診断

膝裏の痛み

膝裏の痛みは外来でよく聞く症状の一つです。

歩行や普段の活動に影響を与えるだけでなく、膝裏の痛みは睡眠にも影響を与えることがあります。

そのような膝裏の痛みですが、時間が経つにつれて徐々に発症することもあれば、怪我をして突然発症することもあります。

膝裏の痛みの原因

ここでは、膝裏の痛みの一般的な原因を見ていきます。

ベーカー嚢胞

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Mending, Coaching &Inspiring Athletes.より

膝の裏にある滑液包に水が溜まります。ベーカー嚢胞は、特に高齢者において膝裏の痛みの原因として最も多い疾患です。

原因:怪我や関節炎などで膝の中に過剰な水分が溜まります。ベーカー嚢胞と関節内はつながっていると言われ、関節の中から関節の外にある袋に水が流れ込みます。

症状:足を曲げたり、歩いたり、膝をついたりしたときに膝の裏が腫れ、締め付けられて膝の裏が痛みます。

膝の捻挫

1つまたは複数の膝の靭帯が過剰に伸展した場合、全層性に、または部分的に断裂が起こることがあります。

原因:急な捻り動作や、膝を介して大きな力が加わった場合

症状:膝の不安定感、膝裏の痛み、腫れ、膝の動きの低下など、急性で分かりやすい症状です。

膝窩筋腱損傷

Physiopediaより

膝後方やや外側に痛みを生じます。

原因:膝窩筋腱損傷は非接触の外旋により発生します。部分断裂(膝窩筋腱の捻挫)は使い過ぎや加齢による変性が原因と考えられます。

症状:靴を脱いだりするときにこの部分に痛みが出ます。

後方の半月板損傷

膝後方の半月板に断裂が起こり、痛みを伴います

原因:激しい運動による怪我(若年者)、または経年的な摩耗により弱くなった半月板に傷がつく(中高年)

症状:膝の伸展、歩行、ランニング、スクワット&階段昇降で膝の裏が痛くなり、膝が腫れます。

ファベラ症候群

ファベラ症候群とは、膝の後外側にある小さな骨に起因する異常な状態を示します。この小さな骨をファベラと言います。

原因:大腿骨外側顆部の上にあるファベラが繰り返し摩擦される

症状:膝を完全伸展させると膝後外側部の痛みが増強したり、大腿骨外側顆部を後ろから圧迫すると局所的に痛みを生じる場合もあります。

ふくらはぎの怪我(肉離れ)

ふくらはぎの2つの筋肉のうちの1つの部分的または完全な断裂

原因:走っているときに急にスピードや方向が変わったり、反復的に走ったりジャンプしたりする。

症状:膝裏やふくらはぎの急激な痛みで歩行困難となり、内出血を伴うこともあります。

変形性膝関節症

膝の骨や軟骨の摩耗をきたす結果、骨棘形成、関節裂隙の狭小化などを引き起こします。50代以上に多い疾患です。

原因:老化、肥満、過去の膝の怪我や手術、遺伝、性別

症状: 膝のこわばり、痛み(特に歩きはじめ)、不安定感。長時間の休息後の活動や寒冷地で悪化する傾向があります。

過伸展膝

膝が後ろに曲がりすぎて、膝の裏の構造を痛めてしまうケガ。

原因:ラグビーのタックルやスキーの事故など、膝を後ろに押してしまったスポーツ外傷に多い

症状:膝の後ろの鋭い痛み、腫れ、不安定性を感じます。階段を降りたり、歩く、膝を伸ばして立っている状態だけでも悪くなることがあります。

ハムストリング損傷

太ももの裏側にあるハムストリングスという筋肉を限界を超えて伸ばしすぎてしまうと断裂してしまいます。

原因:急激な、速い動き(例:スプリント、ジャンプなど)。

症状:太ももの裏の痛み、膝裏の鋭い痛み。膝を曲げたり、急な加速や減速で悪化します。

深部静脈血栓症

深部静脈血栓症とは、下肢の深部静脈の一つに血栓ができることです。下肢で大きくなった血栓が中枢に流れてしまうと最悪、心臓発作や脳卒中につながる可能性があります。

原因:長時間足を動かさない(飛行機の中など)、妊娠、肥満、遺伝

症状:膝裏やふくらはぎの痛み、腫れ、通常は片方の足だけの痛み

セルフテスト:力を入れてつま先を上げる(手は使用しない)

膝裏やふくらはぎの痛みの増加は深部静脈血栓症の可能性があることを示しています。

警告:深部静脈血栓症は生命を脅かす可能性があります。症状が現れた場合は、直ちに医師の診察を受けてください。

膝裏の締め付けの原因は?

膝裏の締め付けは、ハムストリングスやふくらはぎの筋肉が原因であることが多いです。

ハムストリングスは太ももの裏を伝って膝の裏に張り付いています。

Hamstring injury
Penn Medicineより

一方、ふくらはぎの筋肉の一つである腓腹筋は膝の裏からかかとに向かって下っていきます。

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Picture of Calf Muscleより

これらの筋肉の締め付けは、特に男性に多く見られる問題で、膝の裏が非常に窮屈に感じられるようになります。

膝のストレッチをすることで、この締め付けを改善し、膝裏の痛みを和らげることが出来ます。

膝裏の腫れの原因は?

膝裏の腫れは、一般的にベーカー嚢胞が原因となることが多いです。膝関節内の過剰な関節液は、関節の裏側からこの袋に漏れ出てきます。

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Mending, Coaching &Inspiring Athletes.より

この関節液が嚢胞を満たし、膝裏の腫れを引き起こします。

膝裏の腫れの他の可能性としては、ふくらはぎの断裂、膝窩動脈瘤、滑膜肉腫などがあります。

膝裏の鋭い痛みの原因とは?

あなたがランナーである場合は、膝裏の鋭い痛みは、多くの場合、ハムストリングス腱の問題によって引き起こされます。

あなたがサイクリングを頻繁に行う場合は、膝裏の鋭い痛みは、多くの場合、ふくらはぎの筋肉の問題によって引き起こされます。

中高年(特に女性)で段差を飛び越えようとしたときや、階段を下りているとき、緩やかな坂道を下るなど、何でもない動作で膝裏に鋭い痛みが走る時は、半月板断裂の可能性があります。

屈伸時の膝裏の痛みの原因は?

屈伸時に膝裏が痛くなる原因として最も多いのがベーカー嚢胞です。これは、膝の裏側にある小さな袋に水が溜まっている場合です。

嚢胞に水がたまると、膝を曲げるたびに嚢胞が押しつぶされてしまい、膝裏に痛みが出てきます。

足をまっすぐにすると膝の後ろが痛くなる原因は?

足をまっすぐにした時に膝が痛くなる原因として最も多いのは半月板断裂です。特に座っている状態や、しゃがんだりした状態がしばらく続いた後に膝を伸ばした時に痛みを感じやすいです。

膝が曲がった状態からまっすぐになると、破れて炎症を起こした半月板が大腿骨と脛骨に潰され、引っ張られて、膝裏の痛みが出てきます。

座った後の膝裏の痛みの原因は?

長時間座った後の膝裏の痛みは、変形性関節症が原因であることが多いです。

通常、歩いていると少量の関節液がクッションになって軟骨を守っています。膝の軟骨はこの関節液をまるでスポンジのように吸収し、そして押し出します

私たちがじっと座っているときは、膝関節を潤滑にする関節液が枯渇するので、立ち上がるとき、クッションが少なくなります。通常であれば軟骨自体にクッション性があるのですが、変形性膝関節症は軟骨が擦り切れる病気なので、そのクッションがなくなっています。

膝裏の痛み軽減することができますか?

では、膝の裏の痛みを和らげるためにはどのような治療が良いのでしょうか?膝裏の痛みに最適な治療法は、痛みの原因となっているものによって異なります

一般的には、まずは腫れを少しでも軽減させてから、膝関節にかかる力を軽減するために膝の運動に取り組み、膝の強度と安定性を向上させます。

膝裏に痛みがあるからといって、必ずしも膝裏に問題があるとは限りません。痛みは様々な場所から波及することがあるので、膝の前方に問題がある場合にも膝裏の痛みが出てくることがあります。