ふくらはぎの筋肉が損傷すると、歩いたり、走ったり、ジャンプしたりすることが痛みのため困難になります。
ふくらはぎの痛みは、ふくらはぎの筋肉の緊張だけでなく、基礎疾患、下肢の神経や動脈に問題があることもあるため安易に考えすぎないことが重要です。
ふくらはぎの筋肉の痛みは、小さな断裂のような、比較的気にする必要がない、軽いものであることが多いですが、実際には筋肉自体に問題があるとは限らず、深部静脈血栓症などの深刻な問題が隠れている可能性もあるので、常に注意して治療を受ける必要があります。
ふくらはぎの筋肉痛の一般的な原因
まずは、ふくらはぎの筋肉痛の代表的な原因や、その症状の現れ方、原因について見ていきましょう。
ふくらはぎの肉離れ
ふくらはぎの筋肉が過剰に引き伸ばされたことによる、部分的または完全な断裂です。ふくらはぎの筋肉痛の最も一般的な原因です。
原因:ウォーミングアップせずに急に走り出す、疲労の蓄積
症状:ふくらはぎの急激な痛み、腫れ、内出血を伴うこともあります。完全断裂の場合は、つま先立ちができません(痛みのせいもありますが、力が入らない感覚です)。
こむら返り(ふくらはぎがつる)
こむら返り(ふくらはぎがつる)という現象は、ふくらはぎの筋肉の不随意の痙攣によるもので、非常に痛いです。
原因:ビタミン・ミネラルのバランスの崩れ、筋肉疲労、ダイエット、脱水、筋肉のアンバランス(左右差)、脊柱管狭窄症など体の中のミネラルバランスが崩れたり、神経が悪さしたり、筋肉の使い方がうまくいかない場合に起こります。
症状:ふくらはぎの上部の痛み、締め付けと痙攣、歩行困難。数秒間持続したのち回復しますが数日の間に繰り返すことがあります。
ベーカー嚢胞
膝の裏にある滑液包に水が溜まります。ベーカー嚢胞は、特に高齢者において膝裏の痛みの原因として最も多い疾患です。
原因:怪我や関節炎などで膝の中に過剰な水分が溜まります。ベーカー嚢胞と関節内はつながっていると言われ、関節の中から関節の外にある袋に水が流れ込みます。
症状:足を曲げたり、歩いたり、膝をついたりしたときに膝の裏が腫れ、締め付けられて膝の裏が痛みます。
アキレス腱炎
柔軟性のないアキレス腱が炎症をおこし、治ったり悪くなったりを繰り返すと、変性をおこします(腱の老化)。ふくらはぎ下部の筋肉痛の最も一般的な原因
原因:腱を介する反復的なストレス、ジャンプ、ランニング
症状:運動始めの痛みで動いているうちに楽になってきます、アキレス腱炎を繰り返すとアキレス腱の肥厚を伴い、つま先立ち時の痛みが生じることもあります。
ふくらはぎの痛みの他の原因
深部静脈血栓
深部静脈血栓症とは、下肢の深部静脈の一つに血栓ができることです。下肢で大きくなった血栓が中枢に流れてしまうと最悪、心臓発作や脳卒中につながる可能性があります。
原因:長時間足を動かさない(飛行機の中など)、妊娠、肥満、遺伝
症状:ふくらはぎの痛み、赤み、温感、腫れ。足を背屈させる(足の指を上にあげる)と痛みが悪化することがよくあります。深部静脈血栓症は手術後や飛行機での移動などの運動不足の後に発症することが多く、遺伝的な関連性がある場合もあります。
セルフテスト:力を入れてつま先を上げる(手は使用しない)
膝裏やふくらはぎの痛みの増加は深部静脈血栓症の可能性があることを示しています。
警告:深部静脈血栓症は生命を脅かす可能性があります。症状が現れた場合は、直ちに医師の診察を受けてください。
神経の痛み
下腿に行く神経が脊椎レベルで圧迫されることで、ふくらはぎの部分に痛みやしびれを感じることがあります。
神経の圧迫は、腰から来ている場合もあれば、神経の通り道が何らかの原因で圧迫されて生じる場合もあります。
神経が圧迫されると、針で刺されるような鋭い痛み、ヒリヒリ感やしびれを伴い、下肢の痛みが広がることが多いです。 神経が圧迫される痛みの場合は、医師の診断を受ける必要があります。
筋肉のアンバランス
ふくらはぎの筋肉痛の原因としてよく挙げられるのが、筋力の低下や締め付けです。筋肉が弱っていると長時間立っているとすぐに疲れてしまうので、筋力と持久力の両方を鍛えることが大切です。
ふくらはぎが凝っている場合、緊張が高まってふくらはぎの筋肉を痛めるリスクが高くなるので、ストレッチ運動は欠かせません。
末梢血管障害
末梢性動脈疾患とも呼ばれ、動脈に狭窄が生じて血液の流れが悪くなった場合に起こります。これが下肢に起こると、ふくらはぎの筋肉痛を引き起こすことがあります。
安静にしているとすぐに落ち着く歩行時のふくらはぎの痛みは、末梢動脈疾患の一般的な特徴であり、間欠性跛行として知られています。
末梢血管疾患は、喫煙、糖尿病、高コレステロール値、高血圧などとの関連が一般的です。重度の場合には、足や下肢の色が変わることがあります。
歩行時に起こるふくらはぎの痛み
怪我をしていないのに歩くだけでふくらはぎの筋肉が痛むのは、ふくらはぎの筋肉への血流が低下して、酸素が不足していることが原因のことが多いです。通常、痛みは安静にしていればすぐに落ち着きます。
毎日の歩行時にふくらはぎの痛みがあり、安静にすると数分でおさまる場合は、間欠性跛行のサインである可能性があります。
安静にしていても下肢の痛みが続く場合は、重度の末梢血管疾患など、より深刻な問題があることを示している可能性があります。
ランナーに起こるふくらはぎの痛み
ふくらはぎの痛みは、筋肉にかかる負荷が増大して、ふくらはぎの断裂につながることがあります。
距離、スピード、路面、上り坂など、急激なランニング活動の増加は、ふくらはぎの筋肉に負荷をかけてしまい、痛みを引き起こします。
脚の筋力や持久力不足は、ランナーのふくらはぎの痛みの一般的な原因です。
ランニングが趣味の人で、ふくらはぎの痛みがある人は、次のテストをお勧めします。
片方の足で立ち、つま先立ちをしてからゆっくりと腰を下ろします。これを片足30回ずつ行うことができれば、ふくらはぎの筋力と持久力は良好であることを示しています。
そうでない場合は、ふくらはぎの強化トレーニングを行うとよいでしょう。
ふくらはぎの筋肉の痙攣
ふくらはぎの筋肉が痙攣している感覚は、ふくらはぎの筋肉を活性化させる神経が活性化している無害な状態(体の生理反応)です。
通常、歩行など下肢の筋肉を使うと痙攣は止まりますが、安静にしていると再び痙攣が起こったりします。
ふくらはぎの筋肉の痙攣は、足がつるサインであったり、筋肉を酷使していることのサインであることもあります。
まれに、ライム病、多発性硬化症などの運動ニューロンの病気のこともあります。
夜間のふくらはぎの痛み
夜間のふくらはぎの筋肉痛は、足がつることによって生じ、大抵の場合は目が覚めてしまいます。ふくらはぎの筋肉をストレッチするとすぐに治まることが多いです。
夜間のふくらはぎの筋肉痛は、足を動かし続けたいという衝動に駆られているレストレスレッグ症候群の可能性もありますが、基本的には考えすぎる必要はありません。
夜間、ベッドの中では周りに気が散る物が少ないので、夜に痛みを自覚することはよくあることです。
ふくらはぎの筋肉の硬直
ふくらはぎの筋肉が硬くなるのは、長距離ランニングなどの使いすぎによるもので、特にウォーミングアップとクールダウンをきちんとしていない場合に起こります。
また、足首やふくらはぎの筋肉を痛めた後に、筋肉の硬直が起こることもあります。
腓腹筋とヒラメ筋(腓腹筋の下についています)を中心としたストレッチ運動を毎日行うことが、ふくらはぎの筋肉の硬直を克服するための最良の方法です。
ふくらはぎの筋肉内のしこり
これは、筋繊維の領域とその下の筋膜が締め付けられて、結び目のように筋肉に小さな塊を形成するものです。
押すと痛いだけの場合もあれば、誘引なく痛みが出る場合もあります。
ふくらはぎのしこりの原因として多いのは、ふくらはぎの断裂後(肉離れ)に過剰な瘢痕組織が形成されていることです。
マッサージや超音波などが有効と言われています。
急なふくらはぎの痛み
ふくらはぎの突然の痛みの最も一般的な原因は、ふくらはぎの肉離れで、腓腹筋やヒラメ筋の一部が過剰に伸ばされて断裂してしまいます。
ふくらはぎの肉離れは一般的にスポーツ中に起こり、内出血や腫れを伴うことがあります。早期にふくらはぎの筋断裂の治療を開始することで、治癒を早め、再損傷のリスクを減らすことができます。
ふくらはぎがつることは、運動中だけでなく安静時に突然起こることもあります。
ふくらはぎの筋肉の解剖
ふくらはぎは、膝裏と踵の間にある部分です。
下腿三頭筋と呼ばれる2つの筋肉から構成されています。腓腹筋とヒラメ筋という一対の筋肉で構成されています。
腓腹筋は、膝関節のすぐ上の大腿骨の裏側の両側にに起始部を持つ太い筋肉です。表面の筋肉であり、皮膚のすぐ下にふれる筋肉です。
ヒラメ筋は腓腹筋の奥(下)に走っており、膝関節のすぐ下の脛骨の上部に起始部を持ちます
この2つの筋肉は、かかとの後ろに固定されているアキレス腱を形成するために、ふくらはぎの中腹で合流します。
下腿三頭筋は、足の底屈(踏ん張る筋肉)とともに足首の安定性にも重要な働きをしています。これらの筋肉は、ウォーキングやランニング時の地面を蹴る動作をコントロールします。