膝の痛みを正確に診断することは、自分の膝を正常に戻すための第一歩です。
この章では、あなたの痛みの原因がどこから来ているのか?ということをはっきりさせ、どのような治療が効果的かを説明します。
早期回復を行うためには早期診断が非常に重要です。
膝の痛み診断のアプローチ方法は下の3つです。
– 痛みの場所:膝の痛みの所在を調べます。(例:前面、内側、外側または膝裏など)
– 痛みの始まり方:怪我のメカニズムを考えます。(例:突然の怪我もしくは徐々に痛くなるなど)
–具体的な症状:痛みに関連する主な症状をはっきりさせます。(例:ポキポキなる時に傷む、膝を曲げたときに引っかかるような痛み)
膝の痛みの部位別診断
膝の痛みの診断を開始するにあたって、初めに考えないといけないことは“痛みの場所”です。
痛みは膝のどの部分に強いかを考えます。
痛みは色々な場所に波及しますが、おおもとの痛みがどこから来ているかをじっくりと考えることが大事です。
おおもとの痛みがはっきりすれば、いろいろな場所に波及した痛みに惑わされることなく治療することが出来ます。
膝前方の痛み
膝前方の痛みは、患者さんが一般的に膝痛と呼んでいる場所で、痛みが起こりやすい場所です。
たまたま痛くなるということは少なく、何らかの原因があるがゆえに痛みを発症します。
特に、膝蓋骨(お皿)が原因であることが多いです。
膝の内側の痛み
膝の内側の痛みを訴える患者さんの数は年を取るにつれて非常に多くなります。
人間の体は膝の内側により大きな力が通るため、経年的に痛めやすく、怪我をしやすい場所です。
膝後方の痛み
膝の裏の痛みは、50代以上の患者さんに多く見られます。
これは、変性に伴い、関節の中に傷がついたりしやすくなるからです。
一方、若い人では、膝の怪我が原因であることが多いです。
膝外側の痛み
膝の外側は最も痛みが起きにくい場所です。
一般的には膝の外側の構造物(筋肉、靭帯、軟骨)への炎症の波及が原因となります。
ふくらはぎの痛み
ふくらはぎの痛みは、筋肉の断裂などの軟部組織の損傷が一般的です。
しかし、怪我もしていないのに痛みが出る場合は深部静脈血栓症(DVT)などのより深刻な病態が原因で起こることがあるので注意を要します。
膝蓋骨(お皿)の痛み
階段やスクワットなどの日常生活の中で、大きな力が膝蓋骨(お皿)を通過します。
膝蓋骨の痛みは、徐々に出てくることもあれば、怪我をして突然出てくることもあります。
発症時期でみる膝の診断
膝の痛みの診断で重要なもう一つの項目は、“いつ、痛みが始まったか?”ということです。
怪我などの外力によって突然痛みが発症したか、または、特定の理由もなく時間の経過とともに徐々に発症したか。
この二つを区別することは非常に大切です。
膝をひねった時の怪我
膝の捻挫は、良く起こる膝の怪我の一つです。このタイプの怪我は、スポーツ中のカッティング動作(フェイントや切り返し)や選手同士の接触で発生します。
どのように膝を捻挫したかという情報は、膝にかかる力がどんな風に抜けたかということを考える上で非常に重要です。
この力のかかり具合(受傷機転)を知ることで、膝のどの部分に強いストレスが生じたかということを察知することが出来ます。
膝をひねったときに損傷を受けるのは、主に靭帯や軟骨です。
靭帯損傷は、膝の安定性に問題をきたす可能性が高く、適切に治療を行わない場合は、膝の安定性を取り戻すことが出来なくなることもあります。
軟骨損傷は、靭帯損傷ほど急激ではないですが、痛みや腫れを引き起こすことがあります。結果的に、膝を動かさない期間が長くなり、関節が固くなることもあります。
膝が過伸展したときの怪我
膝の過伸展は、genu recurvatumとして知られている膝が後ろに曲がってしまう膝の怪我です。
これは、膝関節とその周辺の構造を損傷し、痛み、腫れ、不安定性の原因となります。
膝の靭帯は非常に丈夫で、関節を丈夫に保つために働いていますが、強い力で膝が急に後方へ押されると膝が過伸展なってしまい、靭帯にかなりの負荷がかかります。
これは、ラグビーのタックル、ジャンプからの着地、ランニング中の急な停止、あるいは誰かがあなたの背中に飛び乗ってくるような単純な動作でも起こります。
徐々に来る膝の痛み
膝の痛みが徐々に出てくるということは、気づかないうちに膝の軟骨や半月板を何らかの形で蝕んでいた可能性が高いです。
“特に思い当たる節がないのに”と不思議に感じるのは、長い時間をかけて、違和感から痛みへと変化するからです。
これには、変形性膝関節症、腱炎、滑液包炎、半月板損傷などが含まれます。
突然の膝の痛み
膝の怪我は多くの場合、以下のような原因で起こります。
– ジャンプ後の着地やタックルなどで膝を通る力が加わった場合
– サッカーやバスケなどで相手をかわそうとフェイントをかけたとき
– 急激な減速(例:急停止して足が後ろに曲がりすぎた場合)
– スキーなどのツイスト動作
このような動作に付随する膝の怪我は、一般的に靭帯損傷や軟骨損傷につながります。
痛みは怪我の状態によって異なりますが、受傷直後から痛みで動けなくなる場合もあれば24~48時間経って痛みが現れることもあります。
腫れを伴う痛みが特徴的です。
膝の症状診断
自分の膝の症状を具体的に考えることは、診断を進める上で非常に重要です。
痛みが膝の広範囲に及んでいたり、いろいろな場所に移動する場合もありますが、その場合は、移動する痛みがどの程度か、いつ痛みが出たのか、何をしたら痛みが和らぐのかを考えます。
膝の痛みに伴う症状には下の様に様々なものがあります。
- 膝が腫れる
- 不安定感がある、膝折れする
- ランニングをすると痛む, ひざまずき動作での痛み、屈伸時の痛み
- 膝曲げ伸ばし時のパキっという音
- 階段昇降時の膝の痛み
- 焼けるような膝の痛み
なぜ診断が重要なのか?
膝の痛みが再発してしまうのは、根本的な原因を治療できていないことがほとんどで、不正確な診断が原因となることが多いです。
例えば、膝が腫れているとします。
あなたは足を高く上げ、氷で冷やし、弾力包帯やサポーターを使用して膝を固定し、症状が落ち着いた後に、筋力強化を始めるとします。
応急処置で“腫れ”という症状を治療することができ、腫れはほとんどの場合において改善し始めるでしょう。
しかし、膝の怪我やその症状が軽いものでなかった場合、腫れを引き起こした原因を特定し、その治療をしない限り、再発を繰り返します。
正確な膝の診断を受けるには、整形外科医/理学療法士に診てもらうのが一番です。
しかし、診断の流れを理解することは、あなたの医者を見る目を鍛えることにもつながります。