原因:硬い筋肉の緊張によって骨が強く引っ張られる
症状:膝のすぐ下の痛み 触るだけでも痛い
回復までの期間:数週間から数ヶ月
オスグッド・シュラッター病は、思春期の膝の痛みとしては比較的良く知られた疾患ではないでしょうか。
膝蓋骨のすぐ下、膝蓋腱が付着している部分の緊張と炎症が原因で、痛みを伴う骨の盛り上がりができます。
オスグッド・シュラッター病は、活発な運動をする9~16歳の学童期に発症し、この年代の約5人に1人は発症すると言われています。
男子に多く、特に走ったり、蹴ったり、跳んだりするスポーツ(サッカー、バスケット、バレーボール)を多くしている人に多く見られます。
回復には数週間から数ヶ月かかることもあり、痛みが強い時期には悪化させるような運動をしないことが重要です。
ここでは、オスグッド・シュラッター病の原因、症状、治療、回復過程、そして最後に、どうやったらオスグッド・シュラッター病にならずにすむのかについてに触れていきたいと思います。
原因
ここでの主役は大腿四頭筋と膝の骨(大腿骨、脛骨、膝蓋骨)です。
通常、骨の成長の方が筋肉の成長よりも早いため、成長期になるにつれて体の柔軟性がなくなっていくのを経験している人は多いのではないでしょうか。
オスグッド・シュラッター病の患者では、膝の骨(大腿骨と脛骨)が大腿四頭筋よりも早く成長し、急激な成長期を迎えた後に発症します。
その結果、筋肉が非常に硬くなってしまいます。
膝を伸ばす時には、大腿四頭筋からの力が膝蓋骨から膝蓋腱を介して膝のすぐ下にあるすねの骨(脛骨)の前面に到達します。
力の最終到着地点はこの膝蓋腱が付着している脛骨に集中するわけです。
筋肉が硬くなることで、膝蓋腱が脛骨に付着する部分に大きな張力がかかります。
この緊張により、下にある骨が引っ張られ、牽引性骨端症(骨端線が引き延ばされる)と呼ばれる損傷を受け、その結果、オスグッド・シュラッター病という炎症と腫れが生じます。
体は新しい骨の層を作ることで治癒しようとしますが、走ったり蹴ったりする活動が多いと、この治癒メカニズムが過剰に働き、どんどんと新しい骨が積まれていきます。そうすることで骨が盛り上がるのです。
また、筋肉の緊張によって骨が強く引っ張られ、小さな亀裂が入り、脛骨結節が脛骨から離れてしまうこともあります。こうなると、骨端症という病態ではなく剥離骨折ということになります。
時には、脛骨結節を直接打撃した後に発症することもありますが、これは非常にまれなケースです。
症状
オスグッド・シュラッター病の主な症状は、膝のすぐ下の痛みです。
この部分を触るだけで痛みが走り、スポーツをするときも痛みます。
通常、痛みは常にあるわけではなく、運動すると痛みが増し、休むと痛みが減ります。
また、膝のすぐ下の骨が盛り上がってコブを作ります。
このコブの大きさは、病状の進行度によって異なります。
通常は片方の膝だけに発症しますが、20~30%の人で両膝に症状が出ます。
診断
症状、ライフスタイル、どのようなスポーツをどれくらいの頻度で行っているかを聞きます。
年齢とこれらの情報は診断を進める上で非常に大事です。
さらに、子供や青年の場合は、最近の成長度についても質問します。
すでに述べていますが、骨と筋肉の成長速度は異なるため急激な成長は筋肉と骨の長さのアンバランスを引き起こします。
情報を聴取した後に膝の診察を行い、圧痛、腫れ、赤み、骨のコブなどの兆候を調べます。
特に、脛骨結節部の剥離骨折が疑われる場合は、患部の骨をより詳しく見るためにCT検査を行うこともありますが、必ずしも必要ではありません。
治療
オスグッド・シュラッター病の治療は、症状を悪化させる活動を完全に中止することから始めます。
一般的には、ジャンプやキックを多用するスポーツが該当します。
安静にしていないと、脛骨結節の損傷が進み、病状が悪化します。
PRICE
Protect(保護)、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compress(圧縮)、Elevate(挙上)の頭文字をとったもので、治療の第一段階です。
症状が落ち着くまでは、悪化させるような活動を控え、スポーツに復帰したら、その前後に膝にアイスパックを当てるのも効果的です。
膝ストラップ
これは必需品です。
膝当てストラップを膝蓋腱(膝蓋骨の下、脛骨結節の上)に直接装着すると、痛みが軽減され、骨から緊張を取り除くことができるため、スポーツへの復帰が容易になります。
使用方法は簡単で、非常に効果的です。
鎮痛剤
痛みを和らげるために、カロナール(熱が出た時にもらう解熱剤)を使用します。
ロキソニンなどのNSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)は、痛みや炎症を抑えるのに役立ちますが、子どもには必ずしもお勧めできません。
必ず医師に確認してください。
エクササイズ
エクササイズは、リハビリの過程では欠かせないものです。
痛みの強い時期は安静にして症状を落ち着かせた後、ゆっくりと運動を始めましょう。
まずは、大腿四頭筋の緊張を和らげ、脛骨結節にかかる負担を軽減させることから始めます。
大腿四頭筋が伸び始めたら、痛みや活動レベルの低下によって失われた膝周りの筋力を回復させます。
ただし、これらのエクササイズは、再発を起こさないようにゆっくりと進める必要があります。
ギプス
症状が重い場合、3週間程度の確実な安静を確保するために、膝をギプスで固定することもあります。
しかし、これは剥離骨折に至り、手術が必要になりそうな人にのみ行います。
回復までの期間
オスグッド・シュラッター病が完全に落ち着くまでには、通常、数週間から数ヶ月かかります。
痛みの強い場合、約1週間は膝を悪化させるような運動をせず、完全に安静にする必要があります。
その後、トレーニングを再開しますが、症状が再発しないように、頻度、時間、強度を下げて行います。
症状が再発した場合は、活動レベルを再び下げる必要があります。
通常、約1ヵ月後には通常のスポーツ活動に戻りますが、膝のストラップの着用が有効な時が多いです。
16歳くらいで骨が成熟してくると、10例中9例が完全に痛みを感じなくなります。
しかし、まれに大人になっても症状が続く人もいます。
オスグットにならないための予防策
オスグッド・シュラッター病は完治が難しい病気ですので、予防に努めることが大切です。
膝のストレッチ
オスグッド・シュラッター病は成長期に筋肉の長さが骨の成長に追いついていないために起こります。
太ももの筋肉を伸ばすことで、この問題を解決し、脛骨結節の緊張を緩和することができます。
筋力アップのエクササイズ
太もも以外の筋肉(お尻や腹筋、ふくらはぎ)の筋力を鍛えることも大事です。
大腿四頭筋に余計な負荷がかからに様に、全身をバランスよく保つことが大事です。
レジスタンストレーニングを避ける
16歳未満における脚の重りの使用は、柔らかくて若い骨に負担をかけすぎます。
過剰なトレーニングを避ける
長時間のトレーニング(2、3時間以上)や頻繁なトレーニングは避けましょう。
トレーニングとトレーニングの間には1日休みを取るようにしましょう。