人工膝関節置換術後に訪れる出来事の一つは、それまで変形性膝関節症によって損なわれていた膝の可動性と自立性を取り戻すことです。
人工膝関節置換術後の回復への道のりには、運動と理学療法は欠かすことのできない要因です。この両者に短期回復までの休息および痛みの管理を加えることで、手術によるダメージを回復させることができます。
ダメージを受けた体をうまく治癒過程へのレールに乗せることが出来れば、長期的に考えて手術は成功と言えるでしょう。
入院中の過ごし方
手術後すぐに(午前中に手術を受けた場合、午後から夕方にかけて)、手術した膝を使って歩くことが出来ます。手術前の自分の膝に比べると非常に安定していることを実感できると思います。
術後に歩くことは手術した膝を回復させるのに有用な訓練です。最初は、理学療法士による歩行訓練が行われます。その後、看護師さんの援助を受けながら、歩行器や松葉杖を使用して歩くことが出来るようになります。
歩き始めたら、できるだけスムーズに歩くように心がけましょう。筋力や持久力が向上してくると、協調性が向上し、歩く距離が増えてきます。
入院中は、看護師が補助具(歩行器や松葉杖)を使ってトイレまで一緒に歩いたり、洗面台に短時間立ったりするなど、身の回りの世話の手助けをしてくれます。
理学療法士は、膝の筋力強化、治癒の促進、可動域の拡大を目的とした様々な運動を一緒に行います。
病院によっては入院中に、膝の曲げ伸ばしを自動でやってくれる機械(CPM)を装着することもあります。
主治医がCPMを装着していなくても、自転車のペダルをこぐように膝の曲げ伸ばしを行ったり、足首を前後に動かしたり、ベッドに横になりながらヒールスライド(ベッドの上で踵をお尻の方に近づける)をしたりして、足の治癒血流を促進させることができます。
動かしすぎは良くないですが、優しくゆっくり動かすことで血の流れを良くして損傷部位を自分で治します。
入院中に行う運動を知りたい方は人工関節置換術後の運動をご参照ください。
退院までに達成する目標
退院する前に、いくつかの基本的な目標を達成する必要があります。
自分でベッドに乗り降りできるようになることで、膝を曲げて可動域を広げられるようになります。
松葉杖や歩行器を使って自立して歩けるようになることで手助けなしで歩行することが出来ます。
家に階段があるのであれば階段を昇降できるようになることで生活が自立します。
これらのことがクリアできれば基本的には自宅での生活にシフトすることが出来ます。このレベルになれば理学療法士は退院後の自宅での生活の仕方や運動を教えてくれます。
退院後の生活
退院の時期が近づくと、理学療法士が適切かつ安全に運動ができているかどうかを確認します。この時期になれば自宅でどのような運動をしたらいいかが理解できるようになります。
自宅に戻ることで歩く距離は多くなります。入院時には上げ膳据え膳が当たり前で、洗面台も近くにあることが多いでしょう。地面も平たんです。
自宅に戻って初めに感じることは膝の痛みが再発するのではないかという恐怖感です。
退院すると、ほとんどの患者さんは入院中には感じたことのない痛みを訴えます。
しかし、これは当然のことで、自分の膝が元の生活に戻るための準備をしているのです。自宅に戻ると、自分ですべきことの多さを実感するでしょう。
すごく大事なことです。
退院後は入院中に学んだ運動を行うことを自分自身に誓ってください。
覚えておくべきポイントは、やりすぎないことです。
治癒は徐々に進行していくものであり、まだ治っていない筋肉や組織を酷使することは、良いことよりも悪いことの方が多いのです。
どの程度の努力で十分なのかは、あなたの体が知っています。自分の体にうそをつかずに素直に動きましょう。
運動を自分でコントロールする
術後数週間から数ヶ月の間は調子の良い日もあれば調子の悪い日もあります。
自分で運動することで膝の動きが改善し、徐々に持久力が向上していくことを実感してください。
回復期には痛みや腫れが出てきますが、このような時は足を高い位置に挙げ、膝の周りをタオルで包んだ氷やアイスノンを使用して冷やしてください。それでも痛みがある時は痛み止めを内服しましょう。こうすることで何とかなります。
運動をして痛みが増した場合は、痛み止めを余分に飲むよりも、運動を控えた方が良いでしょう。最終的には、少ない痛みでより多くの活動ができるようになります。
自分で決定した運動プログラムがやりすぎだと感じたとしても痛みがなければ続けてください。
痛みのない範囲での活動は回復を早めるのに役立ちます。しかし、無理をして、痛みを引き起こすポイントまで行うべきではありません。
退院後の運動は自分への投資
自宅に戻って最初の週は軽いウォーキングと短距離の自転車走行にとどめておきましょう。
術後3か月で、通常の歩行、水泳、サイクリング、など簡単な有酸素運動が可能になるでしょう。
しかし、野球、バスケットボール、テニス、ジョギング、スキーなどの運動は推奨されていませんので注意してください。自身があっても身体的に不可能です。
健康度を取り戻すために人工膝関節置換術を受けたことを忘れないでください。
トレーニング方法を紹介します。
8-10か月程度を自分の膝に投資してください。
時間はかかるかもしれませんが必ずいい結果が訪れます。