膝蓋骨（お皿）の痛みには、いくつかの原因があります。
膝蓋骨の骨自体に問題がある場合、膝蓋骨の軟骨に問題がある場合、周囲の筋肉の緊張や弱さが膝蓋骨の動きをおかしくしている可能性もあります。
膝蓋骨は、大腿四頭筋と膝蓋靭帯に挟まれた小さな三角形の形をした骨です。膝蓋骨は大腿骨の溝をうまく走行することで、膝の屈伸に伴う滑らかな膝の動きを可能にしています。
膝蓋骨の裏面には、体の中でで最も厚い軟骨の層が並んでいます。これは、それだけ大きな力がそこを通るからです。例えば、しゃがんだ時には、体重の8倍に相当する力が膝蓋骨を通過します。
そもそも、なぜ私たちには膝蓋骨があるのでしょうか？
膝蓋骨があることによって、膝関節の機能や発揮する力を高めることが出来ます。膝蓋骨があることで、ボールをける動作などの伸展動作では膝の力は約30％増加します。
一般的な膝蓋骨の痛み
膝蓋骨に問題があると、膝前方の痛みが出やすい傾向にあります。ここでは、膝蓋骨の痛みの一般的な8つの原因を見てみましょう。
膝蓋軟骨軟化症
膝蓋骨軟骨軟化症は、特に若年成人や思春期に多く見られる膝蓋骨の痛みの原因となっています。膝蓋骨の裏側に並ぶ軟骨が薄くなることで、膝前方の痛みが生じます。
座った状態から立ち上がった時や階段を登った時に膝の前側の痛みが悪化する傾向があります。また、軟骨同士が摩擦する嫌な感覚を引き起こすこともあります。
膝蓋軟骨軟化症の原因はいくつかありますが、膝の筋肉が弱くなったり、反対に膝の筋肉を使いすぎることで、膝を正常に動かすことが出来ない状態になった時に起こりやすいと言われています。
ランナー膝
ランナー膝は膝蓋骨の痛みの原因として非常に多いです。名前とは裏腹に、アスリートからサラリーマンまで誰にでも起こり得ます。
ランナー膝は、膝蓋骨の走行異常が原因で起こります。
これは通常、筋肉の使い過ぎで筋肉の柔軟性が低下したり、反対に太ももの筋力が低下することでも起こります。
ランナー膝は、膝前方の痛みを伴うことから膝蓋大腿部痛症候群とも呼ばれ、慢性的な膝の痛みの原因としてよく知られています。
ランナー膝の症状は時間の経過とともに徐々に現れ、一般的には膝の前面と膝蓋骨の下に痛みを感じます。
特徴として若年期から青年期のアスリートに多く見られ、不整地歩行、坂道や階段昇降、スポーツ活動後の症状に悪化を認めます。
膝蓋腱炎
Physiocheck.co.uk より
一般的にジャンパー膝として知られている膝蓋腱炎は、通常、膝蓋骨のすぐ下の痛みをもたらします。
膝蓋腱炎は、ジャンプやボールを蹴ったりするなどの反復運動で膝蓋腱が損傷することで起こります。元サッカー日本代表の内田篤人選手も膝蓋腱炎を患い、2015年に手術を受けています。
ジャンパー膝の最も決定的な症状は、膝の真下の腱に圧力がかかったときの膝前方の痛みです。
膝蓋腱炎による膝前方の痛みは、活動後や朝一番に悪化する傾向があります。膝蓋腱炎は、ランナーの慢性的な膝の痛みの原因としても見られます。
スポーツ選手でなくても体が固い方などで起きやすく、年齢に関わらず体力をつけるために急に走ったり歩いたりすることでも生じます。
基本的には充分に休息し、膝蓋腱を安静にすることで一過性に治ることがほとんどです。
膝蓋腱炎に伴う膝前方の痛みは、時間の経過とともに徐々に悪化していく傾向があり、放置しておくと腱が断裂してしまうこともあります。
大腿四頭筋腱炎
大腿四頭筋腱炎は一般的に、スプリント、ジャンプ、方向転換を多く行う人に起こりこれもジャンパー膝に分類されます。
また、アスリートだけでなく、筋肉の使い過ぎで筋肉が硬くなっている人、偏平足や足首のかみ合わせが悪い人、肥満が原因で起こることもあります。
大腿四頭筋腱炎では、膝蓋骨のすぐ上に痛みや圧痛が生じます。膝蓋骨の上の腱に腫れがあり、膝がこわばって脱力感を感じることもあります。
痛みが出た場合には無理をせずに休息をとることが大事で早期に発見された場合でも、回復には数週間かかり、治療が遅れると数ヶ月かかることもあります。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は膝蓋骨の通り道である溝（大腿骨滑車）から膝蓋骨がはみ出すことで起こります。
内側に脱臼することはほとんどなく、外側に脱臼します。通常は、膝ををひねったり、大きな力が膝にかかるような怪我で起こります。
膝蓋骨が脱臼すると、膝の外側に大きな膨らみを持ち、目に見える変形を認めます。
膝蓋骨脱臼は医療上の緊急度が高く、できるだけ早く医師による整復が必要です。
膝蓋骨脱臼は通常、膝蓋骨を固定している靭帯の損傷を伴うため、将来的に再び脱臼しやすくなります。
治療はリハビリや装具を装着することで治癒することが多いですが、場合によっては手術が必要になることもあります。
膝蓋骨骨折
高所からの落下や、骨に大きな力が加わった場合に起こります。
真っ二つに折れたり、バラバラに折れることもあります。大抵の場合、若い人は加わる力の大きさと骨折型が比例しますが、高齢者では些細な転倒で膝を打ってもバラバラの骨折を呈することもあります。
怪我の重症度にもよりますが、骨が治るまでの数週間は足が動かないように装具やギプスで固定したり、骨折を元に戻すために手術が必要になることもあります。
膝蓋骨高位
膝蓋骨高位は稀ですが膝蓋骨の痛みを重症化させる要因となる可能性があります。
膝蓋骨の通り道である溝は膝の真ん中で最も深く上に行くほど浅くなります。膝蓋骨が高い位置に存在するということは、浅い溝に膝蓋骨が不十分にはまっている状態です。
膝蓋骨の不安定性や膝蓋骨脱臼は膝蓋骨高位で頻度が増します。
それとは別に、膝蓋骨高位では、階段の上り下り、坂道の上り下り、しゃがみっぱなしの状態が続くことで膝の痛みが出ることがあります。
膝蓋大腿関節炎
膝蓋大腿関節炎（症）は、60歳以上の人に多い慢性の膝蓋骨の痛みの原因です。
膝蓋大腿関節炎（症）では、膝蓋骨と大腿骨の溝の間の隙間が狭くなります。
膝蓋骨大腿関節炎による膝前部の痛みは、しゃがんだり、階段を登ったり、膝をついたりするなど、膝蓋骨を圧迫するような活動をすると悪化します。また、膝を動かしたときに、ゴリゴリするような音や引っかかるような違和感を生じることもあります。
膝蓋骨下の痛みの原因は？
膝蓋骨の下の部分の痛みは、いくつかの問題が考えられますが、膝蓋腱炎や膝蓋骨下滑液包炎が最も一般的な原因となります。
膝蓋骨の裏側に痛みを感じる場合は、膝蓋骨の裏側の軟骨に問題があります。痛みは徐々に発症する傾向があり、しばらく座っていたり、多くの運動をしたりすると悪化します。
膝蓋の上の痛みの原因は？
膝蓋骨の真上や上部に痛みを感じる場合は、大腿四頭筋腱炎が原因である可能性が高いです。通常、膝蓋骨の上部を触ると圧痛があり、活動すると膝の痛みが悪化します。
また、顕著な脱力と腫れがある場合は、手術が必要になる可能性が高い完全な大腿四頭筋腱断裂を示している可能性があります。
膝蓋骨の鋭い痛みの原因は？
鋭い膝蓋骨の痛みは、通常、膝蓋骨の裏側の軟骨の損傷、または膝蓋骨骨折のどちらかが原因で起こります。
鋭い膝の痛みは、動かすとすぐに悪化します。（動かしてすごく痛い場合はこの二つを考えます）
膝蓋骨痛の治療法は？
膝蓋骨の痛みの治療は、膝の損傷の種類によって異なります。
ほとんどの場合、膝蓋骨周辺の痛みは、筋力強化、ストレッチ、アイシング、痛み止め（抗炎症剤）、膝の装具を組み合わせて治療することができます。
