膝が悪くなるのは、女性のほうが多いんですか?
外来は女性の方が多いですよね。
印象としては、女性の方が多いですね。
女性は骨が弱いし、筋力も少ないし、太りやすいというのも影響しているですよ。
まずは、やせることから始めましょう。そのうち痛みもなくなってきますよ。
そうなんですね。。
(太っていてすみませんでした! それに本当なの?その理屈。
なんか適当にかわされた気がする。。)
変形性膝関節症の痛みは高齢者(65歳以上)において大きな障害となっています。
我々が行う変形性膝関節症の治療の目的は、症状を緩和し、低下した機能を取り戻すことです。
しかし、これらの治療法は痛みを和らげるための緩和的な治療に限定されていて、人工膝関節置換術は多くの患者さんにとって避けられない宿命であることに変わりありません。
今回は変形性膝関節症と診断された患者さんの膝の構造、膝の症状、体の機能低下において修正可能な危険因子を見ていきたいと思います。
修正可能ということは ”改善する、良くなる” ということになりますが、自己管理する場合、目的を持てることは結果に大きく影響します。
例えば、
料理を作る場合、当然買い物をしますよね。
買い物をする時には値段や品質の基準をそれぞれの人が持っていると思います。
この値段や品質の基準をもとに買い物をします。
スーパーで設定された値段を自分で変えることはできませんが、納得のいく値段や品質でなかった場合、自分の意思でスーパーを変えることはできます。
体の痛みも同じで、修正可能な情報を知ることで、自分の意思で行動形態を変えることが出来るようになります。
今回の参考文献
Knee Extensor Strength and Risk of Structural, Symptomatic, and Functional Decline in Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta‐Analysis
Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 May;69(5):649-658.
膝伸展筋力
膝伸筋筋力の低下は変形性膝関節症患者によく見られることから、修正可能な危険因子であると考えられています。
これまで、伸展筋力低下が変形の進行と関連しているかどうかは、一度、変形性膝関節症を発症した場合には、あまり明らかにされていませんでした。
つまり、変形性膝関節症の原因として膝伸展筋力低下があることはわかっているけど、変形性膝関節症と診断されてから、膝伸展筋力が体に及ぼす悪影響はわかっていなかったのです。
この論文で分かったことは、膝伸展筋力が低い人は、症状(疼痛)と機能(椅子からの立ちあがりや仕事のパフォーマンス)の悪化リスクが増加しますが、膝の構造的には悪影響を及ぼさないというこです。
難しいですね。
つまり、 患者さんが感じる痛みというものは、軟骨が擦れて膝が変形することによるものでは無く、 筋力が弱くなることに原因があるということです。
田舎に行くと、ここまで膝が曲がって痛くないの?
という、おばあちゃんを見たことがあるのではないでしょうか。
全く痛くないということはないでしょうが、平然と歩いていますよね。
この理論から言うと、伸展筋力が保たれているんでしょうね。
性別の違い
変形性膝関節症で人工関節置換術を受ける患者さんは女性のほうが多いです。
何故かということはあまり知られていません。
整形外科を受診すると、
女性の方は男性に比べて筋力がもともと弱いから、骨粗鬆症になりやすいから、太りやすいから、だから変形しやすいんだよ。
と、言われた人がいるかもしれません。
膝が曲がって痛みが出るということについて現在分かっていることは、
女性は膝の筋力が男性に比べて低いということだけです。
特に女性において、膝伸展筋力は症状や機能低下のリスクの増加と関連していることが示されました。
逆を返せば、女性においてこそ筋力強化は痛みや機能改善に効果的と言えるでしょう。
人工関節を受ける患者さんで女性が多い理由も記されていますが、これは手術を検討する意思や、人工関節を受けるという複雑な意思決定に寄与する他の要因の相互作用を反映している可能性が高いと示されています。
女性の方が肝っ玉が据わっていて、自分の体を優先できる(自分の体を真剣に心配できる)んですよね。
まとめ
変形性膝関節症を有する、またはそのリスクがある患者さんでは、膝伸展筋力の低下は、症状(女性のみ)および機能的悪化(男女)のリスクの増加と関連していることが示されました。
膝伸展筋力の低下が変形増悪のリスクと関連しているという証拠は今のところありません。
・女性は痛みを軽減できる
・男性でも活動範囲は広がる
・筋力が下がることと変形が進むことは別問題