を提示しています。
対向する表面が臨界点に達するまで分離に抵抗し、そこから急速に分離して持続的なガス空洞が形成されるプロセスです。
つまり、関節内圧の変化により,関節内に小さな気体の気泡がゆっくりと形成され、これらの気体の気泡が急速に形成されると,破裂音がしてしまうということです。
このような空気を介した破裂音は、膝以外の関節でも発生することがあり、手の指関節に多く見られます。
病的な膝の音
前述しましたが、病的な膝の音というのは一般的には痛みを伴います。
一般的と書いたのは、単発では痛くないけど、音が数回持続すると痛みが走ることがあるからです。
膝の音ともに痛みが出れば病院へ行きましょう。これから、その原因を書きますが、興味がなかったら飛ばしてもらって結構です(少し難しいです)。
変性に伴う構造変化
変形性膝関節症では、軟骨が徐々に失われ、それに伴って関節縁に骨のとげ(骨棘)や骨の中の空洞(嚢胞)が発生します。
これまでの研究では、膝関節の様々な構造のどのような病態が膝の音に関連しているかが調べられてきました。
軟骨病変、骨棘、嚢胞、骨髄(骨の中)病変は膝の音に関連しています。
特に膝蓋骨(お皿)と大腿骨(膝蓋骨が通る道)の変形が最初の症状と言われています。
内側滑膜ヒダ障害
膝の音を有する時の有病率は22~95%と広く報告されているが、炎症、肥厚、弾力性の低下を特徴とする病的な滑膜ヒダは、音に関連した痛みを引き起こすことがあります。
そのため、膝蓋骨内側の痛みを伴う音や、痛みを伴う引っかかり感を感じる場合には注意が必要です。
スナッピング膝症候群(snapping knee syndrome)
関節内構造の病態としては、ガングリオン嚢胞、脂肪腫、滑膜結節などが原因で痛みを伴う膝の音を有することがあります。
関節外構造の病態としては、種子骨、骨棘、骨軟骨腫による腱障害などが挙げられます。
膝蓋軟骨軟化症
膝の音がポキポキではなく、ゴリゴリするような音の人はこの疾患の可能性が高いです。
しっかりと治療すれば1カ月で治りますが、治療したりしなかった理を繰り返すと数年かかる患者さんもいます。
膝周りの音対策
繰り返しになりますが、生理的雑音と病的雑音を区別することが重要です。膝の生理的雑音は一般的ですが、通常は痛みがなく無害です。病的な状態がなければ、膝の音を気にする必要はありません。
どうしても気になる人は、筋トレが必要です。股関節を曲げる筋肉(膝を上げる筋肉)、股関節の伸展ストレッチ、外転筋筋力強化、ふくらはぎのストレッチなどを行ってください。
抵抗バンド(リハビリチューブ)を用いて行う運動は有益で人気があるので説明します。
まず、チューブを太ももに巻きます。きつすぎるのはやめましょう。
座った状態で足を広げます。これを5秒間かけて広げて、5秒間かけて閉じます。足の筋肉がきつくなればやめて、3セット程度やりましょう。
余力がある人はチューブをまいた状態でサイドステップしたり、少し内股でスクワットするのもお勧めです。