治療的な運動プログラムや減量に加えて、変形性膝関節症に関連する痛みや障害を軽減するために使用されている治療法がいくつかあります。
その中には鍼治療、超音波、電気刺激、リハビリ(理学療法士)などがあります。時々患者さんから聞かれることがあるのは上の4つが多い印象です。
「鍼はききますか?」「他の病院で超音波や電気を当てているんですが、効果があるのかどうかわかりません」「リハビリの人にやってもらっているんで、良くなっている気がするんです。でも自分でもやらないといけないですよね」などなど。外来中にはたくさんの声を頂きます。
ここでは、現在のエビデンスの重みを説明し、関連する注意事項と禁忌(してはいけないこと)を解説します。
鍼治療
変形性膝関節症に対する鍼灸治療の痛みの軽減と身体機能の改善に対する有効性を評価した比較試験は、実際には数多く行われています。これらの試験の中には、対照として偽薬(効果のない薬)を用いたものもあれば、代替治療プログラムと鍼治療を比較したもの、あるいは介入を行わなかったものもあります。
結論から言うと、どちらの試験も肯定的な結果を示しています。
つまり、鍼治療は効果があるという結論です。
これまでの研究では針の配置に関する解剖学的および生理学的な明確な相関関係の欠如していいたり、異なる場所での施術者が採用する技術の違いが、臨床試験の結果に影響を与える可能性がありと考察されています。
つまり、施術者の”腕”によって差が出るようです。自分の体と鍼治療のやり方がマッチすれば、良好な結果がでると思います。ですが、それらの不具合によって逆効果になる可能性もあるのは事実です。
今は情報社会なので治療院の評判や口コミなどはすぐに分かると思いますので、情報を検索して通院することをお勧めします。
痛みを和らげる効果はあるが、やる人の腕によって効果が変わってくる。
治療用超音波
治療用超音波は、膝の安定性、大腿四頭筋の強化、および一般的な心血管系のフィットネスを目標とした従来の理学療法プログラムと一緒に適用されることが多いです。
結果から言うと超音波治療は痛みの改善や身体機能改善に有益かもしれないということです。”かもしれない”と書いたのは、はっきりとしたエビデンスが構築されておらず、盲目的に治療が続けられている結果だと思います。
2012年に行われた大規模な研究(無作為化臨床試験)では超音波と偽の超音波処置を比較したところ、治療群と偽治療群の患者は、治療群で最終的に痛みの緩和と身体機能の改善を経験したことがわかりました。 しかし、両群間には統計的に有意な差はありませんでした。(効果があるような感じはするけど、科学的には差がないということ)
これは他の2つの大規模なシステマティックレビューの結果と一致していて、超音波は中程度の有益性と関連している可能性があるが、結論を出すにはより質の高いエビデンスが必要であるということです。
やって害のあるものではないが、その効果については不明
電気刺激治療
超音波と同様に、変形性膝関節症の治療に神経筋電気刺激を支持するエビデンスは限られています。
米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)は、膝関節全置換術を受けることができない、または受ける意思がない中等度から重度の変形性膝関節症の患者さんに使用することを条件付きで推奨しています。
使用の禁忌については意見が分かれていますが、一般的にこれらの処置は感染部位や活発な出血、金属製のハードウェア、またはペースメーカーなどの埋め込みデバイスの上では使用すべきではない。
人工関節を受けれない、受けたくない人で、医師から中等度から重度の変形性膝関節症と診断された患者さんには使用することが勧められている。
禁忌:怪我で感染している場所、血が出ている場所、体内に金属がある人
理学療法士によるリハビリ
変形性膝関節症の治療において、背中を伸ばしたり、筋力の使い方を再現させる理学療法。膝だけではなく全身を連動させるように訓練する治療です。
12件のランダム化比較試験のシステマティックレビューでは、運動療法または筋力トレーニングのみでは効果が小さい人に対して、理学療法士による手動操作と運動を併用した場合には、痛みの軽減に中程度の効果があることが明らかになりました。
現在の文献を評価すると、理学療法士による手動操作には中程度の有益性があるようである。
鍼治療と同じで理学療法にも”腕”がついてきます。理学療法士は病院に属する人が多いので、評判などの情報を検索するのは難しいです。これは鍼治療が情報検索できることに対して不利な点と言えるでしょう。
中等度の有益性があるが、腕によって差が出る
内服薬、注射も保存療法の一つです。こちらに関しては下の記事の後半に解説していますので合わせて参照ください。